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観測した事実を記録し、判断はしない 監視対象 2,824 件 直近署名チェックポイント seq#3,627 (08-06 03:00 JST) ▸検証

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国会会議録

法務委員会

第221回 · 参議院 · 第18号 · 2026-06-25

出典 kokkai ↗ 最終取得 2026-08-06 00:06 JST 記録 #3623 ↗

発言 115

会議録情報

令和八年六月二十五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  六月二十四日     辞任         補欠選任     いんどう周作君     出川 桃子君      加田 裕之君     岡田 直樹君      加藤 明良君     有村 治子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 孝江君     理 事                 古庄 玄知君                 こやり隆史君                 打越さく良君                 川合 孝典君                 横山 信一君     委 員                 有村 治子君                 岡田 直樹君                 鈴木 宗男君                 出川 桃子君                 福山  守君                 山谷えり子君                 泉  房穂君                 牧山ひろえ君                 小林さやか君                 嘉田由紀子君                 安達 悠司君                 仁比 聡平君                 北村 晴男君    事務局側        常任委員会専門        員        武蔵 誠憲君    参考人        東京大学大学院        法学政治学研究        科教授      成瀬  剛君        香川県弁護士会        弁護士      田岡 直博君        一橋大学大学院        法学研究科教授        弁護士      高平 奇恵君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(閣法第六一号)(衆議院送付)     ─────────────

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  昨日までに、加藤明良さん、いんどう周作さん及び加田裕之さんが委員を辞任され、その補欠として有村治子さん、出川桃子さん及び岡田直樹さんが選任されました。     ─────────────

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授成瀬剛さん、香川県弁護士会弁護士田岡直博さん及び一橋大学大学院法学研究科教授・弁護士高平奇恵さんでございます。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、成瀬参考人、田岡参考人、高平参考人の順にお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず成瀬参考人からお願いいたします。成瀬参考人。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) おはようございます。東京大学の成瀬と申します。  本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただき、大変光栄に存じます。  私は、刑事訴訟法の研究、教育に従事していますが、以前から再審制度に関心を持ち、大学のゼミで再審制度の在り方について学生たちと議論し、その成果の一部を論文として公表してまいりました。  今回の法案に関しては、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の構成員として再審制度の立法課題の整理に関与した後、法制審議会刑事法部会の調査審議に幹事として加わりました。  私は、これら二つの会議に参加する中で、再審事件の実情に触れ、再審請求審における不透明な運用や検察官による証拠の出し渋りが再審手続を不当に長期化させ、再審請求者等に多大な負担を強いてきたことを痛感いたしました。そこで、誤って有罪判決を受けた者を一日でも早く救済するという観点から、個々の裁判官や検察官の裁量に依存する属人的な運用を改め、再審制度を客観的な救済システムへと移行させる必要があると考えました。  再審請求審は、職権主義の下、裁判官が主体となって再審請求者の主張する再審請求理由の有無を審理、判断する手続です。私は、このような再審請求審の構造と理論的に整合する救済システムを構築し、裁判官、検察官、再審請求者、弁護人に対して明確な行動指針を提示することを目指しました。なぜなら、理論的整合性を欠き、行動指針の曖昧なシステムの下では、裁判官や手続関与者がどのように行動してよいか分からず、かえって再審実務が混乱し、誤判からの迅速な救済が妨げられるからです。  このような観点から見ますと、今回の法案は、再審制度を請求審の構造と整合する実効的な救済システムに改めるものと評価でき、全体として支持できると考えます。  以下では、本法案の中で中心的な検討課題とされてきた証拠提出命令制度と再審開始決定に対する検察官抗告の在り方について意見を申し上げます。  現行再審制度の最大の問題は、裁判所が審理に必要な証拠の提出を命じる権限について明文の規定が設けられておらず、個々の裁判官の裁量判断に委ねられていたため、その運用が不透明になり、検察官による証拠の出し渋りも招いて、必要な証拠が得られないまま、いたずらに審理が長期化するという点にありました。  今回の法案は、この状況を改めるため、裁判所は、再審請求理由に関連すると認められる証拠について、提出を受ける必要性と弊害の程度を考慮し、相当と認めるときは検察官に対し当該証拠の提出を命じなければならないとしています。裁判所は、この要件を満たす場合には提出命令の発令を義務付けられますので、迅速な審理が促されるとともに、証拠を管理する検察官は明確な範囲で提出を義務付けられますので、証拠の出し渋りを防止できるようになります。  冒頭で述べたように、再審請求審は再審請求理由の有無を審理、判断する手続ですので、提出命令の対象は、今回の法案のように、再審の請求の理由に関連すると認められる証拠とすることが理論的に一貫します。  ここで、再審の請求の理由に関連するとは、裁判所による再審請求理由についての判断に資するという意味であり、関連する証拠の範囲は審理の経過にも応じて相当の広がりを持つと考えています。  例えば、再審請求者が提出した新証拠によって確定判決を支える一部の旧証拠の証明力が減殺された場合には、他の旧証拠の証明力に関する証拠も再審請求理由に関連する証拠として提出命令の対象となり得ます。また、再審請求後に裁判所に新たに提出された証拠に基づいて再審請求者が再審請求理由を追加した場合には、その追加された再審請求理由に関する証拠についても提出命令の対象となり得ます。  このような関連する証拠の広がりについては法制審部会において具体的事例を用いたシミュレーションも行って確認しておりますので、本法案の証拠提出命令制度によって、審理に必要かつ十分な証拠が迅速に裁判所に提出されると考えています。  本法案によれば、裁判所は、証拠の提出を命じるか否かを判断する前提として、当該証拠そのものや裁判所の指定する範囲の標目一覧表を検察官に提示させ、インカメラ審理において確認することができます。これにより、検察官の恣意的な証拠の取捨選択を許さず、裁判所が提出を命じるべき証拠を迅速に特定することが可能となります。  なお、これまでの国会審議においては、このような裁判所に対する標目一覧表の提示に加えて、再審請求者等に対し、検察官の保管する全ての証拠の一覧表等を交付するよう求める意見が示されました。これは、再審請求者等が裁判所に対し証拠提出命令を請求する際の手掛かりとして活用しようとする趣旨と理解しています。  しかしながら、再審請求者等に対して再審請求理由と関連しない証拠も含めた全ての証拠の一覧表等を交付することは、職権主義の下、裁判官が主体となって再審請求理由の有無を審理するという再審請求審の手続構造や審理の在り方と理論的に整合しません。このような理論的整合性を欠く制度を再審請求審に取り込むことは、再審実務の安定的な運用を困難にすると思われます。  また、再審請求者等に全ての証拠の一覧表を交付すれば、再審請求者や弁護人が再審請求理由に関連する証拠という行動指針を見失い、多数の提出命令請求を繰り返すことも予想され、これに対応する裁判所の審理に遅延が生じて、かえって誤判からの迅速な救済を妨げてしまうおそれもあります。  これまでの国会審議では、本法案が創設する再審請求理由に関連する証拠の提出命令制度に加えて、裁判所が必要と考える証拠の提出を裁量的に命じる制度の創設を求める意見も示されました。  しかし、再審請求審はあくまで再審請求者の主張する再審請求理由の有無を審理、判断する手続ですから、裁判所が再審請求者の提出した新証拠やそれに基づく主張内容を離れて証拠の提出を命じることは、再審請求審の審理の在り方に沿うものとは言えません。  また、このような裁判所の裁量に全面的に依存する規定を設けることは、証拠の提出を命じる裁判官と提出を義務付けられる検察官のよるべき行動指針を曖昧にし、冒頭に述べた不透明な運用を継続させるおそれもあります。さらに、二つの証拠提出命令制度を同時に創設することは、同制度の使い分けの在り方という解決困難な課題を新たに生じさせることにもなります。  次に、今回の法案では、再審開始決定に対する検察官抗告は、例外的な場合にのみ認められるとされています。これは、再審開始決定に対する検察官の即時抗告が無罪となるべき者の救済を不必要に遅延させてきたとの批判を踏まえ、検察官抗告のより慎重かつ抑制的な運用を確保するための規律であると理解しています。  これに対して、これまでの国会審議においては、検察官抗告を全面的に禁止すべきであるという意見も示されています。その根底には一日も早い救済を求める切実な願いがあり、私も一人の人間としてその願いには深く共感するものです。  しかしながら、再審開始とは、一度は確定して、それを前提に社会が動いているところの有罪判決を見直すことを意味し、重大な効果を持ちますので、その判断の正しさに疑いの余地を残すものであってはなりません。  また、検察官抗告を全面的に禁止し、無罪を言い渡すべき明らかな証拠の存在に疑問の余地を残しながら再審公判に移行するとすれば、事実認定をめぐり、第一審を超えて上訴審へと争いが継続してしまう可能性も生じます。このような事態を避け、再審開始決定が無罪の確定という真の救済を迅速にもたらすものとなるためには、請求審段階で開始決定の正しさについて多層的な検証を経る必要がある事案も存在すると思われます。  以上の観点から見ますと、今回の法案が、検察官に即時抗告の余地を残しつつ、その要件として再審開始決定が覆される高度の蓋然性を裏付ける合理的な根拠を要求したことは、検察官に対して明確な行動指針を示すとともに、再審開始決定、ひいては最終的な無罪判断の確実性を高めるものとして支持できると考えます。  これで私の意見陳述を終わります。御清聴くださり、ありがとうございました。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) ありがとうございました。  次に、田岡参考人にお願いいたします。田岡参考人。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 香川県弁護士会の田岡です。  私は、平成二十八年改正刑訴法に基づき設置されました刑事手続協議会幹事会の幹事を務めました。また、法制審議会刑事法(再審関係)部会の幹事を務めました。その立場から発言を申し上げたいと思います。  香川県では、財田川事件、榎井村事件という二つの冤罪事件が起きました。冤罪は、無実の人の自由や生命まで奪いかねない悲惨な事態です。それだけでなく、真犯人を捕り逃がすという意味においては二重の不正義であって、犯罪被害者をも苦しめることになりかねません。このような冤罪があってはなりません。冤罪があれば確実、迅速に救済されなければならない、これがこの再審法改正の出発点であったはずです。  政府は、この閣法が通れば、確実な救済と再審手続の円滑、迅速化が実現すると言っています。本当でしょうか。閣法は、証拠開示については制度を設けない運用上の措置とし、任意の開示は検察官の裁量に委ねるとするものです。検察官抗告については、例外を認め、例外事由の判断は検察官の判断に委ねる行為規範とし、裁判所の判断事項とはしないというものです。どちらも検察官の裁量に委ねることになってしまいます。他方で、証拠一覧表の制度は設けない、目的外使用は弊害の有無にかかわらず全ての証拠を一律に禁止するというものであり、かえって確実な救済を妨げかねない内容を含んでいます。これでは、確実、迅速な救済を実現することはできません。  閣法は不十分です。なぜこのような不十分な改正案になったのか。それは、立法事実の認識が踏まえられていないからだと思われます。  政府は、改正の理由をこう説明しています。再審手続に長期間を要している事例がある、その原因は、証拠開示と検察官抗告に原因があると指摘がなされているというふうに書かれています。あくまで指摘がなされているです。政府、法務省は、証拠開示や検察官抗告の運用に問題があったとは認識をしておりません。  ここに引用しております袴田事件再審無罪判決では、証拠の捏造があったと認定されています。福井事件の再審開始決定では、検察官が証拠を提出しなかった行為は、公益の代表者としての検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為と認定されています。再審無罪判決では、この誤りを適切に是正していれば、そもそも再審請求審以前に確定審段階で無罪が確定していた可能性も十分に考えられる、ここまで指摘されているのに法務省はまだ認めていないんです。このように、認識が不十分であるから改正が不十分なものにとどまっているんではないでしょうか。政府に任せることはできません。やはり、国会において修正がなされるべきだと考えます。  次のページですが、修正点の一点目が証拠開示です。  再審請求には無罪を言い渡すべき明らかな新証拠が必要だとされています。しかし、過去の冤罪事件を見れば、その新証拠は、ほとんどの場合、検察官の手元にあります。この検察官の手元にある証拠を開示させなければ、そもそも無罪の人が無実を明らかにすることができません。  袴田事件では、五点の衣類のカラー写真やネガフィルムが開示されました。福井事件では、「夜のヒットスタジオ」の、歌番組の放映日に関する捜査報告書が開示されました。これが開示されなければ、再審開始決定、そして無罪になることはあり得ませんでした。証拠開示こそが再審の生命線です。  確かに、成瀬さんがおっしゃられたとおり、閣法の四百四十五条の二は証拠提出命令という制度を設けることとはしています。しかし、これは証拠開示ではありません。裁判所が裁判の判断のために必要な証拠を裁判所に提出させる手続であります。証拠開示というのは、再審請求人に対して、その主張に役立てるために証拠を見せる、開示するという制度です。  現実には、裁判所に、裁判所が提出されても、裁判官はその証拠の意味が分からないといったことが少なくありません。例えば、袴田事件では、この五点の衣類やカラー写真やネガフィルム、これ裁判官が見ても意味が分かりませんが、支援者の方がこれを見て、長期間みそに漬かっていたのであればこのような赤みが残ることはあり得ないとして、みそ漬け実験を思い付きました。また、布川事件では、取調べの録音テープを本人が聞いたところ、これは編集されているということを見破りました。このように、再審請求人本人や弁護人に開示されて初めて無実を明らかにすることにつながるんです。確実な救済のためには、再審請求人の主張の準備のための証拠の開示が不可欠です。  政府は、裁判所提出型とするのが再審請求審の構造と整合的だと言っています。しかし、検察官は再審請求手続の重要な関与者でありまして、事実取調べの請求権や抗告権といった権限を有しています。権限はあるのに証拠開示の義務はないというのはおかしな話です。また、任意の開示であればできるというふうに言っています。任意であれば開示できるのに、法律上制度として開示することはできないといったのもおかしな説明だと思います。  また、先ほど申しましたとおり、裁判所提出型でも弁護人は閲覧、謄写できるんだから、結果的に弁護人の手元に来ればいいじゃないかと言われますが、この裁判所に対する証拠提出命令というのは、裁判所が裁判のために必要な証拠に限定されるわけです。  例えば、五点の衣類のカラー写真やネガフィルム、これ裁判所としては必ずしも必要でないかもしれません。しかし、これを支援者が見ることによってみそ漬け実験を思い立ち、そしてそれが無罪につながるわけです。布川事件の録音テープを裁判所が聞いても分からないけれども、支援者、本人が見ることによって、これは編集されたということに気が付くわけです。このように、裁判所が提出させるために必要な証拠と再審請求人が主張の準備のために必要な証拠の範囲は異なります。  そのことは政府も恐らく認めています。なぜなら、任意の運用であれば開示させることができるんだから問題ないんだという形で説明しているからです。しかし、任意ということは、検察官の裁量です。裁判所が勧告をしたとしても、それに対して開示する義務を負うわけではありません。この案は、結局のところ、検察官の裁量に委ねるというものに等しいです。  確かに、衆議院では附則四条二項が追加され、事案に応じ適切に行うとされましたが、先ほど申しましたとおり、政府はこれまでの証拠開示の運用に問題があったとは認めておらず、証拠の捏造や証拠隠しがあったということについて問題があったとも言っておりません。このような認識を前提とすれば、今後適切に行うといったことは期待できないと言わざるを得ないと思います。検察官の裁量ではなく、検察官の義務として定めるべきです。  なお、被害者の方から、証拠開示が広がると、証拠によって被害者の名誉やプライバシーが侵害されるおそれがあるのではないかという指摘がございましたが、これは通常審でも、刑事訴訟法に開示の時期、方法を指定し、条件を付すことができるといった条文がありますので、それを参考にした規定を設ければ、被害者の方の名誉やプライバシーの保護を図ることは可能であるというふうに考えております。  次に、証拠一覧表です。  閣法は、証拠一覧表、つまり検察官の保管する証拠の一覧表の制度は設けないとしています。しかし、再審請求人が証拠の提出命令や証拠開示の請求をするためには、どのような証拠の開示を求めるかという証拠の特定をする必要があります。全部を開示してくれる制度であればいいんですが、こういう証拠を開示してくださいというふうに言う必要があります。しかし、検察官がどんな証拠を持っているかが分かりません。再審請求人や弁護人はもう当てずっぽうで請求するしかありません。その結果、たまたま開示されることもあれば、開示されないこともあります。一部の証拠が開示されても、それが全部かどうかは分かりません。ほかにもあるんじゃないか、いや、ありません、このようなやり取りが繰り返される結果、証拠開示の手続は長期化します。  そのため、通常審では、この反省を踏まえて、平成二十八年に、円滑かつ迅速な証拠開示のために証拠一覧表の制度が設けられました。再審でも同じように証拠一覧表の制度が設けられるべきです。  政府は、いや、常にそういったものが必要なんでしょうかというふうに言います。しかし、証拠一覧表が少なくとも証拠開示の請求に有用である、役に立つということは誰も否定できないと思います。どのような証拠があるか分からないのに特定することはできません。  例えば、福井事件の「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書をどうやって特定すれば開示されるのか。これ、特定しようがありません。こういう報告書があると分かるから特定するということができるわけでして、あるかどうかも分からないものを特定しろというのは不可能です。証拠一覧表がなければ、証拠隠しを防ぐことができません。  また、政府は、必要があれば全ての証拠の標目一覧表を提示させることはできるというふうに説明をしています。しかし、標目一覧表といいますのは、これは閣法四百四十五条の三ですけれども、何人にも閲覧させることはできない、つまり再審請求人に見せてはならないというものです。これでは、再審請求人の請求には役に立ちません。通常審では、平成二十八年改正によって、この標目一覧表とは別に証拠一覧表が設けられたわけです。標目一覧表があれば証拠一覧表が要らないということにはなりません。  また、政府は、証拠開示や証拠提出命令の請求は識別可能な程度で足りると言っています。そして、五年後の見直しに先送りしようとしています。しかし、識別可能な程度で足りるというのは通常審でも同じです。再審請求審で証拠一覧表が必要ないという理由にはなりません。  なお、証拠一覧表であっても、被害者の名誉やプライバシーの保護は通常審と同様の規定を設けることによって可能ですので、被害者の名誉やプライバシーは理由にはなりません。  目的外使用の禁止についても意見を申し上げます。  閣法四百四十五条の五と六は、証拠の目的外使用の禁止及び罰則を設けることとしています。しかし、過去の再審請求事件では、支援者による支援や報道機関による報道が重要な役割を果たしました。袴田事件の五点の衣類のみそ漬け実験は、支援者が発案したものでした。録音テープの報道があったからこそ、袴田事件の非人道的な取調べの実態が明らかになりました。支援や報道など正当な目的のための使用が禁止されると、確実な救済が困難になります。  確かに、被害者の名誉やプライバシーの保護の必要性は否定いたしません。ただ、そのためであれば、そのような証拠に限って条件を付すなどすれば足りるわけです。一律に全ての証拠の目的外使用と称して正当な目的のための利用を制限する必要はありません。既に少年審判規則や犯罪被害者保護法などに、特定の証拠に限って使用目的を限定し、条件を付すなどの制度は存在します。これらの制度を参考にすれば足ります。  検察官抗告については……

