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国会会議録

外交・安全保障に関する調査会

第217回 · 参議院 · 第2号 · 2025-02-19

出典 kokkai ↗ 最終取得 2026-10-10 23:04 JST 記録 #664 ↗

発言 90

会議録情報

令和七年二月十九日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         猪口 邦子君     理 事                 朝日健太郎君                 越智 俊之君                 吉川ゆうみ君                 高木 真理君                 高橋 光男君                 串田 誠一君                 浜口  誠君                 岩渕  友君     委 員                 赤松  健君                 生稲 晃子君                 上野 通子君                 こやり隆史君                 永井  学君                 比嘉奈津美君                 松川 るい君                 森 まさこ君                 古賀 之士君                 塩村あやか君                 杉尾 秀哉君                 広田  一君                 塩田 博昭君                 梅村みずほ君                 伊波 洋一君                 齊藤健一郎君    事務局側        第一特別調査室        長        有安 洋樹君    参考人        防衛大学校人文        社会科学群教授  広瀬 佳一君        東京大学先端科        学技術研究セン        ター准教授    小泉  悠君        早稲田大学法学        学術院教授    酒井 啓亘君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外交・安全保障に関する調査  (「21世紀の戦争と平