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 田岡参考人、お時間が過ぎておりますので、御意見の方をおまとめいただきますようお願いいたします。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) はい。  検察官抗告については、ここに書きましたとおり、松尾浩也先生も昭和三十七年に不服申立ては禁止すべきとおっしゃっておられますし、ドイツでも既に廃止されておりますので、これを参考に御検討いただければと思います。  その上で、私、平成二十八年改正の刑事手続協議会幹事会の幹事を務めましたけれども、結局、その会議体において速やかに行うこととされた証拠開示の検討は、七年間先送りされた結果、この度の法改正まで十年を要しました。五年後見直しに先送りするのでは、冤罪被害者が生きているうちの救済は実現できません。確実、迅速な救済のために、閣法を修正した上で、真の再審法の改正をお願いしたいと思います。  ありがとうございました。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) ありがとうございました。  次に、高平参考人にお願いいたします。高平参考人。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 請求人の手足はまだ縛られています。このままでは、迅速な手続進行も確実な救済も期待できません。救済を確実にするためには、請求人の主体性、能動性の確保が重要な要素となります。  今回の法改正の契機となったのは、袴田事件を始めとする冤罪事件の救済に余りにも時間が掛かった、そのことでした。裁判所に何ができて、何をすべきか、それは明確でなかった、救済の遅れの一つの原因でした。  閣法は、主として裁判所の責任と権限を明確にする観点から制度を整備しています。しかし、再審理由を組み立て、立証するのは請求人なのです。そのための手段、方法がなかった、これも遅れの原因だったのです。請求人の再審請求手続における主体性、能動性を確保する、その観点から見ると、閣法はいまだ不十分です。  本日は、閣法について、少なくともこの点は整備すべきであるという点に絞ってお話をいたします。  まず、閣法には証拠開示制度がありません。閣法四百四十五条の二が定める証拠の提出命令は、裁判所が裁判のために必要な証拠を提出させる制度です。これに対して証拠開示は、再審請求理由の立証責任を負う請求人のための手続保障の制度です。  職権主義は、裁判所の権限と責任を根拠付けます。証拠提出命令制度を設ける理由とはなるでしょう。しかし、請求人のための証拠開示制度を設けることを否定する論拠とはなりません。目的が異なるからです。どちらかを選ばなければならない、そんなことはありません。どちらかがあれば足りる、そういうことでもないんです。  まず、証拠提出命令と証拠開示は、対象となる証拠の範囲が異なります。裁判所は通常審において証拠の厳選をします。衆議院で元裁判官の村山弁護士も述べていました。関連性がある証拠についても、裁判のためには必要がないとされる可能性があります。これに対して、請求人に対する証拠開示の場合は、関連性があれば必要性は認められます。再審理由を構築し、新証拠を獲得する準備のために行われるからです。  そして、請求人のための証拠開示制度を設けることは、手続の構造と合致しています。再審請求人は、再審理由を組み立て、これを立証する責任を負っています。審判の対象は、請求人が主張する再審理由に限定されるのです。審理の枠組みをつくるのは、再審請求人が主体となって行うのです。請求人が的確にその枠組みを形成できなければ、審理は停滞するでしょう。あるいは、継続すべき手続が終了してしまう、そんなこともあり得ます。迅速性も救済の確実性も失われるのです。再審請求人が主体的、能動的に責務を果たせるようにすることは、再審請求の仕組みを機能させる鍵なのです。  このように、請求人が再審請求理由の構築や新証拠の獲得に必要な証拠開示を制度化することは、請求人が審理の枠を設定するという再審請求の構造にまさに適合しています。  更に視点を広げてみましょう。  通常審は当事者主義です。通常審で触れる証拠の範囲は、請求人の側の方がずっと多い。裁判所よりも多いんです。請求人の方が、証拠の意味や位置付け、よりよく理解できます。請求人にしか知り得ない情報を加味して検討することもできます。再審請求の結果に強い利害関係を持ちます。ですから、広い範囲の証拠開示がなされても、これを分析、検討する意欲があります。時間も掛けるでしょう。関連性が認められた多くの証拠を全て吟味し尽くす、そういう主体としては、請求人にこそ適格性があるのです。  請求人は、その分析結果を裁判所に伝えるでしょう。裁判所は、裁判のために必要だと判断した証拠の吟味に十分に時間を掛けることができます。さらに、その主張によって必要な証拠の提出を更に命じていく。判断ができる状況がこのようにして整っていくんです。適切な役割分担の下、効率的に手続が進行します。救済への道は、このように開かれていくのです。これまで実務において直接開示型の証拠開示が多くなされてきたのには理由があるのです。  視点を通常審の構造にまで広げた場合、再審請求人に再審請求理由と関連性のある全ての証拠を検討する役割を割り振ることが必要であり、かつ合理的です。請求人が主体的、能動的にその責任を果たすために、証拠開示制度が明文化されるべきです。  次に、無罪証拠へのアクセスが保障されていないことについて述べます。  検察官は、再審請求人の無罪を根拠付ける証拠の提出義務を負っています。しかし、閣法には、無罪証拠に確実にアクセスできる方法はないのです。これまでの議論状況からすれば、閣法四百四十五条の二により、新証拠が弾劾する証拠と主要事実が共通する範囲の証拠であれば、再審請求理由との関連性は認められます。しかし、無罪証拠にたどり着くとは限りません。  例えば、東京電力女子社員殺害事件です。再審請求とともに提出された新証拠とは、請求人が性的行為をした日時が犯行日とは異なる可能性を示唆する証拠でした。このような場合、被害者の身体に付着していた唾液の血液型がマイナリさんの血液型とは異なるという証拠は、提出の対象ではありません。これ、後に開示されて新証拠とされた重要証拠です。これ出てこないんです。  この問題について、請求人が最初に提出した新証拠が旧証拠を弾劾すればよい、そのときには証拠提出命令の範囲は広がるといった説明がされています。しかし、考えてみてください。請求人は、何らの手続保障もない中で最初の新証拠を準備します。弾劾効が必ず認められる、そう言えるでしょうか。存在する無罪証拠の開示がなされない、こういった容認できない結果は十分起こり得ます。  さらに、衆議院において、無罪の根拠となる証拠かどうかは一義的に定まらないとの答弁がなされています。裁判所から見た無罪証拠と検察官から見た無罪証拠は異なるのです。異なり得るのです。この点からも、無罪証拠が提出されない現実的なリスクは高いと言うべきです。  通常審において、開示対象文書該当性の判断主体は裁判所です。再審請求審においても同様に考えられます。すなわち、証拠の推認力や検察官の主張の矛盾の程度を確認し、提出されるべき証拠か否かを判断する責任を負うのは裁判所なのです。よって、検察官の提出義務に対応した裁判所の権限を明記すべきです。具体的には、無罪を根拠付ける可能性のある証拠の存否を調査することを命じる権限と、該当する可能性のある証拠の提示命令及び提出命令を明文化する必要があります。無罪を根拠付ける証拠か否かを検察官の判断に委ねることは、無辜の救済を目的とする再審制度の実効性を損ないます。  また、無罪証拠の開示を求めることは請求人の権利でもあるはずです。これは、当事者主義だとか職権主義といった訴訟構造を超えたところにあるはずです。再審請求理由との関連性を要求しない証拠開示を認めることにもまた理由はあるのです。  次に、証拠の一覧表について述べます。  提出命令との関係でも、請求人には検察官保管証拠の一覧表が交付されるべきです。重要な証拠の開示漏れが生じてはなりません。存在しない証拠に対する的外れな請求が繰り返される、そのような事態は手続の遅延をもたらすだけです。  衆議院では、一覧表が提示され、提供されなくても開示請求はなし得るではないかという趣旨の答弁があっています。しかし、請求が可能だとしても、より的確、迅速に請求できる手段があるのであれば、そちらを選択すべきではないでしょうか。加えて、附則四条二項が裁判所の勧告や任意の開示を適切に行うとしているのですから、これを的確に行うためにも一覧表は必須です。  また、一覧表の交付は、証拠開示制度を設ける場合にも必要な制度の整備です。特に無罪の根拠となる証拠の開示を実現するためには必要です。  目的外使用について述べます。  証拠の目的外使用の禁止は、三つで過剰な規制です。一つ目は目的限定の過剰、他の正当な目的による使用も禁じられています。二つ目は制限方法の過剰、開示方法、時期、条件を付すことなどによる弊害回避は十分可能です。さらに、既存の弁護士の職務上の義務があるにもかかわらず、罰則を設けてまで規制をしている点も過剰です。  非公開である再審請求手続において、支持者の支援は大きな役割を果たしています。報道機関に概要を伝えるだけでは、報道機関は請求人が主張しているという扱い、そういった扱いにとどまります。証拠を見れば明らかとなる事実が報道されることはありません。通常審で導入され既に問題が指摘されている制度を再審請求審にまで拡大する必要性も合理性もない、そう言い切れます。  次に、検察官抗告の禁止です。  十分な根拠があることが行為規範であれば、閣法四百五十条の二は空文化します。十分な根拠があるか否かを検察官自身が判断するからです。  では、裁判規範とすればよいのか。幾らかは良くなるでしょう。しかし、問題が残ります。刑訴法四百三十五条六号による再審請求の場合です。抗告に十分な根拠があったかどうかについての判断事項と、抗告に理由があるかどうかについての判断事項は実質的に重なり合っています。つまり、抗告しさえすれば、裁判所は、十分な根拠があるかどうかと判断するために、抗告に理由があるかどうかと同じような内容を審査する、つまり、開始決定を審査するのと同じことをしてもらえるのです。無条件に抗告を認めることと同じ結果となりかねません。  検察官以外の請求人による再審請求のほとんどは六号再審です。そうすると、裁判規範と解した場合であっても、規定が抑制的に働くことを期待できません。検察官抗告は全面的に禁止されるべきです。六号は絶対に禁止されるべきです。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 高平参考人、時間になっておりますので、御意見の方おまとめいただきますようお願いいたします。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) まとめさせていただきます。  目隠しをされ、手足を縛られ、無実を訴えたくてもそんな方法がない、そういう再審請求人の責任に見合う手段、方法を、そういう切実な思いが今の法改正につながっているのではないでしょうか。最高裁白鳥決定が、無罪を言い渡すべき明らかな証拠とは、確定判決における事実認定につき合理的な疑いを抱かせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠であると述べたのは一九七五年です。しかし、二〇二六年、この改正においても、六号の文言を改める、そんな話は出ていません。なぜなんでしょう。こういうのが再審だ、そういう指針、スタート地点はここにあったはずなんです。  しかし、せめて、せめて今やっていただきたいこと、それは、再審請求人が主体的、能動的に手続に参加できる制度の構築です。それが円滑、迅速な手続進行を促進し、救済への道を開きます。手続構造を変えてくれ、そんなことは申し上げていません。今の法の構造に適したより良い制度にしていただきたい、それを求めているのです。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。  質疑のある方は順次御発言願います。

古庄玄知 自由民主党・無所属の会

○古庄玄知君 三人の参考人の先生方、本日は誠にお忙しいところを来ていただきまして、ありがとうございます。自民党の古庄です。  まず、三人の先生方に、成瀬先生、田岡先生、高平先生、順番にお願いしたいんですが、本件で、職権主義か当事者主義かという言葉が出てこられました。職権主義ということ、だから今回の法律の改正はこれは必然なんだと、そういう論理的な結び付きは私はないんじゃないかと思っていまして、これは、袴田事件の裁判を担当した先生、今弁護士やっていますけど、判事だった先生も、その職権主義というのは、要するに裁判官が主体となって考え、手続を行う制度であると、したがって、必ずしも、だから、裁判所だけが出てきて、当事者を出させる必要はないんだという考えじゃなくて、裁判官が一番必要と思うような手続を取るのが、これが真の職権主義だというふうなことを言っています。その中で先生は、村山先生は、裁判官がどの証拠が必要かどうかというのを判断することはできない、証拠にも接していないので、したがって、一番当事者で、真実探求に必死になっている当事者に直接証拠を見せる、いわゆる証拠開示を認めることが、これが真の職権主義にかなうんじゃないかというふうなことをおっしゃっていました。  この点について、三人の先生方の御意見をお伺いしたいと思います。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  今先生、御質問の中で職権主義と当事者主義のことに触れられて、職権主義からすると、論理必然に一つの形が出てくるわけではないのではないかという御指摘をいただきました。  まず申し上げたいのは、職権主義の下でも、手続関与者に十分な手続保障をするということは極めて重要であります。  ただ、職権主義の構造の手続と当事者主義の構造の制度をごちゃ混ぜにいたしますと、冒頭の意見陳述で申し上げさせていただいたように、裁判官や手続関与者がどのように動けばよいのかということが分かりにくくなりますので、やはり、職権主義構造に整合的な形で手続関与者の手続保障を図っていく必要があるんだろうというふうに思っております。  その上で、古庄先生から御質問いただいた、その裁判官には分からないので請求人に直接開示してはどうかということなんですけれども、今回の証拠提出命令制度というのは、その再審請求者に請求権が与えられておりまして、再審請求者がこういう事情で欲しいからということを裁判官に訴えて、その事情を踏まえて裁判官が判断するということでありますので、再審請求者の主張内容等は十分に加味されるだろうと思われます。  さらに、裁判官の元には、提示命令を掛けることによって証拠そのものや一定の範囲の標目一覧表を出してもらうということもできますので、裁判官が審理に必要な証拠を選び出して提出を掛け、その上で弁護側に閲覧をさせるという制度は十分に機能するというふうに私は考えております。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 田岡です。  まず、職権主義であるか当事者主義であるかによって必然的にこのような制度が決まるというものではないというのは、全く私はおっしゃるとおりだと思っております。  そもそも我が国で、職権主義でいえば、例えば少年事件は全記録が裁判所の手元に行くという仕組みになっておりまして、裁判官は全ての証拠を見た上で判断するということになっております。  ところが、この再審手続は、どうしても通常審が当事者主義なものですから、元々確定記録には、検察官が請求した証拠であって、かつ裁判所が取り調べた証拠しか手元にないという状態からスタートしますので、典型的な職権主義とはそもそも異なるわけです。当事者主義的な手続の結果、残ったものを前提に判断する、その中で新証拠を出せと言われても、その段階では検察官がまだ証拠を持っている状態、裁判所に証拠は行っていないわけですから、そうなると、再審請求の手続保障を図らない限り検察官が持っている証拠を利用できないではないか、このような問題意識から高平先生は、再審請求人にきちんと主体的、能動的な権限、権利を認めていかないと裁判所が正しい判断ができませんよと、こう指摘されているんだと思いますので、私は、再審請求審が職権主義だからといって、直ちに証拠提出命令制度でよい、再審請求人に開示しなくてよいということにはならないというふうに考えております。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 私も田岡参考人と意見を同じにしています。  若干付け加えさせていただきますと、この職権主義と言われる再審請求審の一つの特徴なんですが、これ、立証責任を請求人が負っているんですね。これ、非常に重たい責任です。職権主義構造で、かつ請求人にこれだけ重い。ただ主張すればいいというわけではない、主張すれば裁判所が証拠を探して解決してくれる、そんな制度ではないんです。立証を請求人自身がしなくてはならないんです。そうであるからには、この立証ができるようにする手続保障は制度に必然的に組み込まれるべきであると考えているということを付け加えさせていただきます。  以上です。

古庄玄知 自由民主党・無所属の会

○古庄玄知君 ところで、証拠開示の問題と、もう一つ、自民党の内部の議論のときに出てきたのが検察官抗告をどうするかという問題で、検察庁の方は、原則として検察官抗告はできないと、できないというか、条文からその検察官の再審決定に対する部分を落としたという、そういう処理をしたんですが、ただ、十分な根拠がある場合は例外的に認めると、そういうふうな改正案を作りました。  そこで、またこれも三人の先生方にお伺いしたいんですけれども、この十分な根拠ということの意味内容、それと、これによって原則、例外の関係が間違いなく維持されるのかどうか。もう一つ、十分ではないけれどもそれなりの根拠があると、そういうふうな場合に即時抗告審とすればどういうふうに判断すればいいのか。ちょっと立場が違うので分かりにくいかと思うんですけれども、ちょっと分かればその点について意見をお聞かせ願えればと思います。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  まず一点目の十分な根拠の意味につきましては、検察官が不服申立てをすることにより再審開始決定が取り消される蓋然性が高いことを裏付ける合理的な根拠がある場合を指すと考えております。具体的には、重大な事実誤認等があり、それらに関する誤りの主張が上級審に受け入れられて再審開始決定が覆ることとなる蓋然性が高い場合を指すと考えております。  二点目ですけれども、この規定を設けることによって原則禁止、そして例外的に許されるという運用が果たして担保されるのかという点ですが、私自身は十分に担保可能であるというふうに考えております。  今回の閣法におきましては、検察官が即時抗告をした場合には直ちにその理由等を国民に向けて説明をしなければならないと、公表しなければならないということになっており、抗告審の審理は基本的に一年以内に終わらなければならないという附則も付いております。  そうだといたしますと、抗告した段階でどういう理由だったのかということが示されて、その結論も一年以内に裁判所から示されると。その後、五年後見直しで実際に審理が、検討が始まった場合に、検察官抗告をしたのにほとんど受け入れられていないということがあれば、この十分な根拠に基づいてなかったんではないかということに従ってその制度を新たに変えるべきだという議論になりかねませんので、検察官としてはそうならないために、最大限この十分な根拠があるかということについて組織的検討を行って、非常に慎重に即時抗告の可否を判断していくものと思われます。その意味で、例外的になるという点は運用上十分担保できると思います。  その上で、三点目ですけれども、それなりの根拠しかない形で即時抗告をしてきた場合、抗告審としては、通常、そのまま理由はないものとして棄却をするということになるだろうと思います。そうだといたしますと、先ほど申し上げたように、その結果が国民に知らされて、五年後見直しで検察官が制度改正の不利益を被る余地が出てくると、そうなると思います。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) まず、十分な根拠といいましても、こういった用語が用いられている例はほかの法令にはございません。もうこの条文だけでございます。  そして、この十分な根拠とは何かについて、佐藤刑事局長は現決定が取り消されるべき蓋然性が高い場合を言うのだと説明していますが、六号再審、つまり無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときのうち、この明らかなというのは元々が予測判断ですね。つまり、本当は再審公判を開いてみないと有罪になるか無罪になるか分かりませんけれども、無罪になるだろうと、無罪になることが明らかだという判断をしたのに対して明らかではないと争っているわけなんですが、元々予測判断なのに、それが取り消されるべき十分な蓋然性がある場合といったところで、これまた予測判断になりまして、結局のところ、幅があるものですから一義的に決まらないんですね。  そうなりますと、これ判断者は検察官で検察官の行為規範だと言われていますから、検察官としては十分な根拠がありますと言ってしまったら、それが間違っているということが言えないわけなんです。よほどのことがない限り、その判断が正しいとか間違っているとかいうことを裁判所が判断すること自体が難しい、そういう条文になってしまっていると思います。  ですから、二番で原則、例外が逆転する可能性がないのかというところが私もまさに懸念しているところでございまして、条文の上では四百五十条から四百四十八条一項の決定が削除され、四百五十条の二が設けられたことによって、あくまで例外なんだというふうに見えますけれども、では検察官、これまで十分な根拠なく抗告したことがあったのですかという質問に対しては答えない。過去の抗告においてどれが十分な根拠がなかったとされるのですかという質問にも答えない。さらには、福井事件における第一次再審請求の場合の抗告、これ証拠を隠して抗告しているわけですから違法になるんじゃないですか、不当じゃないですかという質問にも答えない。  こうなりますと、この規定を設けることで一体どのような場合に抗告が制限され得るのかということすら明らかでありませんから、これではやはり実効性がない、単なる期待にすぎないんではないかと思います。  最後の三点目のそれなりの根拠ですけど、まさに令和八年四月、今年の四月に自民党の党内審査に示された法務省の報告書によれば、福井事件のこの第一次再審請求事件の即時抗告には相当の根拠があった、相応の理由があったと、こう書かれているんですね。これ、「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書を開示せずに、第一次再審請求の再審開始決定に対して抗告して取り消させているんですね。第二次再審請求でそれは不正の所為だと、罪深い不正の所為だと言われていることについて、相応の理由があったといまだに言っているわけなんです。ですから、これ、それなりの理由があったということですよね、検察官としては。このような場合に裁判所はそれなりの理由がなかったとして棄却することはやはり難しいんだと思います、この条文では。  ですから、条文としては四百二十六条前段の手続違反として棄却すべきだと、事実の取調べせずに棄却すべきだということになるんですけれども、現実に、じゃ、それができるかと言われた場合に、裁判所としてはなかなか厳しい判断を迫られるだろうと思います。  ですから、もし原則、例外にしたいんであれば、少年法三十二条の四のように、抗告受理申立て制度にすれば、二週間以内に受理の有無を判断しますので、まずその抗告があった段階で判断ができるんですけど、これそういう制度になっておりませんから、抗告してしまったら終わりです。抗告した者勝ちという制度になってしまうんではないかと危惧しております。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) おおむね田岡参考人と同じ意見なんですが、少し別の角度から補足をしたいと思います。  先ほど私の意見陳述の中でも申し上げましたが、これ十分な根拠があるか、六号再審の場合について考えていただきたいんですね。十分な根拠があるかどうかと、再審請求に理由があるかどうかって、結局、合理的疑いを生じさせるということについて、そういうふうなものじゃ、あるんだ、ないんだということに、これ自信があります、ありませんみたいな主観的なところで、何を見るか、裁判所、じゃ、何を見るかというと、やっぱりこの再審請求の理由があるかと全く同じ内容を審査するということになるんですよね。審査対象が重なり合っているんです、これ完全に重なり合っているんです。  さっき田岡参考人がおっしゃっていた、これは十分な根拠がなかったということで棄却するのは非常に難しいというのはそういうことなんですよね。同じこと、結局、根拠がどのようなものであろうと抗告さえしてしまえば審査してもらえるんです、審査してもらえるんです。これ、抑止になるでしょうか。普通に考えたら抑止になりようがないのではないでしょうか。  私は、原則、例外というのが維持されるとは到底思えません。特に、検察官以外の再審請求、ほとんど六号再審です。六号再審でこの問題が起こるんです。この点を理解していただければ、この規定がいかに効力が弱いか、あるいはないかということを御理解いただけるのではないかと思います。  以上です。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 時間になっております。

古庄玄知 自由民主党・無所属の会

○古庄玄知君 はい。  じゃ、時間が来たので終わります。ありがとうございました。

打越さく良 立憲民主・無所属

○打越さく良君 立憲民主・無所属の打越さく良です。  本日は、参考人の先生方、貴重な御指摘をありがとうございます。  もう本当に、もう長年冤罪被害に苦しめられ闘ってこられた方々、そして支援された方、弁護団の方々のおかげで、ここまで、ようやくですね、再審法、もう改正しなければならないという機運が高まってきたところでございます。本当に多くの方々に敬意を表したいと。その様々な闘いについてどういった御指摘があったのかということも今日の参考人の先生方の貴重な御意見の中からも深掘りされたかと思いますが、また言い足りないところもあったかと思いますので、更に深掘りをさせていただきたいと思います。  まず、参考人の先生方、成瀬参考人、田岡参考人、高平参考人の順で伺いたいと思いますが、もう既に触れていただいているところもございますけれども、法務省は、閣法四百四十五条の二の証拠提出命令制度ができれば、これまで以上に幅広く開示されることになると、こう説明しているわけですけれども、この点どう思われるかと。あるいは、閣法四百四十五条の二の証拠提出命令ができても、従来運用上の措置として行われてきた証拠開示の勧告及び任意での証拠の開示も可能ということで、実務の運用を後退させることもないんだと、そういった見解もございます。こうした見解についても併せてそれぞれ御意見いただきたいと思います。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  今回の法律案というのは、従来行われてきた裁判所による証拠の提出ないし開示の勧告及び検察官による任意の提出及び開示というものは全く否定するものではありません。むしろそれを今まで以上にやっていただきたいということを前提に、それに加えて、裁判官が証拠の提出を命じなければならないという規定を新たに加えるものでございます。  そのような観点からいたしますと、従来行われてきた任意による開示、提出ですとか、あるいは裁判所による提出あるいは開示の勧告というものは、これまで以上に広く行われていくだろうというふうに理解しております。  さらに、衆議院における修正におきまして、附則の四条二項にその旨を立法府の意思としても明記していただきましたので、より、なおのこと担保されるだろうというふうに考えているところでございます。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 私は、この証拠提出命令ができたことによって、従来の実務運用として行われてきた証拠の開示がむしろ後退するのではないかという懸念を持っております。  なぜかと申しますと、従来、通常審における証拠開示制度を参考に証拠開示の勧告や証拠開示の運用がなされてきたからです。通常審では、類型証拠開示と主張関連証拠開示という二本立ての証拠開示制度になっておりまして、この類型証拠開示が非常に重要なんです。  例えば、現場にあった証拠物、実況見分調書、検証調書、鑑定書、それから関係者の未開示の供述調書、こういったものは、本来、主張と関係なしに当然開示すべきである、なぜなら防御のために重要であるし、それによる弊害というものもほとんど考えられないからだということで、今、通常審では、平成十六年改正以降、当然これらは開示されているんです。それに加えて、弁護人の主張に関連する証拠も開示される、これが主張関連証拠開示なんです。  今回の再審請求審で、日弁連は、この二本を作るべきだと言ったんですが、結果的に残ったのは後の方だけ。つまり、再審請求の主張に関連する証拠開示、これが再審請求理由と関連する証拠提出命令の制度なんですね。  そうすると、じゃ、類型はどこに行ったんだと。これが今言われている任意での開示だと、それが可能なんだというんですが、どうしたってこの新しい制度ができますと、再審請求人の主張と関連する証拠だけ開示すればいいんでしょうと、だって成瀬さんもそう言っているじゃないですかと、こういうふうになりますと、いや、幅広く現場にあったものを開示させないと、本当に真犯人でなかった場合に、現場にもしかしたら犯人でない人の第三者のDNAがあるかもしれませんよと言っても、そもそも開示すらしてもらえないという形で、従来の実務運用を後退しかねないことになっています。裁判所が勧告するといったって、勧告を今までしてきたものがこれからできなくなってしまうと、検察官もそれに応じなくなってしまいます。  成瀬さんも「法学教室」の論文では、この従来の実務運用は明文規定がない中で生み出された実務上の知恵として評価する余地もあろうと、こうおっしゃっておられたわけですよ。この実務上の知恵を今後もやっていくでしょうというのは成瀬さんの今の単なる期待ですぎませんで、実務の現場としては、こういう証拠ができちゃったら、証拠提出命令の制度ができちゃったら、関連する証拠だけに限定されてしまう、そのおそれがあるから類型証拠のような証拠は必ず開示させるような権限を裁判所に認めさせるべきだというふうに私どもは考えております。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 基本的に田岡参考人と同じ意見です。  幾つか付け加えさせていただきます。  これまで以上というのは、どこを水準にするかによって評価は変わり得ると思います。御存じのとおり、再審格差と言われるぐらいで、全く証拠開示に手を着けなかった裁判所もあります。そこを基準にしたならば、それはたくさん出てくる、そういう評価はあり得るでしょう。しかし、私たちがここで目指しているのはそんなことではなかったはずです。救済がなされた事例との比較においてどうかという基準を持たなければいけません。  それを前提に検討しますと、先ほど田岡参考人がおっしゃられたように、通常審に倣って開示されていた類型証拠開示に該当するような証拠が開示されなくなってしまう、この結果は極めて明白です。それは、閣法四百四十五条の二がある以上、この枠の中で任意に応じるというのが検察官の対応として合理的に予想できるからです。  将来どうなるか、もう見えていると私は思います。後退すると言って差し支えないと考えます。  以上です。

打越さく良 立憲民主・無所属

○打越さく良君 続いての質問も、成瀬参考人、田岡参考人、高平参考人の順で伺いたいと思います。  例えば、袴田事件の第二次再審請求審の約六百点の証拠開示、福井事件の第二次再審請求審の二百八十七点の証拠開示は、証拠開示請求書の形式を見ますと、類型証拠開示の発想に基づき作成されたものと思われます。  今後、再審請求理由との関連性、必要性のある証拠に限定されるとしますと、このような証拠開示はどうなるのか。認められなくなるのではないかと、そういった懸念も抱くのですけれども、いかがでしょうか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  今回の閣法で設けられる証拠提出命令制度につきましては、確かに再審請求理由に関連する証拠が対象となってございます。ただ、これは、裁判所が提出を命じる義務があるものであり、かつ検察官が証拠を提出する義務がある範囲はぎりぎり詰めるとどこまでかということを定めたものにすぎません。  今先生が御指摘いただいたその袴田事件や福井事件等でなされているものというのは、裁判所による勧告であろうと思われます。勧告については、必ずしもこの枠に全面的に依拠してぎちぎち詰める必要はないわけでして、請求人が出してきている新証拠及び主張を踏まえた場合に、この事案についてはかなり旧証拠の証明力についても丁寧に審査する必要があるというふうに裁判所が考えた場合、裁判所が幅広に証拠の提出を勧告するということは十分可能であり、両事件のような運用は今後も可能であるというふうに考えております。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 福井事件について申しますと、この証拠開示請求書の書式はほとんどもう通常審の類型証拠開示請求の発想で作られているんですね。つまり、そのとき再審請求人が出していた新証拠に限定されずに、関係者の未開示証拠を全部開示してくださいとか、現場にあった遺留物を全部開示してくださいと、こういう開示請求をしています。  第一次の段階で九十五点開示されました。ところが、その中には「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書って含まれておりませんでした。これ、なぜかといいますと、裁判所が勧告したときに供述調書を出してくださいと言ったから、供述調書以外は出さなくていいんですねという形で漏れたわけです。  第二次再審請求で、それじゃ足りないから取調べのメモや捜査報告書も含めて、その供述の判断のために必要なので全部出してくださいと言ったら、検察官、まずこれを拒否します。検察官、高検全体の総意であるとして拒否します。それに対して、裁判所が、証拠や証拠一覧表の提出命令、勧告を出しますよと、調書にあなたは拒否したと書きますよと言ったら、仕方がなく出してきたのがこの二百八十七点なんです。その中に「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書が入っていました。だから、そこまで言わないと出さないんです。  その報告書を出さなかったことについて、いまだに法務省は、今年の四月の中間の取りまとめでは、基本的な対応は取られていたというふうに評価しているんですね。なぜかといえば、裁判所から言われなかったからですと、第一次の段階ではそういう報告書まで出せと言われていませんから出さなくてもいいんですと言っているんです。  だから、こういうやり方でいいんでしょうかということなんですね、高平先生もおっしゃっておられましたけれども。結局、裁判所がきちんと命じて、検察官が義務じゃないけれどもやりますと言ってやった場合にたまたま助かる例が今までありましたけれども、そういうたまたまでこれからもやっていくんですかと、きちんと裁判所の権限と検察官の義務として規定しないと実効性がありませんよということだと思いますので、今の法案ではこういったことが実現しなくなるおそれがあると思います。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) この点につきましては、私、田岡参考人と意見を同じくするところです。  幾つか補足だけさせていただきます。  勧告したところで、じゃ、その先どうなるかということを当然検察官は予想します。勧告されても、結局命令まで行き着かないのではないかという予測が立つわけです。ぎりぎりのところで義務が作られているということでしたので、この条文で作られていた関連性の枠がはまったところじゃないと命令は出されないだろうという予測が立つのであれば、じゃ、進んで証拠を出すでしょうか、任意で出すでしょうか。到底そのような結果は予想できません。  私からは以上です。

打越さく良 立憲民主・無所属

○打越さく良君 続いては、時間も足りなくなってきたので、田岡参考人と高平参考人に伺いますけれども、裁判所提出型にしても、弁護人は閲覧、謄写できるわけだから、直接開示を認めなくても問題ないという考え方ありますけれども、それについてはどう思われますか。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) まず、先ほども説明しましたように、裁判所が提出を命じる証拠は裁判所が裁判をするために必要な証拠に限られます。ですから、例えば、五点の衣類のカラー写真やネガフィルムを裁判所が取り寄せる必要がないと判断すれば取り寄せられません。しかし、それを再審請求人が見せてもらえないとみそ漬け実験できないわけですから、裁判所が裁判のために必要な証拠と再審請求人が主張のために必要な証拠の範囲は当然異なるということになります。  さらに、確かに閲覧、謄写できるじゃないかと言われますが、これは弁護人がいないと駄目なんです。法制審の諮問事項に裁判所不提出記録の弁護人による閲覧、謄写と書いてあったので、私は、だったら、国選弁護制度つくるんですかと聞きましたら、つくらないと言うんですね。じゃ、弁護人がいないと閲覧できませんよ、どうするんですかと言ったら、運用でやります、裁量で見せることできるんですと最高裁の方おっしゃいます。いや、今までそんなの聞いたことないですけど、じゃ、見せるんですねと、そうしたら拘禁されている方どうなりますかと、死刑確定囚や受刑者の方は見られませんよと、それはしようがないと言うんですね。さらに、手続保障として、じゃ、証拠提出命令があって取り調べたら通知するんですかと言ったら、運用でやりますとおっしゃるんです。  先ほど言った榎井村事件では、次席検事は書記官通さずに担当裁判官に直接捜査報告書つづりを持っていきまして、それで裁判所は証拠調べをして結審しようとしたところ、弁護人からの抗議を受けて、実は証拠を受け取っておりますと認めたわけですよ。その結果、再審開始決定になったんですね。  証拠は、取り調べたら通知しなきゃ駄目ですよね。そうしないと、閲覧、謄写もあったもんじゃありません。我々は、ちゃんと通知を受けるから、じゃ、閲覧、謄写を申請しますとなるわけですし、裁判所が取り調べた結果を通知してもらえるから、それに基づいて意見が言えるわけです。裁判所だけが提出させればよいというのは、当事者の手続保障を全く無視した議論だと思います。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) まず、目的が違うので範囲が違う、範囲が違ったときに、請求人に開示される証拠の方が広くなるんですね。これ論理的に、準備のためなので広く開示されないと意味がないというか、機能しないというところになるかと思います。そうすると、裁判所が提出させるために、本当に裁判所が命令をしなきゃいけないと思っている証拠よりも準備のためには広いものが要るなと思ったときに、裁判所は恐らく命令を出すかどうか悩むんじゃないかなと思います。  これ、純化すればですよ、自分が判断に資すると思ったものだけ命令すればいいという明確な行動指針だったものが、開示の役割も負わせられてしまっているがゆえに、むしろここでは判断指針が混乱してしまうんですね。この制度を一本化することによって、むしろ混乱した状況を生み出していると私は思っております。  以上です。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 時間になっております。

打越さく良 立憲民主・無所属

○打越さく良君 はい。  課題が多数あることを受け止めさせていただきます。ありがとうございました。

川合孝典 国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 国民民主党の川合孝典と申します。  三名の参考人の皆様には、貴重な御意見を頂戴しまして、誠にありがとうございました。  同じ質問、同趣旨な質問が続くことになりますが、御容赦をいただきたいと思います。  その上で、まず成瀬参考人にお伺いしたいと思いますが、証拠の開示ということで、これまで再審無罪が出た判例、例えば袴田事件もそうです、福井事件もそうですが、おおよそ裁判所が関係ないと、失礼、おおよそ関連性がないと思われていた検察官の保管証拠の中に無罪を立証するような証拠が隠されていた事例がこれまで散見されているわけでありますけど、こうした事実を踏まえて、現在の証拠開示の在り方についてどのように考えていらっしゃるのかをお聞かせいただきたいと思います。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  袴田事件と福井事件において、今先生は関連性がないと思われていたというふうな表現を使われましたけれども、厳密に申し上げますと、袴田事件で第二次請求審で問題になったのは、犯人が着ていたと思われていた着衣が袴田さんのものではないんじゃないかという疑いを持たれていたわけです。それに関する主張を再審請求者側から出していたわけでして、そうだといたしますと、その点が争点になるというふうに裁判所が考えれば、その衣類に関する証拠は基本的に再審請求理由に関連する証拠だということで、写真やネガフィルムを出してくださいということは、新たに設けられる証拠提出命令制度の下では十分可能であるというふうに私は考えております。  なので、従来余り深く考えずに関連性がないというふうに決め付けていた部分がありまして、検察官は関連性がないというふうに言っていたのかもしれませんけれども、今回の法律が予定している再審請求理由に関連するというのは、再審請求理由の判断に資するという程度のものでありまして、相当幅広く考えられるだろうと思います。  そのような観点で言いますと、袴田事件については、今申し上げたように再審請求理由に関連するというふうに位置付けることが可能ですし、福井女子中学生の事件についても、その目撃者、犯人を目撃した人のあの供述の信用性というものが問題になっていて、その目撃した日時というのが本当にこの日だったのかという話になれば、犯行の目撃日時に関してどのような裏付けを取ったのかということも裁判所は気になり始めるはずです。  そのように考え出すと、請求人が言っていることの再審請求理由を広げていけば、十分に再審請求理由に関連するものとして捜査報告書だって出すということは考えられると思います。そのくらい再審請求理由に関するものというのは広いんだということを私は申し上げたいと思います。  以上です。

川合孝典 国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 田岡参考人と高平参考人に御質問したいと思いますが、今の成瀬参考人の御見解に対して御意見があれば承りたいと思います。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 成瀬先生は関連性があるって言わないといけないから関連性をとにかく広げようとしていらっしゃいますけど、従来、我々は、それは関連性がないと思っていました。というのは、通常審では主張関連証拠開示で出てくる証拠の範囲というのは非常に狭くて、弁護人側で、その主張と関連することに加えて、必要性や相当性まで立証しなきゃいけないんですね。単に関連していれば全部開示されるという制度になってないわけです。  じゃ、何の必要があるんですかと言われると、それは見てみなきゃ分かりませんと私たち常に言ってきました。どんな証拠があるかも分からないのになぜ見せる必要があるんですかと言われたら、それは見てみなきゃ分かりませんってことなんです。で、結果的に袴田事件は、例えばズボンのタグのBがサイズじゃなくて色でしたというのが、見て分かりますけど、そんなの分からないわけですよね。  だから、ズボンのタグに着目しようという問題意識を持っていればそういう請求ができますよということを後から後知恵で言っていますけど、それはたまたま広く開示を受けたらその中にたまたま見付かったということでありまして、証拠開示というのは、検察官が請求する証拠や裁判所が有罪認定した証拠の中にもしかしたら誤りがあるかもしれないから念のためにチェックしましょうというものであって、ほとんどの場合、そのチェックというのは無駄な作業かもしれないわけです。しかし、その無駄な作業を一生懸命やっていく中でたまたま見付かるわけでして、最初から関連性や必要性があると思って探している人はいないんですね。そのチェックの結果、もしかしたら有罪認定のが正しいかもしれないわけです。  だから、今、成瀬先生がおっしゃっておられるのは、たまたま結果的に見付かったものは関連性があるものでしたと、それは当たり前で、それはそういうものがあったからです。そのほかにも無駄なものたくさん開示されていますけれども、そういうものが今度開示されなくなった場合に、もしかしたらそっちに無罪の証拠があるかもしれない、そういった運用が今後は無理になるかもしれない。だから、関連性という枠をむしろ設けない方がいいんじゃないですかということを私どもは申し上げております。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 今、意見陳述の中でも申し上げましたが、関連性というのはどういうことかといいますと、その新証拠が弾劾している旧証拠が証明しようとする主要な事実が共通する証拠に関しては開示の対象になるというような考え方だと理解しています。  ちょっとこれ、袴田の例だったのにちょっと東電のことをお話しして恐縮なんですが、例えば、私の意見陳述の中で述べさせていただいた東京電力女子社員殺害事件なんかの場合だと、最初出した証拠というのは精子の状態なので、その犯行時刻に被告人がいましたというやつなんです。現場存在に関するものなんですね。じゃ、これ、どうやって広げていったら、その被害者の身体に付着した血液型までどういう論理をたどればたどり着くんですかと。そこにたどり着く幾つもの枝葉がある、その枝葉を探して探して、いつか偶然たどり着いたら、もしかしたらその証拠にたどり着くかもしれません。そういう話だと思うんです。  出てこない、必要なものが出てこない、たどっていけばたどり着きますというのは、仮定に仮定を重ねた論理だということを指摘させていただきたいと思います。

川合孝典 国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 ありがとうございます。  今の田岡参考人と高平参考人の御意見に対して、成瀬参考人からは御意見ございますでしょうか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) ありがとうございます。  まず、田岡参考人は通常審の段階で主張関連証拠がかなり厳しく制限されているという御指摘をされましたけれども、まず、私自身はその認識と少し違うということを申し上げたいと思います。  通常審における主張関連証拠については、最高裁の取調べメモ等に関する判例も踏まえて、かなり幅広く出されているというふうに認識をしております。もちろん、最終的に主張関連証拠として開示命令が出される事例というのは多くなくて、もう検察官が裁判所がそういう姿勢を示せばもうどうせ命令が出るだろうと思って開示をするということなんですけれども、類型証拠に限らず、主張関連証拠についても私はかなり幅広く通常審で開示されているだろうと思います。  そうだといたしますと、再審請求理由、もちろん要件は微妙に違うわけですけれども、再審請求理由に関連する証拠というものも相当幅広く裁判所は認めていくことになるだろうというふうに思っております。  高平先生が出していただいた東電OL事件については、私自身、必ずしも十分に事案を理解し切れていない部分があるかもしれませんけれども、その犯行時に被告人の方がその場にいたことに疑いがあるというような新証拠を出して再審請求理由を掛けた場合に、その新証拠によってその旧証拠の一部が弾劾されて、本当に被告人はその場にいたんだろうかということに疑いが生じれば、他の旧証拠の証明力についても再評価をしないといけなくなるということになるわけです。  あの事案においては、被害者の方の身体等に体液等が残っているということが分かれば、それがどのような意味を持ってくるのかということも考える余地が出てくると思いますので、最初の新証拠によって直ちに関連性があるとまでは言い切れないとしても、今申し上げたような審理の経過にも応じて、再審請求理由に関連する証拠は広がっていくんだというふうに私は考えております。  以上です。

川合孝典 国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 そのように成瀬参考人は想定されているということですね。  その辺りのところの受け止めということで、冒頭、田岡参考人や高平参考人がおっしゃっていたとおり、現実問題として、適正に手続が取られていればそもそも冤罪事件などというものは起こらないはずであり、それが生じてしまっていることのそもそもの理由がどこにあるのかというところがあった上で、かつ、いわゆる再審無罪判決が立て続けに出ていることで、検察に対するいわゆる国民の信頼が損なわれてしまっていることがそもそもの背景にあるわけですね。そうした状況の中で、要は、検察官が判断して、きちんと判断するから大丈夫だから任せておけといった、そういった趣旨で法律を作っても、どうやったって、要は国民の皆さん、我々審議に参加している人間もそうですけど、安心して委ねられない気持ちが今あるわけです。そうした状況を踏まえて、いかに納得性の高い手続をきちんと行っていくのかということが今問われているんだと私は思っております。  その上で、成瀬参考人に御質問させていただきたいんですが、裁判所に対する証拠の提出命令というものが今回新設されるということでありますけれども、直接それを申立人、請求人が見ることはできないということ、ここに非常に問題があるということなんですが、こうした議論をする中で、そもそも裁判官には検察官保管証拠の価値が分からないと、だから、要は提出命令を適切に出すこと自体もそもそもできないんじゃないのかといったような指摘があるんですけど、こうした指摘に対しての御意見があれば伺いたいと思います。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  先ほども少し申し上げたんですけれども、今回創設される証拠提出命令については、再審請求者に請求権が与えられております。ですので、裁判官自身が直ちには分からないとしても、再審請求人あるいは弁護人の側からこういうふうな再審請求理由であって、その関係でこういう証拠があるはずだから出してほしいという具体的な主張を踏まえた上で、裁判官が再審請求理由の関連性を考えると。  さらに、裁判官は、必要があれば当該証拠の提示を検察官に命じることもできますし、標目一覧表の提示も命じることができると。よく分からないのであれば、究極的には、検察官が保管する証拠全てについて、標目一覧表を提示させて裁判官が判断するということもできるというふうに思いますので、裁判官は審理に必要十分な証拠を必ず証拠提出命令を掛けて提出させるものというふうに考えております。

川合孝典 国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 ありがとうございます。  証拠提出命令に対して検察がきちっと応じるかどうかということについては、検察官の裁量で判断した上で出していくということになると思うんですけど、これ、裁判所が再審請求理由との関連性を要件としない証拠の提出命令を、例えば職権で命令を出すことができるといったような制度をつくれば、より法的安定性が担保されるような気がするんですけど、この点について成瀬参考人はどうお考えになりますか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) 一点、先生の御質問の中で指摘をさせていただきたいのが、裁判所が証拠提出命令を出した場合には検察官は提出をすることが義務付けられますので、これはもう裁量判断の余地なく絶対に出さなければならないということをまず確認させていただいた上で、その上で、職権による証拠提出命令制度を設けてはどうかという御議論があることは存じ上げております。  ただ、繰り返しになりますけれども、再審請求審というのはあくまでも請求人が主張をする再審請求理由について審理、判断するものであって、そうだとすればその再審請求理由に関わらないものを証拠提出命令させる必要はないわけです。先ほど来繰り返しておりますように、再審請求理由に関連するというのは非常に広い概念でございまして、審理に必要なものは必要十分に提出されるものと思います。  それに加えて別途裁量に基づく証拠提出命令というものを設けますと、要件が全く明らかでありませんので、これまでの裁判官ごとに判断がまちまちになるような運用というのが再燃してしまうのではないかというふうに私自身は危惧しております。  その意味で、このように再審請求理由に関連する証拠というふうな要件を明示した上で、裁判官の行為規範をしっかりと示した上で、それを義務付ける制度一本にすることが今後の再審実務を安定化させるというふうに私自身は考えております。  以上です。

川合孝典 国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 ありがとうございます。私、今ちょっと表現が言葉足らずで失礼いたしました。  ただ、命令は義務化ということでありますけど、関連性をどう判断するのかは検察に委ねられているという意味では、そういう意味で私自身は申し上げたということを付言させていただきたいと思います。  その上で、時間がなくなってまいりましたので、今の成瀬参考人の御意見に対しまして、田岡参考人と高平参考人の御意見をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) まず、東電事件で検察官がどういう対応を取ったかということを確認しておきたいと思います。  東電事件の弁護団が法制審にも意見書出しています。裁判所は検察官に対して、現場遺留物などをDNA鑑定をしたいので明らかにせよと言ったところ、新証拠との関連性、必要性がなく、かつ弊害がないなど相当性を満たさない証拠は出さないということで拒否し、その証拠の存否すら明らかにしなかったわけです。裁判所がそれに対して、いや、今、平成十六年改正刑事訴訟法で証拠開示制度というものができましたと、だから今だったら当然出さなきゃいけないものなんでしょうと、だから勧告出しますよと強く迫った結果、実はこれだけありますと言って出してきたんですね。  つまり、検察官は関連性、必要性、相当性がないと言ってやはり拒否していたわけで、今、先ほど義務付けしますと言いましたけど、関連性、必要性、相当性がないと思ったら義務付けなんかされませんと、うちは出しませんと言うわけです。裁判所が命令すれば確かに義務付けられますけど、即時抗告して争うわけです。  こうやっていつまでたっても、なぜ、客観的な証拠で現場にあったということを明らかにして誰の弊害もないのに、それを拒否し続けるのかということで時間が掛かっているから明確にしましょうというのが私どもの発想なんです。  成瀬さんはそれで安定すると言うんですけれども、むしろ安定した結果狭くなるんだと意味がないわけですね。積極的に証拠開示を求めて、現場遺留物をちゃんと出させて、DNA鑑定して、無罪になりました、検察官でさえ無罪論告しますというような事例があるのにもかかわらず、その検察官の裁量に委ねたままにしておくことが安定するというのは、結果的に、こういう人は無罪にならなくてもよいという形で安定させようとしているのではないかと私は危惧します。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 基本的に田岡参考人と同じ意見なんですが、少し角度を変えますと、やはり無罪証拠が隠されたままにしない制度はどうしても必要なんだということに尽きるのではないかと思っています。  意見陳述の中でも述べさせていただきましたが、これ、義務があるんですよ、義務があるんですけれども、出せた新証拠ですとか、当初の再審請求理由と合わないところに存在している可能性がある、そういった証拠をきちんと出させる制度は整備しておかなければ、多くの今雪冤を果たした事件、多分、いまだに雪冤できないということは、将来同じような事件が起きたときにそれは救えないという制度を完成させてしまうことになります。そこに危惧を覚えています。  以上です。

川合孝典 国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 ありがとうございました。  終わります。

横山信一 公明党

○横山信一君 公明党の横山信一でございます。  今までの意見交換とかぶるところがどうしても出てくるんですけれども、証拠開示はやっぱり注目をしておりますので、まず三人の先生方にお聞きをしたいんですが、一昨日の法案質疑で、私の質問で、現状の再審請求審では実務運用として裁判所の勧告に基づく検察官による任意の証拠の提出や開示ができるようになっていますと、それだったら、もう改正案では証拠提出命令を、あっ、それで証拠提出命令が導入されるわけですが、これらに加えて証拠提出命令が導入されるわけですが、それならば、裁判所の勧告によって行っている証拠開示を明文化してもいいんじゃないですかと、こういう質問したわけです。  刑事局長からは、すごく長い答弁だったんですが、エッセンスだけを抽出すると、個別の事案に応じてということでありますが、例えば検察官が裁判所に証拠を提出するのと併せてその写しを再審請求者側に交付するといった運用も否定されないものと考えているところでございます、要するに運用でできますと、そういう答弁だったわけです。  そこで、この職権主義の再審請求審では証拠開示命令を導入することはできないのか、あるいはまた、証拠開示命令は職権主義に反するものなのか。御三人の先生方にお伺いしたいと思います。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  先生がおっしゃる証拠開示命令というのは、検察官が直接、再審請求人及び弁護人に証拠を開示するという命令だというふうに理解しておりますけれども、再審請求審というのはあくまで裁判官が主体となって再審請求理由について審理、判断を行う手続ですので、やはりその職権主義構造の再審請求審と整合的であるのは、裁判所に対して証拠を提出させる今回の証拠提出命令制度であるというふうに考えております。  仮にこれと並んで、検察官がその再審請求者に直接証拠を開示する証拠開示命令制度というものを並列いたしますと、再審請求審というのはどういう審理構造なのかということ自体がまず分からなくなってしまいまして、裁判官もどのようにその証拠提出命令と証拠開示命令を使い分ければいいのかという辺りで実務が混乱するのではないかというふうに私自身は危惧しているところです。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 従来の実務運用として行われていた証拠開示制度を法制化することは、私は可能だと思います。  確かに、再審請求審は職権主義ですから、裁判所が主体的に証拠調べ、事実調べを行うと、そのための証拠提出命令というのは当然可能であると。これは恐らく条文設けるまでもなく可能だということが法制審でも、成瀬幹事もそうおっしゃっておられまして、これは事実取調べの一態様なんだから、この四百四十五条の二がないとできないということではなくて、当然できますと。裁判所は、検察官にその証拠を取り調べたいから出してくださいといったときに、当然調べられるでしょうと、ほかの証拠の保管者から取り寄せることもできるでしょうと、それは、職権主義である以上、当然なんですね。  じゃ、この四百四十五条の規定、何のために設けたのかといったら、むしろ要件を設けることによって、全部を取り寄せるんじゃなくて、関連性、必要性、相当性があるものしか取り寄せない、それは義務規定だから義務で範囲を定めたと言っていますけど、実質権限も縛っていまして、この範囲でやれば足りるということを規定したんだと思います。  じゃ、そうすると、それ以外できないんですかということがやはり問題になりまして、従来はこれよりやはり広くやってきたと、私たち現場の人間はそう認識しているんですね。明確に関連性、必要性、相当性はないかもしれないけれども、再審請求人が見たいと言っており、それに弊害もないと、そのことによって審理が円滑、迅速に進むというのであれば見せたらどうですかと、見られて困ることもないでしょうと。弊害もないものを見せないということによって審理が遅滞するのはよろしくないことだと。今、通常審だったら当然見せるべき客観的な証拠をなぜそこまでかたくなに見せないんですかと、見せて困らないでしょうと。見せて困るのは、無罪の証拠があって、無実の人が再審開始になるから困るというんだったら、それはもう理由にならないわけですので、見せて有罪ですということが明らかになるなら検察官にとっても別に悪いことじゃないわけですから見せなさいよということでやってきたわけです。  それを、成瀬先生も実務上の知恵としてやられていたと評価されているのに、法制化に、どうしても拒否するのは、やはり義務にしたくないんだろうなと。検察官の義務にするということ、裁判所の権限にするということに抵抗されているんだろうなと私は理解していまして、それはかえって今までやってきた裁判所の権限を否定することになりはしないかということを懸念しております。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 職権主義というのは裁判所の権限と責任を根拠付けるだけであって、ほかの目的の制度を入れることを否定する根拠になるという使い方はしないのではないかと私は思っています。  これ、目的が違うんですよ。意見陳述のときにも申し上げましたけれども、提出命令というのは裁判所が裁判のために必要な証拠の提出を命令するもので、開示というのは再審請求人の方がその再審請求理由の構築と新証拠の獲得のためにするもので、目的も範囲も違うんです。  なので、先ほど成瀬参考人は、提出命令と開示命令を両立させると混乱するのではないかということをおっしゃいましたが、これ目的が違うので、提出命令は裁判所が自ら判断のために必要だと思ったものを提出させればいい、開示命令については、請求人が、これは準備のために、再審請求理由の的確な構築と新規証拠の獲得のために見ておいた方がいいんだろうなと思ったものについて判断すればいいものであって、それぞれ混乱するということは起き得ないのではないかと思っています。  また、これ一本にする方が混乱すると私は考えています。提出命令に一本化すると、どうしてもここに、開示、請求人が必要なのではないかという考慮を裁判官はせざるを得なくなるのではないか。これ、目的が違うことを考慮して命令をする範囲を決めなくてはならないのではないかという混乱は、むしろ提出命令一本にしたときに生じると私は考えます。

横山信一 公明党

○横山信一君 ありがとうございます。  請求人にとって証拠、先ほど来出ているように、証拠、どんな証拠があるのかというのは非常に重要なことであります。無実だということが分かっているのは本人だけですから、そういう意味では必死ですよね。その何か手掛かりがないかということを見るという意味では、裁判官以上に必死でそれを探していくということになるわけですが。  現行法では、実務運用上、その裁判所の勧告や検察官の任意による証拠開示は可能です。しかし、裁判官の積極性や検察官の姿勢によって再審格差を生じてしまうという現状があります。  改正案の下で、再審請求人や弁護人への証拠開示をどのように実現すればよいか、アドバイスをいただきたいと思います。三人の先生方にお願いいたします。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  まず、改正案ができ上がった場合には、最終的な証拠提出命令の権限は相当広いということを裁判官が理解するということが大事だと思います。  再審請求理由に関連するというのは、再審請求理由の判断に資するという意味なのであって、それは、手続の進行にも鑑みてかなり広がり得るものだということをまずきちんと理解していただく。その上で、再審請求理由に関連するものは基本的に必要、提出させる必要もあるので、特段の弊害がない限りは基本的に提出させるものであるということを裁判官がまず理解することが重要だと思います。  そのような権限をちゃんと持った上で、検察官に、私には最終的には提出を命ずる権限もありますよということを備えた上で、検察官、わざわざ命令まで出さなくても任意に出したらどうですかというふうに積極的に勧告をしていくと。それは、今回、衆議院の修正において附則の四条二項に明示していただいたことも大きな後押しになって、裁判所はそのように運用をしていくだろうと思います。  そのような運用が担保できるのであれば、これまで以上に幅広い証拠が裁判所に提出され、その結果、再審請求者及び弁護人もそれを閲覧できるようになるというふうに考えているところでございます。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) この改正法を前提にしますと、やはり限界があることはもう否めないと思います。  先ほどの成瀬参考人の答弁は非常に積極的かつ熱心な裁判官像というものを念頭に置いておられますので、仮にこの法律の中で何とかやろうと考える真面目な裁判官は、まずは提示命令を活用することといたしまして、証拠を、じゃ、全部提示してくださいと。で、何も標目一覧表なんて面倒くさいものを作る必要はないわけですので、検察官保管証拠全部を提示させることも条文上はできるわけですよね。じゃ、それ全部取り寄せて、その中で必要だと思うものを自ら取り調べるか、つまり提出命令を掛けるか、あるいは弁護人に任意に開示するかということを裁判所が全部の証拠を見た上で判断していけば、少しでも開示漏れを減らせるんだと思います。  ただ、なかなか今までの裁判官はそういうことをやってきておりませんよね。現実には、やはり再審請求審というのは、裁判、再審請求人の主張について判断するんだと。そのことを法制審でも何度も何度も説明されているわけですから、およそ全ての証拠を提示命令を掛けるような運用は、なかなかやはり裁判官としては慎重にならざるを得ないんだろうと思います。  また、裁判官が検察官に、じゃ、任意に開示しなさいと言っても、検察官が拒否すればこれ実効性ありませんよね。附帯決議や附則に書かれていることというのは、裁判所の意向を踏まえて判断すると、でもそれは任意ですよということであって、例えばそれを尊重するとか従うとか書いてあればまだ分かりますけれども、任意の措置とか任意の運用、適切に運用と、こういう表現では、結局いつまでたっても証拠隠しがなくならないのではないかなというふうに思いますので、まあ現行法上何とかやっていくのであれば、今のような提示命令、提出命令、そして開示の勧告を活用はするんですけれども、それでも限界があるということかと思います。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 関連性についての裁判官の認識ということをおっしゃったんですが、これ、条文を見ますと、先ほど成瀬参考人は関連するものは必要性があるんだというふうに理解することからスタートなんだとおっしゃったんですが、裁判官は通常そうは考えないのではないかと思っています。  これ、あくまで裁判に必要と明記されていますし、関連性と必要性は別の要件として定められていますので、今のような成瀬参考人の理解というのが十分に浸透するかどうか、つまりスタート地点の前提が成り立つかどうかという点に危惧がございます。  その意味で、やはり限界があると言わざるを得ないのは田岡参考人と同じ意見でございます。しかも、非常にいびつな進行になるのではないかと思っています。  というのは、請求人の方で主体的、能動的に行為するための証拠開示なんかがないということになりますので、常に裁判官を介してそういったものを入手しなければいけないということになって、裁判官、本来、判断者として再審理由を審査していればいいはずなんだけれども、開示の機能も担わされているということになりますので、そこに対する配慮をしながら進めると。で、自分が必要だと思っていないものについても、開示させた方がいいと思ったときに自分が調べるというような構造になって、再審請求人が理由、そういう理由を述べていないのに、この理由を付け加えた方がいいんじゃないかということで、この理由付け加えませんかみたいなことを言いながら広げていくというやり方は、もうどう考えてもいびつだと思うんですよ。  請求人に端的に証拠開示をして、準備をしてもらって、裁判所は自分が判断に必要だと思う証拠を十分に検討する、そういった役割分担がきちんとなされて、相互に協働しながら活性化させて、発展して解決していくというのが理想な姿なのに、片方しか整備しなかったために、本来の役割を超えたところの配慮などによって非常に手続がむしろ余りすっきりしたものにならない、そこで停滞する可能性もあるという予測をしております。なので、なかなか活性化させるのは難しいのではないかというのが私の展望です。

横山信一 公明党

○横山信一君 時間が迫っておりまして、最後の質問になりますが、田岡参考人にお伺いいたします。  本法律案では、再審の請求を受けた裁判所は、審判開始の決定した後でなければ事実の取調べをすることができないと。この部分、法律案で導入されたスクリーニングの一部の部分であります。  現行法では、必要がある場合には事実の取調べを行うことができます。これを禁止することによる課題を、あれば教えていただきたいと思います。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 私は部会でも、あっ、法制審の部会ですけれども、これは必要ないんじゃないかというふうに端的に申し上げました。  確かに、調査手続というのは、簡易迅速に、明らかに理由がないものを棄却し、明らかに理由があるものを開始決定するという制度ですから、そこで余り重い事実の取調べをしてしまいますと時間が掛かり過ぎてしまうと。それは分かりますけれども、何も禁止する必要はないんじゃないかと思います。例えば、再審請求と同時にこういう証拠を取り調べてくださいという事実の取調べの請求をしてもらった方が、再審、審判開始決定の可否をより判断しやすくなると思います。  例えば、検察官が手持ちの証拠にこういう証拠があるはずなんだからこういう証拠を取り調べてくださいという請求、これは今、証拠提出命令の請求という形を取るんだと思いますが、これを審判開始決定をした後でないとできませんとした上で、新証拠をまず出してくださいという条文を作るんですね。そうしますと、例えば福井事件の場合に、「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書があると聞きましたので出してくださいという請求はしてはいけません、あなたの方で新証拠出してくださいということになるわけですよね。それは不可能を強いることになるんじゃないでしょうか。  ですから、この方式違反の解釈や、審判開始決定の例外の棄却の解釈においても、あくまで検察官が手持ち証拠を提出させる形での証拠提出命令の申出をする形でも新証拠の添付と認めるんだというふうに説明はされているんですけれども、しかし、事実の取調べ請求は禁止されておりますので、証拠提出命令の請求も禁止されているわけなんですよ。その状態で再審請求書だけ出されて、それで方式違反で却下されてしまうというのは、私はどう考えてもおかしいと思いますので、この条文は要らなかったと思います。ただ、請求は認めた上で、取調べを審判開始決定後にすればよかったと私は思います。

横山信一 公明党

○横山信一君 ありがとうございます。  終わります。

嘉田由紀子 日本維新の会

○嘉田由紀子君 日本維新の会の嘉田由紀子でございます。  大変お忙しいところ、お三方それぞれに、ありがとうございました。  私はちょっと視点を変えて、私自身は、文化人類学あるいは比較社会学ということで、世界中の環境問題など社会学的に勉強してきたんですけど、そういう意味では、弁護や裁判の実務を知らないという立場から、逆にお三方に教えていただきたいことが二点あります。  一つは、今回のこの冤罪事件、なぜ起きたのかと。具体的には、例えば日野町事件とかあるいは湖東事件を見ますと、自白がかなり重要な証拠になっていたんですね。その湖東事件の場合には自白弱者というようなことを後から解釈されていますけれども、あるいは阪原さんの日野町事件でもかなり脅迫されて自白をしたと、家族のことを持ち出した。ですから、これ国際的にもずっと問題になっている取調べ過程の透明化、取調べ過程の可視化、見える化というところで、冤罪をそもそも生み出さないということで、海外との比較でどういう御見解をお持ちか、それぞれお三方にお願いをしたいと思います。  それからもう一点は、法制審議会の在り方ですね。一九四九年に法制審議会は始まっているんですけど、私もこの法務委員になってまだ七年目なんですが、例えば民法改正のところの法制審議会でも、メンバー選んだときに、あっ、これは出口が見えているなと、内容を知っている立場からすると。つまり、法制審議会がどこまで公平性、中立性を担保できているのかということ、今回のこの再審事件でもそうですけれども、やはり法制審議会が出された答申とそれから議員連盟で出された答申に随分差があります。  ですから、法制審議会の公平性、中立性というところをどう担保するのか、これもお三方に、それぞれ、時間がありませんので短くて結構ですので、お願いいたします。  まず成瀬参考人からお願いできますか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  まず、誤判が生じる原因として、取調べに無理があり、虚偽の自白を強要されているのではないかという御指摘がございました。  日本にこれまで起きた誤判事件というのはたくさんあるわけですけれども、その誤判原因の主要な原因の一つが、虚偽自白を無理やり取調べで強要したということがあるのは間違いない事実であろうと思います。とりわけ、先生御指摘のように、供述弱者の方に脅迫めいた取調べをするなんということはおよそ許されないことだと私自身思っております。  そのような事態が今後生じないようにするためには、まずは、その再審に行く前にその捜査段階で適正な取調べが行われるということが極めて重要です。私の意見陳述の中で冒頭申し上げたんですが、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会という場では、まさにその点、取調べの適正化をどう図るかということが最大の課題でございました。捜査当局は、取調べの録音、録画を余り拡大したくないし、弁護人の立会いなんてとんでもないというふうな意見でしたけれども、私自身は、今申し上げたような問題意識から、取調べの適正化を担保するために、録音、録画は運用とはいえもっともっと拡大していかないといけないし、取調べへの弁護人の立会いについても試行を始めるべきであるというふうに、かなり強く提言をいたしました。  あの協議会については、今後新たに、これからの刑事手続を考える研究会というものが立ち上がりまして、そちらで更に議論が行われると思います。  私は是非とも、先ほど海外との比較を踏まえてという御指摘もありましたが、その録音、録画がなされるのみならず、取調べに弁護人が立ち会うというのは諸外国において極めて普通のことであります。それができていない日本は、ある種、これまでの捜査手法が取調べに依存し過ぎていたという背景事情がもちろんあるわけですけれども、今後もそれを続けるわけにはいかないというふうに私自身は思っておりますので、法務省において更に具体的な検討がなされることを期待したいと思います。  それから二点目ですけれども、法制審議会のメンバーの人選の公正性については、私は正直選ばれる側の人間でございまして、選ぶ側が何を考えているかというのは正直分からないところがございます。  ただ、今回の再審部会については、田岡参考人だけでなく、再審事件を精力的にやってこられた鴨志田先生ですとか、あるいは村山先生にも御参画いただいて、それぞれのお立場からいろいろな意見を出していただいたというふうに思っております。研究者についても、私はともかくとして、それ以外の研究者の構成員の方というのは、もうまさに日本の刑訴法学を代表するような方々に入っていただいているというふうに私は認識をしているところでございます。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) まず、冤罪がなぜ起きるかということですが、まずやはり原因を究明しないと駄目ですよね、検証しないと駄目ですよね。つまり、福井事件にしても袴田事件にしても、検察庁は内部で検証するんですね。袴田事件についても余り問題はなかったという結論にしていますし、福井事件についても余り問題はなかったという結論になりそうです。ですから、これじゃ駄目なんですね。やはり、第三者委員会のように外部の目を入れて検証する、その中で、なぜこのような冤罪が起きたのか、冤罪をなくすにはどうすればいいかということを考える、こういう当たり前のことをやっていくべきだと思います。少なくとも、日野町事件や湖東事件に関して言えば自白が大きな問題であったことは間違いがありませんし、また、袴田や福井に目を向けると、証拠隠し、あるいは証拠の捏造といった問題があることも間違いありません。  取調べについては当然可視化の範囲を拡大すべきですが、現在は三%程度にとどまっておりまして、約九七%の事件は運用上の措置です。この運用上の措置って、任意の証拠開示と全く同じ表現で今行われておりまして、検察庁はこの運用上の措置が大好きなんですけれども、運用上の措置でやっているからといって義務付けではないんですね。確かに今任意でたくさんやっていますけれども、あくまで任意なんです。やっているんだからいいでしょうじゃなくて、やっているんだから義務にもうしたらどうですかと。いつまでも運用でやっている場合じゃないでしょうということが大事なことだと思います。  そして、可視化をしている中でも違法な取調べが後を絶たない。昨日も付審判決定が、また二件目が出ましたけれども、録音、録画されていると分かっていても、威圧的な取調べ、脅迫的な取調べがあるというのが実態なわけですから、可視化するだけでは駄目なんだと、そこに弁護人の立会いを入れていくとか、取調べの制限を、規制を入れていかないと、もう誤った虚偽自白による冤罪が起きかねない状況が起きていると私は思います。  二点目の法制審の人選については、私も、どういう人選が行われるのか、ちょっと私も詳しく分かっておるわけではありませんが、ただ、結果だけを見ると、今回の再審の答申に関しても、反対したのは弁護士委員三名、これは、再審の取り組んできた鴨志田弁護士、村山弁護士と被害者側の山本弁護士の三名が反対、ほかの研究者全員と裁判所委員、検察庁の委員、法務省の委員は全員賛成ということです。  これまでの諮問を見ても、大体研究者の委員の先生方は法務省事務当局案に賛成をされることが多く、研究者内部での議論が非常に少ないというのがこの法制審の特徴だと思います。せめて研究者の中に賛成の人と反対の人を入れるとか、そこで議論が行われるということにしないと、弁護士委員は反対、研究者委員は全員賛成というのは、やはりいびつな人選が行われているのではないかという危惧を禁じ得ないです。実際に研究者からの声明、意見書発表されていますので、こういうことを外部で言わせておいて、その中に入れないというのは私はよろしくないと、一人でもいいから反対意見の人を入れるべきだと思います。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 冤罪事件の原因について御質問がありましたが、これは一概には言えないし、検証もされていないという状況にあると思います。  その上で、日本の取調べについてのるる指摘されている問題は、やはり、もう根源には取調べ受忍義務論がいまだに克服されていないというところにあるかと思います。もう一日も早くこのような黙秘権侵害を招くような状況を克服するべきですし、制度としては諸外国が導入している立会い権を速やかに認めることが必要であると、自白に関しては考えております。  そのほか、多くの原因があるところですが、私も田岡参考人と同様、第三者による原因究明というのをきちんとする、検証をきちんとするというところからスタートすべきだと考えております。  二つ目の点です。  法制審議会がどこまで公平性、中立性を持っていたのかと。これも私が選任する立場にはございませんので、どのようにされたのかは分からない上で、感想を申し上げたいと思います。  確かに、構成委員に入られた委員、幹事の先生方、研究者の先生方は、日本の刑事訴訟法の研究を代表される極めて高い能力を持った先生方だと私は思います。しかし、必ずしも御関心は再審にはなかったのではないかというところもございます。再審の問題に長年取り組んできた、やはり日本の刑事訴訟法の研究者の代表たる先生はいらっしゃったのではないかと、ほかにもいらっしゃったのではないかと。先ほど田岡参考人から指摘がありましたが、研究者委員の中での対立する議論が交わされる中で、深まっていくというような議論がされた形跡は残念ながらなかったということになります。  少なくとも、再審の問題に研究関心、そこに研究関心の中心があるという方を選んでいただいたら、より良かったのではないかと考えているところです。

嘉田由紀子 日本維新の会

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。本当にそれぞれお立場が難しいところで率直な御発言いただきました。この件についてはまた、私自身もこの法務委員会の中でより深めて勉強させていただきたいですが、法制審の公平性、中立性というのは、六月十八日にNHKの「時論公論」で展開をなさいました。私自身もびっくりしたんです。あっ、ここまでちゃんとマスコミさんも関心持っていただいているということで。  ですから、今回のこの法案と関連して、やはり法制審は本当に幅が広いですから、もう日本のその法務行政、そして、まさに憲法問題にも関わる大変大きな判断をしていただくところですので、この法制審の公平性、中立性というのは、そのことだけで次の、ある意味で審議会なり、あるいは研究会、第三者委員会が必要だろうと思いますので、その辺は、これをきっかけに次の御発言をいただけたらと思っております。  それから、冤罪事件の原因、ここが究明できないと再発防止できないんですよね。それで、どちらかというと、これ、ざくっとした言い方ですけど、多くの日本の方は、やっぱり警察で調べられて、その場でどこまで自分が物が言えるかって、私、自分自身にも、あっ、真実違うけど、そうじゃないと対抗できるかなと思うと、自分でも自信がないくらいです。  ですから、本当に取調べとか、あるいは警察というところに対してなかなか物が言えない国民性の中で、個々の取調べ過程の透明化、可視化、それだけではないと。見える化だけではなくて、まさに立会人とか、弁護人の同席とか、そもそも日米地位協定でなぜアメリカがアメリカの軍役関係の人たちの裁判、日本にやらせないのかというと、この問題指摘されているわけですよね。そういうところで、日本がまさに国際的にこの法務行政の中で、より人権なり、あるいは自由権なりの国際的基準を担保するのにも重要なところかなとも思っております。  時間あと一分しかないんですけれども、もしそれぞれに一言ずつでもコメントがございましたら、成瀬委員からお願いできますか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) NHKの「時論公論」は私も拝見しました。先生がおっしゃるように、法制審というのは、基本法令に関する審議を行う会議体であり、総会はもちろんのこと、各部会も非常に議論は注目されるものであります。その人選等が公平かつ中立に行われるということは、私、一研究者としても大事なことだというふうに認識をしております。  それから、冤罪事件を見たときに自分も取調べで物が言えないんじゃないかというふうに先生おっしゃいましたけれども、私自身も全く同感でありまして、一部の、近時、不適正な取調べの映像が流れておりますけれども、あんな取調べを受けたら私はもう萎縮して多分何も言えなくなるだろうというふうに思う次第です。  ああいうことがなくなる必要が何ともありますし、先ほど日米地位協定の話も出していただきましたけれども、やはり世界に日本の刑事司法をちゃんと正確に理解してもらう上でも、その取調べの部分が非常に世界から悪く見られているところがありますので、世界に堂々と見せていけるような捜査手続に変わっていくべきだというふうに思っております。  以上です。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 田岡です。  法制審の人選というよりは、まずは法務省が検察庁と一体化しており、法務・検察と言われているような在り方そのものの問題があるのかなと思います。  つまり、刑事局にいる人たちというのは皆さん検事、検察官資格をお持ちの方々で、その方々が刑事局長になり、法務事務次官になり、そしてその後、転出されて検事長になり、検事総長になるといった形で、これはもう人事交流ではなくて、検察庁の下に法務省があり、法務省の中に刑事局があってそこが法律を作っている。つまり、刑事訴訟の一方当事者にすぎないはずの検察官が刑事立法をつかさどっているといういびつな構造があるというのが日本の特徴だと思います。  もし法律作るんであれば、例えば裁判所が作るとか、あるいは少なくとも法曹三者が作るというんであれば分かるんですけど、検察官が今法律を作っているんですね。しかも日本の場合はキャリア検察官ですので、決してその弁護士から検察官任官というのはまあないわけじゃないですけれどもめったにありませんので、外部の目が入らない、そうした中で作られていく立法にはやはりどうしてもゆがみが生じるのではないか、それが今まさに噴出しているのではないかというふうに思いました。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 法務・検察の問題に関しては田岡参考人と同じ意見です。  で、すぐにできることとして、少なくとも公正性、中立性に疑義を持たれない人選を今後していただきたいと強く願っております。  また、いずれにいたしましても、冤罪の問題というのは刑事司法の全てのプロセスに何らかの問題があるということですので、これを一つずつ取り組んでいくのが責務ではないかと感じているところです。

嘉田由紀子 日本維新の会

○嘉田由紀子君 ありがとうございました。  時間ですので、以上です。終わります。どうも。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 参政党の安達悠司です。  参政党は、今回の政府案と修正案に衆議院では賛成をしております。しかし、これで一〇〇%十分という趣旨ではなくて、不十分な面もあるけれども、誤判の防止や冤罪被害の救済に向けて少しでも前に進めたいという思いを持っております。  参政党は、この任意開示に関する、証拠の任意開示に関するこれまでの運用を担保する規定が入ったことも踏まえて賛成をしました。なぜなら、これまでの誤判冤罪の救済の決め手は、証拠開示に関する勧告や任意開示、これが決め手だったんではないかと思うからですね。  そして今は、平成十六年の法改正以降、多くの事件で証拠の任意開示が進んでいるというのは私も弁護士として実感しております。だから、この任意開示をきちんとこれまで以上に進めることが大切だと思います。  その上で、まず、成瀬参考人にお伺いしたいんですけど、成瀬参考人は刑事訴訟法の専門家でいらっしゃって、そもそも一般の国民から見て、刑罰って何のためにあるのかと、そして刑事訴訟の目的とは何なのかということについてお伺いしたいと思います。  よく、刑事訴訟の目的は被告人あるいは再審請求人の人権救済にあるんだといった考え方も述べられることが強いですね。被告人の人権救済が大事だといった観点が、議論が結構多いと思いますけれども、やや視点を広げて、刑事訴訟法の専門家のお立場から、刑罰の目的、刑事訴訟法の目的についてお聞かせください。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  刑罰の意義については、刑法学において深遠なる議論が様々あるところですけれども、一般的には、刑罰というのは被告人が犯した犯罪に対する社会からの非難であると、応報として罰を科さなければならない。それを通じて、一般予防と特別予防と言いますけれども、刑罰を科すことによって他の一般国民が同じような行為をしないように、さらに、刑罰を科すことを通じて、今は刑務所内での処遇というのもかなり再犯防止を重視しておりますので、処遇を通じて、本人自身が二度と再犯をしないようにという特別予防の意味もあるというふうに考えております。  二問目の刑事訴訟法の目的については、刑事訴訟法の一条に書いてあるわけですけれども、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにして、刑罰法令を適正に実現すると。要するに、刑罰を実現するためにはこの刑事手続を必ず経なければならないと、これは憲法上の要請であるわけです。なので、事案の真相を解明しなければ正しい事実認定が行えませんので、事案の真相を解明する必要はあるわけですけれども、他方で、先生がおっしゃるとおり、その過程で被疑者、被告人の方の人権が不当に制約されるということはあってはならないわけで、その調和を図りつつ刑罰法令をまさに適正に実現するというのが刑訴法の目的であるというふうに考えております。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 ありがとうございます。  今回の再審に関する改正法案は、この被告人あるいは再審請求人の視点からはよく取り上げられるんですけど、ちょっとここで、研究者の立場から御覧になって、被害者の立場から見たときに今回の法改正案で何か懸念される点というのはあるんでしょうか。また、その懸念に対し、今回の改正案、修正案、これ全体としてバランスが取れたものになっているんでしょうか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  被害者の方の御意見というのは、法制審部会の段階で被害者側の弁護士委員の先生がおっしゃってくださいましたし、それ以外にも、ヒアリングの中でも御遺族の方が出てこられてお話をしてくださいました。  被害者の方の御懸念というのは多数あるわけですけれども、主な御懸念としては、まず、法改正によって安易に再審無罪が出て、本来真犯人であった人が、何でしょう、本来だったら真犯人である人が社会に出てきてしまうのではないかという点と、あと、この再審の審理の過程で自らがかつて捜査に協力した段階でお示ししていた証拠が無用に社会に広がってしまうのではないかと、目的外使用があるのではないかという点でございます。  その両点について本改正法はどのように対応しているかという点なんですけれども、まず、今回の再審法改正案というのは、決してその再審請求事由自体を何か変えるというものではございません。再審請求を認めるためには無罪を言い渡すべき明らかな証拠が必要であるという要件は全く変わっていないわけでございます。ただ、再審請求審の審理が余りにも遅延していたので、それを迅速にできるようにしただけでありまして、本来真犯人である人が誤って無罪になってしまうという懸念は当たらないだろうと思います。  それから、証拠が再審請求審の中でその証拠提出命令を通じて多く再審請求者や弁護人に閲覧、謄写されるということを被害者の方は懸念されておられたわけですけれども、それについては、目的外使用の禁止という規定を設けて、一定の場合には刑罰も科すという形で強い抑止を図っておりますので、二点目の被害者の方の御懸念についても対応はできているというふうに考えております。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 ありがとうございます。  私は、弁護士というのは、やはり被害者の立場もあり、また被告人や被疑者の立場も、両方大切にしていかないといけないと。つまり、冤罪の被害の防止も大切ですけど、被害者、御遺族の心情にもきちんと配慮していかなければならないと思っております。  次に、修正案に入った事項に関連して、証拠の任意開示の現状についてお尋ねします。  これは、まず一旦、成瀬参考人にお尋ねしたいんですけれども、今日も、本日もそうですし、法制審の部会でも、検察官は、通常審において、公判前整理手続に付されているか否かにかかわらず、任意開示が積極的に行われているというふうに認識されているということですし、私の実感としても、平成十六年の改正以降は、類型証拠、それから主張関連証拠、この二つがかなり広く出てくるようになったというのが私の実感です。ただ、一般の方には、この類型証拠、主張関連証拠って何か分かりません。  ちょっと、今どのような現状で、今の現状としてどのような形で刑事手続、刑事裁判において証拠開示がされているか、ちょっと御説明願えますか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  今、安達先生が御指摘くださった通常審における証拠開示については、三段階の証拠開示ができるということになっておりまして、まずは検察官が自分の有罪立証に必要な請求証拠を開示すると、第二段階として、その請求証拠の証明力を判断するのに必要と思われる類型証拠を開示すると、さらに三段階目で、それに加えて、被告人側から防御の主張が出てきた場合には、その主張に関連する証拠も開示するという法制度になってございます。  ただ、現在の実務においては、この制度どおりに厳密にやっているわけではなくて、その類型証拠とか主張関連証拠はいずれ出さないといけないものなので、もう検察官が最初に請求証拠を出す段階で、類型証拠に当たりそうなものは全部任意で出しますというふうな運用が行われています。  この制度というのは公判前整理手続を適用した事件にのみ一応法律上は適用されるものなんですけれども、今、安達先生が正確におっしゃったように、公判前整理手続に付されない事件についても、同じように任意の開示というものがかなり幅広く行われていると認識しております。  そうだといたしますと、今回、再審法改正案で証拠提出命令という権限を刑訴法に設ければ、その権限を背景にして、やはり検察官はもう幅広く証拠を提出しないといけない、あるいは請求人に開示をしないといけないという運用になることは必然でありまして、今回の衆議院の修正で附則四条二項に足していただいたこともあり、その運用はかなり確実なものとなっていくだろうというふうに私自身は思っているところです。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 この類型証拠の意味なんですけど、私の理解だと、まず、例えば証拠物、凶器とか採取資料、通話明細。それから、検証調書、診断書、鑑定書など。また、証人、証人予定者の供述録取書。それから、その他参考人の供述録取書。例えば、これに関しては、検察官によって直接請求しようとする事実の有無に関する供述を内容とするものであったり、あるいは被告人の供述録取書、取調べの状況の書面。こういったものだと思うんですけど、何かこれの類型証拠に関してちょっと補足して、もしありましたら、成瀬参考人からお願いします。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  この三百十六条の十五に挙がっている類型証拠というのは、検察官請求証拠の証明力を判断する上で、一般的、類型的にきっとこういう証拠は必要だろうというふうに立法者が考えたものを列挙しているものだというふうに理解をしております。  今御指摘いただきましたとおり、一号から四号辺りまではいわゆる客観証拠というふうに呼ばれるものであり、五号や六号になると被告人以外の者の供述調書、そして七号で被告人の供述調書が出てきて、八号で取調べ状況に関する証拠も出てくると。こういう形で、通常の刑事事件であれば、検察官の請求証拠の証明力を考える上できっとこういうものは必要ですよねというものを立法者が明示してくれているので、なおのこと類型証拠開示がやりやすくなるシステムかと思います。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 そうすると、もう一度、成瀬参考人にお尋ねしたいんですけど。  言わば、平成十六年改正以降は、通常審段階でも非常に多くの証拠が出るわけです。出ている、出ていますね。争っている事件ならなおさらそうです。そうすると、何でわざわざその再審、その再審においてもう一回幅広い証拠の開示が必要になるのかというのが、ちょっとこれ一般の人は分からないかもしれません。それについて何かあればお願いします。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  今、安達先生おっしゃるように、平成十六年の改正以降は、通常審においてかなり幅広く証拠開示が行われています。ただ、その改正がなされる以前はどうだったかといいますと、やはり明示的な規定がないということもあって、検察官は自分の有罪立証に必要な証拠しか開示しないというふうな運用があったことは事実でございます。  近時、再審事件で問題になっている事件というものの多くはこの平成十六年が改正される前の事件でありまして、そういう事件についてはやはり通常審段階で開示されていない公判不提出証拠というのが多数あるだろうと。その中に再審請求理由に関連するものが埋もれているので、それを今回の証拠提出命令制度で出させようとしているものだと理解しております。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 もう一問、成瀬参考人にお尋ねしたい。済みませんね、ちょっとほかの参考人の皆さん。  ということになると、問題は、この平成十六年改正前の事件、二十年以上前の事件について、どこまで、再審やったときにどこまで幅広く開示させるかという問題になってくるんではないかと私は理解していまして、ただ、二十年以上前の事件でも、再審って時効がないのでたくさんありますよね。そういうものを請求されるたびに、一つ一つまた今と同じように幅広く証拠開示していかないといけないのかというのは、被害者や遺族の立場にとっても、そんなものまでほじくり返されるのかという気持ちもあるかもしれませんし、その辺りのバランスというのは成瀬参考人はどのようにお考えですか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  再審請求の実情について申し上げますと、法令上の方式に反するような形で新証拠を付けずに請求してくるですとか、あるいは全く再審請求理由が具体的に書かれていないような形で請求してくるものも多くございます。  そのような事件については、今回新たに設けられる調査手続において、法令上の方式に違反したもの、あるいは再審請求理由に、その主張を全部真実だと捉えたとしても明らかに再審請求理由に当たらないというふうに思われる主張自体失当のものについては、その段階で手続を打ち切ることができるスクリーニング規定を設けております。  今回導入される証拠提出命令というのは、あくまでもそのスクリーニングを超えて審理が必要だと思われた事件についてなされるものですので、過去の事件全てがこの証拠提出命令の対象になるとは考えておりません。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 最後の質問なんですけど、今度弁護士のお二人にお伺いしたいんですけど、私も今のその弁護士の実務の問題は、ちょっと任意開示が非常に進んでいるので、今のその再審請求の対象になるような事件とはちょっと違った課題が今の刑事弁護にあるように思っています。特に問題なのは、若手の刑事弁護離れ、つまり刑事弁護のなり手自体が少なくなっている。  例えば当番弁護士の登録率は、日弁連、過去最低です、三〇・七%と出ています。今は、だから任意の証拠開示が非常に拡大していて、刑事弁護はやりやすくなったとも言えます。ただ、他方で、検察官も非常に起訴を絞ってきているので起訴率が低下しているという問題もありますし、また、弁護側の手法として完全黙秘をしなさいという、そういう防御活動もあります。  いずれにせよ、そうやっていろいろ多様な手段ができ、また捜査手法も多様化していまして、いろんなデータも出てくるようになっているわけですけど、その中で刑事弁護離れ、これ何でなのかと、何で、これはどういうふうにしたらいいのか、その辺の問題意識について、そういうのが、やる人がいないと冤罪も救えませんので、その辺りの問題意識について、田岡参考人、高平参考人、それぞれお伺いいたします。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) これは私の弁護士としての実感ですが、無力感じゃないでしょうか。どんなに頑張っても九九%の有罪率、再審請求をしても一%に満たない再審開始決定率、その中でお金にもならない、被害者にも恨まれることもある、また再審請求人からも恨まれることもある、そういう中で、幾ら弁護士といえども続けていくのが難しいという人が私の周りにも少なくはありません。  実際に無実だというふうに信じていても、なかなかその証拠を探し出すのは弁護士一人の力では難しいです。私も自費でお金を払って私的な鑑定をしたこともありますし、目撃者を探そうと思ってチラシを配ったりして声を掛けたこともありますし、現場に行くことも少なくありませんが、そのようにしても捜査機関と違って何の権限もありません。取調べに立ち会えるわけでもありませんし、全ての証拠を見せてもらえるわけでもありません。任意開示はあくまでサービスでありまして、検察官が見せてもいいものだけを見せるという仕組みでして、強制的に証拠を開示させる権限はないんですね。そういう中で、私も被害者側の立場もやりますし、弁護側の立場もやりますが、被害者側の方がやりがいを感じられるという弁護士もいると思います。  もちろん、その中でも刑事弁護にやりがいを感じる少ない人がまだ弁護士として弁護人を続けているんだと思いますが、まさにそんな状況では冤罪が現実に起きかねない、平成十六年改正以降であっても証拠開示を受けずに有罪を確定してしまうことが現実に起こりかねない事態だからこそ、弁護士も頑張らなければいけませんけれども、裁判所の権限も強化して、真実の発見と無実の人を救済する制度が必要なんだと考えております。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 刑事弁護離れというのは、ある意味、今に始まったことではないと考えています。  もうかなり昔になりますが、古賀康紀先生という福岡の弁護士の先生が季刊「刑事弁護」に論考を載せられて、刑事弁護をやりたくない三つの理由を挙げられていました。お金にならない、警察とけんかしたくない、やっても結果は変わらないというような趣旨のことを述べられていたように思います。正確な表現でないことはお許しください。  いずれにいたしましても、非常に労力が掛かるもの、しかし、意義は非常にあるというか、これがなければ基本的な社会における刑事司法制度が回っていかないというような重要な役割を担っているわけです。  その上で、私、今、法科大学院で教鞭を執っておりますので、なぜ一般的に悪い人を弁護するのかという非常に素朴な疑問にきちんと答えられる、考えられるという学生を多く育てていくことがこの方向に少しでも歯止めを掛けるのではないかと考えているところでございます。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 時間になっております。

安達悠司 参政党

○安達悠司君 はい。  私、国選弁護の報酬の話も出るかと思いましたけれども、やはり司法予算もしっかり増やす必要もあると思っています。  終わります。ありがとうございました。

仁比聡平 日本共産党

○仁比聡平君 日本共産党で、今、高平先生からお話の出ました福岡県弁護士会所属の仁比聡平でございます。  三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。  高平参考人から、請求人の手足はまだ縛られていると、主体性、能動性を確保する点で政府案はいまだ不十分という点に、私、本当に大事なポイントがあると思うので、まず高平参考人から伺いたいと思うんですけれども、今回の政府案が視野の外に置いている一番大きなものの一つに、冤罪被害者が裁判所に再審を請求することそのものの困難性、新証拠を発見して、それに基づいて具体的な新たな事実を主張するということ自体がいかに困難かと、ここを横に置いて、請求理由によって、つまり新証拠によって旧証拠が弾劾されていると、だからその範囲で証拠提出命令はできるんだというみたいな議論になっても、それは絵に描いた餅だと思うんですね。しかも、そして、その平成十六年以降もそれは、その構造は変わらないのではないかとも思うんですが、高平参考人、いかがでしょうか。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 重要な御指摘をありがとうございます。  そもそも再審請求をすること自体が御本人にとっては極めて難しい、これは確かだと思います。  冤罪救済、近年された事件を見ていただければ分かるんですが、弁護団事件です。何人もの弁護士が何十年もの時間を掛けて、精力をつぎ込んで初めて救済される、それが今の再審請求の実態です。本来そうであってはならないはずです。専門的な援助なくして確定判決の証拠構造を的確に分析し、どこに問題があるかを発見し、そこを弾劾するための新証拠を獲得する。これが素人の再審請求人にできるでしょうか。私でも大変な思いをしております。  私、現在、三つの再審事件の弁護団に所属しておりますが、そもそも、証拠構造の正確な分析、どこに弾劾ポイントがあるのかの発見、極めて専門的であり、経験も能力も必要です。何人もの弁護士が集まって初めて、ここが弾劾できるのではないか、そういうポイントが見付かる。新証拠の獲得はもっと大変です。  じゃ、その弾劾ポイントが見付かったとして、どんな専門家に何を頼んだらここを効果的に弾劾できるのか、自分の法律の専門の、専門職であっても、法律を知っているだけでは分からない、多くの知識を使わなければいけません。勉強して、本当に弾劾できるのかというところをきちんと調べて、専門家の協力を得て。到底御本人にできるものではありません。  ですから、弁護人の援助は必須です。しかし、今回それについては全く、全く手当てがされていない、それが現状かと思います。

仁比聡平 日本共産党

○仁比聡平君 そうした観点から、田岡参考人にも政府の答弁についてお尋ねしたいと思うんですけど、二十三日のこの委員会の刑事局長の答弁で、川合先生の御質問に対する答弁なんですけどね、つまり、どのような証拠があり得るかはある程度想定することは可能だと大臣が繰り返している答弁に関連して、刑事局長こう述べたんですね。犯人でないのに有罪判決を受けた者であれば、確定判決がどの鑑定を読み間違っているのか、どの共犯者あるいは参考人の供述の信用性の評価を誤っているのか、それは想定できる、把握できるのが通常だと、これを前提に、通常どのような証拠が収集されるかを念頭に置いて提出命令を裁判所に申し立てることは可能であると、まして、刑事弁護人ならばそれを類型的に想定することは可能であるというふうに胸を張ったんですが、参考人、いかがですか。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 佐藤局長は弁護士、弁護人をやったことがないのでしょうから、多分そうお考えになるんだと思います。  普通に考えると、犯人でない人はその場にいないわけですので、どこが間違っているのか、なぜうそをついているのか分からない方が普通だと思います。むしろ、真犯人の方が現場にいたわけですから、現場にどんな証拠があるのか、誰がどんな話をしているのかということを理解した上で、ここをうまくごまかせば無罪になるんじゃないかということを考え付くと思うのですが、現場にいなかった人はなぜ間違われたのか分からないわけですので、現場にどんな証拠があってどうすれば無罪になるのかということを考えるのは本当に大変なことです。ですから、ちょっとその局長の答弁はよく分かりません。  ただ、おっしゃっている趣旨は恐らく、証拠提出命令をする場合に、証拠一覧表などがなくても類型的に重要な証拠というのはピックアップできるから証拠開示請求や証拠提出命令の請求はできるよということを言いたいんだと思いますが、それはまさに通常審の類型証拠開示の発想でありまして、確定判決が基礎とした証拠に、例えば共犯者の証言がありますよとか目撃者の証言がありますよというのであれば、それに関する証拠の開示を求めると。これ、通常審でいえば類型証拠開示の発想なんですね。また、現場にどんな物があったかというのは、現場にあった証拠物や実況見分調書、検証調書を出してもらえば分かると。  もしそのように考えるのであれば、再審請求理由との関連性を問わずに、通常審の類型証拠開示と同じように、客観的な証拠や有罪判決が基礎としている有罪証拠に関連する証拠の開示を求めれば足りるわけでして、再審請求理由に関連する証拠に限定する必要はないんですね。言ってみれば、有罪判決の基礎となった証拠に関連する証拠の開示を認めればよかったのではないかと思いますし、局長もそれが分かっていながら、なぜこのような立法にされたのか、ちょっと私も聞いてみたいなというふうな感想を持ちました。  以上です。

仁比聡平 日本共産党

○仁比聡平君 成瀬参考人に、そもそものお話で、高平参考人のおっしゃった、請求人の主体的、能動的な責務を果たすということが再審請求の仕組みを機能させる鍵だという御意見が冒頭ありました。再審請求理由を新証拠を発見して構築するということ自体が再審請求人の責務であり、そうでなければ物事が始まらないと。かつ、今回の政府案でも、再審請求審における例えば事実の取調べの請求権だったり、あるいは証拠提出命令の請求権や即時抗告権だったりということを認めるわけですよね。そういう意味では、職権主義の下で請求人、弁護人が果たす役割、あるいは権限、権能というのは、これは明確なんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  まず、再審請求者に新証拠を準備してもらわないといけないと、それが非常に大きな負担であるということは私自身も認識しております。ただ、再審制度というのは、通常審で三審制の下、国選弁護を受ける権利等、様々な手続保障をされて、一度は有罪で確定した事件について再度審理をやり直すかということを考える手続ですので、何の事情変更もないのに再審請求ができるということになりますと、それは裁判が一度確定したという意味が完全になくなってしまいます。裁判制度というのは、どれだけ当事者が争いたいと思っても争えなくなる、確定することによって、それを前提に社会を回していくシステムですので、確定した事件についてはやはり何らかの事情変更を伴う形で再審請求をしていただく必要があると。それが刑訴法が要求している新証拠なんだろうと思います。  その観点から、刑訴法は既に再審請求人には弁護人を選任する権利を与えておりまして、高平参考人がおっしゃるように、弁護人が非常に大きな役割を果たすことも間違いないと思います。  その上で、何らかの新証拠を用意していただければ、その後は、今、仁比先生が御指摘くださったように、スクリーニング規定を乗り越えた後、請求に基づいて証拠提出命令を活用したりだとか、あるいは請求に基づいて事実取調べをやってもらうということが可能になるわけです。最初のハードルは確かに少し高いんですけれども、とはいっても、それを用意していただかないとやはり確定審との関係で整合性が付かない。ただ、最初のハードルさえ乗り越えれば、あとは、先ほども申し上げましたけれども、職権主義の下でも再審請求者及び弁護人の手続保障というのは極めて重要ですので、それに対応する形で今回の法案というのはでき上がっているというふうに認識しております。

仁比聡平 日本共産党

○仁比聡平君 成瀬さんにもう一つお尋ねしたいと思うんですけど、今おっしゃった確定判決の重み、安定性との関係なんですけれども、職権主義と再審制度が言われるのは、確定判決を覆してでも無辜の不処罰を貫かなきゃいけないと。それは、最高裁まで争って、有罪判決が確定しているんですよね。けれど、これが誤りであるということになれば、この誤判からの救済というのは絶対にやり遂げなきゃいけないわけだから、そのために、当事者任せではなく裁判官が乗り出すという、そういう意味なんではありませんか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) 今先生が御指摘のとおり、再審請求審がなぜ職権主義構造を取っているのかと、その一つの理由としては、今先生がおっしゃったとおり、再審請求者任せにせず裁判官自ら、ある種確定有罪判決を出した裁判所の責任において、本当に無辜があるんであればそれを究明、救済しないといけないという観点から再審請求審が職権主義であるということはあるんだろうと思います。  ただ、繰り返しになりますけれども、最初に、確定判決を覆す手続に入る以上はやはり何らかの事情変更は必要なのであって、その新証拠を、大変だと思いますけれども、御準備いただいて、その後は裁判所が責任を持って審理を行っていくということなんだろうと思います。  その求められる新証拠というのも、その一つの証拠で無罪が明らかになるということは求められておりませんで、現在の判例によれば、その再審請求人が用意した新証拠とこれまでの旧証拠を総合評価する形で無罪を言い渡すべき明らかな証拠であるかということが判断されますので、最初のハードルは多少は高くないといけないわけですけれども、それは不可能なハードルではないというふうに私自身は認識しております。

仁比聡平 日本共産党

○仁比聡平君 せんだって刑事局長も、ダイナミックなプロセスなんだと、再審請求審というのは、そのことをお認めにはなったんですけれども、ちょっとその関わりで、時間との関係で、田岡さん、高平さんの順でお尋ねしたいと思うんですけど。  その刑事局長の二十三日の答弁で、これは横山先生の質問の中でなんですけれども、こんなくだりがあるんですよ。裁判所が主体的に判断していく、証拠を収集して判断していくという仕組みである以上は、弁護人による取捨選択を待つことなくして全ての証拠を見る、弁護側もその裁判所が見た証拠を全て見て、その証拠の中身について主張すると。  私、この答弁で、裁判所が主体的に乗り出して証拠を収集して判断していくと、それは、仕組みはそうかもしれない、けれど、そんな裁判官が本当にあまねく再審に携わっていますかと。そんな、あの法廷ドラマのヒーロー裁判官のような裁判官たちであれば、こんな冤罪とその救済が長引くわけがないと思うんですが、いかがですか。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) おっしゃるとおり、裁判所が主体的に判断する能力や権限があると言ったところで、今まで裁判所は、通常審では、当事者主義の下では受け身の立場、中立公正に当事者の主張について判断を下す立場ですので、再審になったからといって、自ら、じゃ、捜査に乗り出すぞといって、例えば現場に赴いたり、関係者に話を聞いたり、検察官から証拠を出してくださいと言ったり、そんなことは普通しません。  その理由の一つは、やはり再審請求人側にまず新証拠を出してもらわなきゃいけない、この負担が課せられていることがまずは大きいんだと思います。成瀬さんはそれは不可能なハードルではないと言いましたけど、確かにまあ不可能ではないかもしれませんが、少なくとも弁護人がいないとまず無理です。  財田川事件では、御本人、谷口さんがお手紙を書いたものを再審請求書と受け取って、矢野裁判長がそれを再審開始決定をした、あっ、矢野裁判長は開始決定できなかったので、弁護人になって、自らですね、再審開始決定を勝ち取られたわけですが、そんなヒーロー裁判官はめったにおられませんので、その結果が今まで救済に長時間が掛かっているということなんだと思います。  その意味では、現在の実務運用を前提にする限り、裁判所の主体的な判断のみに期待するのはやはり困難でありまして、当事者との協働ということを高平先生もおっしゃられましたけれども、ある程度やはり当事者の側でも権限を持たせてもらう形で、証拠の開示を受けて、その証拠を分析して裁判所に提示していくという機能、役割がないと、裁判所だけが発見するというものではないんだろうというふうに思います。  以上です。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 田岡参考人の意見に基本的に同じ意見を持っております。  そもそも、最初のハードルだけではないんですよね。最初に新証拠を用意すればいいということではなくて、やはりきちんと合理的疑いが生じるんだというところまで言える証拠を出さなきゃいけない責任はなお請求人の側に負わされているんです。出したら全部裁判所が解決しますよという構造ではそもそもないです。そのスタート地点が誤っていると私は思います。  また、これ、そもそも弁護人が付いている場合、こういうやり方をするのは全然合理性がないように思います。それぞれに得意な分野がありますよね。当事者主義の中で裁判をやってきている裁判官は、核心部分についてきちんと考慮して判断していくのにたけていて、当事者というのは、広い証拠、多くの証拠を分析、検討して、それを収れんさせることによって主張を組み立て、何がポイントかというのを明らかにした上で判断を仰ぐ。この役割分担ができるし、それをさせることが構造にもかなうのに、なぜその仕組みをつくらないのかというのは非常に疑問だと言わせていただきたいと思います。

仁比聡平 日本共産党

○仁比聡平君 終わります。ありがとうございました。

北村晴男 日本保守党

○北村晴男君 日本保守党の北村晴男です。  私の方からは、恐らく田岡参考人と高平参考人とは前提の立場が違うかもしれませんが、私は、死刑制度の維持をすべきだという立場から、であればなおさら、この再審で万が一にも無罪の方が死刑執行されるというようなことがないように、そういったリスクを最小化するべきであるという立場を取っております。その立場からお聞きします。  まず、成瀬参考人にお聞きしたいんですけど、先ほど田岡参考人が、成瀬参考人の御意見自体は積極的かつ誠実な裁判官像を前提としておられるのではないかという御指摘がありました。実は私も、どんな職業にも、弁護士にも裁判官にも検察官にも、能力の差とそれから誠実さについても大きな差があるというふうに感じておりました、これまで。当然裁判官にも、能力とそれから誠実さにおいても相当の開きが個々の裁判官にあるというふうに理解しています。  その上で、この再審については、証拠提示命令、ごめんなさい、証拠提出命令の前提として、提出させるべきかどうかを判断する前提として、証拠の標目の開示とかあるいは証拠の提示とかを命じる。これ、裁判官が自分の頭で判断をしなきゃいけないという前提になっていますと。果たしてそれができるのかという疑問がこれまで提示されてきていて、私もそのような疑問を持っていますが、その点について、今、その裁判官の能力や誠実さにも個々に差があるという私の実感を前提とすると、どのような御回答になるのかお聞かせください。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  先生がおっしゃるとおり、裁判官も検察官も弁護人も個性があり、それぞれに能力差もあり、誠実さにも差があるんだろうと思います。  ただ、これだけ再審制度の在り方が国民の注目を集める中で、法曹三者全員がこの問題に襟を正して取り組まないといけないという意識は確実に高まっているものと思います。そのように考えた場合、たとえ能力差があるとしても、このように明確な根拠規定も設けられた以上、裁判官は、その再審請求理由に関連するというふうに疑われるような段階でも、その標目の一覧表や証拠の提示命令を出して、きちんと確認をし、必要な範囲では全部提出させるというふうな運用に変わっていくものと思います。  職権主義に慣れていないのではないかという御懸念があるかと思いますけれども、現在も少年審判は職権主義で行われておりまして、裁判官、刑事裁判官の多くの方は少年審判も経験済みであります。少年審判になりますと、証拠が足りなければ補充捜査を警察に依頼したりするのも裁判官であります。そのような経験も踏まえながら、この再審請求審における証拠提出の在り方というものをこれから裁判所内でもきっちりと研究会等を重ねてプラクティスをつくっていかれると思いますので、能力差や誠実さに差があることを踏まえても、本制度が導入されれば証拠提出命令は十分にワークするというふうに考えております。

北村晴男 日本保守党

○北村晴男君 ありがとうございます。  続いて、成瀬参考人、恐縮です。  今は能力差とか誠実さの観点からお聞きしましたが、別の観点で、証拠の重要性とか関連性などについては、請求人であったり弁護人でなければなかなかその判断に行き着かないということも多く指摘されていて、私もそうだよなと思っておりますと。その観点から、いわゆるインカメラ制度として提示命令あるいは証拠の標目の提示命令、それをインカメラ、つまり裁判官だけが見てその提出命令につなげられるのか、適切な提出命令につなげられるのかという疑問、これも強く指摘されていますが、これについてはいかがお考えですか。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  今先生が御指摘のとおり、今回の標目一覧表の提示命令というのは、裁判所は、何人にもそれを閲覧、謄写させることはできないとなっておりまして、弁護人にも見せられないということであります。ただ、先ほど来強調しておりますように、証拠提出命令というのは再審請求審や弁護人の請求に基づいて行われることも可能でありまして、実務における柔軟なコミュニケーションの中で弁護人がどのような意図を持っているのかということは裁判所が十分確認できるだろうと思います。  さらに、この標目の一覧表というのは、いわゆる三百十六条の十四で出される弁護人に渡される一覧表と異なりまして、その証拠の表題とか作成年月日、氏名に加えて、その供述内容等の証拠の内容も書かれるがゆえに弁護人に見せることができないわけですが、もし弁護人の請求内容が十分裁判所側で理解できないのであれば、そういう証拠の内容を一部削るような形で、特定の範囲の一覧表というんですかね、を検察官から出させて、弁護人にそれを見せて、運用の中で請求人の主張を十分に理解して証拠提出命令を発動すると、そういうことは可能ではないかというふうに思っております。

北村晴男 日本保守党

○北村晴男君 ありがとうございます。  ちょっと時間の関係もありますので、今の成瀬参考人のお話について、田岡参考人、何か御意見があればお聞かせください。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 標目一覧表というものを、裁判所しか原則見られないんですが、そこから内容を削ったものを見せますという話がありました。であれば、最初から証拠一覧表の制度を設ければ足りるわけですよね。あくまで運用でやりたいようなんですけれども、その証拠一覧表という制度をつくることにしないと、実際には運用として機能しないと思います。  なぜかというと、通常審では、公判前整理手続に付された事件について、平成二十八年から証拠一覧表制度を設けられたんですが、これ僅か三%の事件にとどまっておりまして、それ以外の九七%の事件では、任意の一覧表交付というのはなされておりません。つまり、任意開示はあるかもしれませんが、任意の証拠一覧表というのは交付された実例がありません。これ、検察官必ず拒否します。ですから、再審でのみそのような運用がなされるという保証は私はないと思います。

北村晴男 日本保守党

○北村晴男君 先ほど成瀬参考人がおっしゃった、今、法曹三者共に大変その無辜の救済について盛り上がった状況にあると、そのとおりだと思います。  これは、私が、長年刑事裁判に携わった刑事裁判官と意見交換したときに言われたことなんですが、今盛り上がっているから、まあ数年はそういう状況で裁判官も熱心にやるかもしれない。しかし、これ裁判官、元裁判官がおっしゃっているんです、まあ五、六年したら結局その盛り上がりも鎮静化して、結局法律に基づいた、つまり法律に根拠があるものだけやればよかろうという発想になっていくのではないかという裁判官の意見を私も聞いておりまして、その点については、成瀬参考人、何かお考えがあれば。

成瀬剛 東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。  先生の御懸念はよく分かるところでございます。  ただ、その点についても今回の法案というのは適切な対応がなされていると思っておりまして、かなり異例だと思うんですが、五年ごとに見直すという制度が入っております。五年後に一度見直すではなく、五年ごとに見直すというのは、その五年ごとにそれまでの運用を必ずチェックされるということになるわけです。そうなのであれば、やはり、裁判官も検察官も弁護人も、この再審請求事件をきちっと迅速かつ充実した審理を行って解決していくということが強く求められるわけですし、今回、附則の事項で入っている任意による証拠の提出の勧告あるいは提出、それから、抗告審における一年以内で終わらせるとか通常審を二年以内で終わらせるということについても、本当にそれが達成できているのかということがまさに五年ごとにチェックされるわけで、そうだとすれば、一度でしても、その後は運用で法律の範囲でということには多分ならなくて、その五年後のチェックにちゃんと見合うような運用をずっと継続しないといけないというふうに法曹三者は考えるだろうというふうに期待しております。

北村晴男 日本保守党

○北村晴男君 ありがとうございます。  別の観点でお聞きしたいんですが、高平参考人にお聞きしたいです。  検察官の抗告は原則禁止、そして十分な根拠のある場合には抗告可能ということにこの法案についてはなっていますと。これ、私の感覚からすると数少ない実質的な民主的コントロールの制度だというふうに私は理解しています。実質的なというのは、法的な拘束力は全然ありませんけれども、十分な根拠を国民に説明しなきゃいけないとなると、その根拠は本当に十分な根拠と言えるのか、その具体的な理由を示されたときにメディアとかあるいはいろんな方が批判をしたり肯定したりすることになる、それは数少ない民主的な実質的なコントロールになるのではないかというような見方を一つしているわけですが、これについては、参考人の御意見、いかがでしょうか。

高平奇恵 一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士

○参考人(高平奇恵君) 民主的コントロールが仮に働くとすれば、それは望ましいことだという点では賛同いたします。  しかし、やはりこれは法的にコントロールすべきというのが本筋であって、立法した以上、それに法的な拘束力、実質的な拘束力が生じるものでなければ、立法はただの象徴ということに。努力目標ではないんですよ、これ、立法されているわけなので、民主的というところに依存せず、きちんとこれが効力を発生するような状況にすべきだというのが私の考えであり、六号についてはもう完全に禁止というのが論理的な帰結であると考えています。  以上です。

北村晴男 日本保守党

○北村晴男君 ありがとうございます。  別の観点で申し上げたいと思います。ここまで、いわゆる弁護士会なり弁護士御出身の参考人の方々と、あるいは学者さんとか、あるいは法務省の考え方が大きく対立している理由、一体どこにあるのかなということをずうっと考えてきたわけですけど、私自身は。  例えばなんですが、弁護士から見ると、検察に対する重大な不信感があることは間違いない、私にも大きな不信感ありますと。刑事裁判官の一部の方々に対しても私は個人的には大きな不信感をこれまで持ってきましたと。例えば、大分昔になりますけど、それでも私はやってないという映画だったかと思いますけど、あれは、刑事弁護、私が数少ない刑事弁護をした経験からしても非常に実感に沿う映画だったわけですが、あれは裁判官に対する大きな不信感を描いているように見えましたが、そういう不信感と、それから、いやいや、何といいますか、裁判、ごめんなさい、法務省、あるいは、法務省は検察と一体ですけれども、検察から見て、一部の裁判官に対する重大な不信をどうも持っておられるようで、本来の有罪を下すべき者に対して無罪を下しているんだというような見方をされているように思いますと。これが拭い難いその双方の不信感になっているように思いますと。  だから、もっと踏み込んで言うと、検察当局は、これまで指摘されているように、冤罪とされた、再審無罪とされた事件についてまで、いや、あれは本当はやってんだというようなことを検察当局は、一部の方は思っている。だから、それを、その考え方を制度にも反映させようとしているように、私には、ごめんなさい、これは私の個人的な見方ですからね、というふうに見えますと。  これは、拭い難い双方の不信感があって、なかなか制度として結実していかないように見えるわけですが、この見方は、正しくないなら正しくないで結構なんですけど、田岡参考人、何かもしあったら。

田岡直博 香川県弁護士会弁護士

○参考人(田岡直博君) 確かに、法務・検察関係者の中に、一部の裁判官が無罪を出そうとしているのではないか、だから検察官の抗告を認めたり、あるいは除斥の制度を認めて、再審請求審を担当する裁判官と再審公判を担当する裁判官を替えたいと、そういうような思惑といいますか希望があるのは、それはそうなんだろうと思います。  しかし、逆のような裁判官もたくさんいらっしゃるわけでございまして、弁護人の立場からすれば、あの裁判官はどうも有罪を出したくて仕方がないんじゃないかと疑われるような裁判官も、それはいるわけですよね。  しかし、少なくとも、はっきりしていることは、袴田事件についても福井事件についてももう無罪の判決は確定したわけでございまして、その中で証拠の捏造や証拠隠しがあったこと、それが不正の所為であり、もっと早く開示していれば無罪になったということ、これは認定されているにもかかわらず、いまだに認めない、これはひどいんじゃないかと、確定判決をやはり尊重していないんじゃないかと思います。  そういう意味では、法務・検察は、その一部の検察官や裁判官に不信があるのかも、一部の裁判官ですね、不信があるのかもしれませんけれども、少なくとも確定判決については尊重していただきたいというふうには思います。  以上です。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 時間になっております。

北村晴男 日本保守党

○北村晴男君 ありがとうございます。  時間になりましたのでここで終わりますけれども、私は、もう一つ、時間があれば御質問したかったのが、再審請求中の死刑執行について何らかの法的な歯止めが必要なのではないかという立場を取っておりまして、それについてもし御意見があれば、後で個人的にでも教えていただければと思います。  ありがとうございました。

伊藤孝江 公明党

○委員長(伊藤孝江君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十七分散会

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  1. 記録 #3623 観測 2026-08-06 00:06 JST
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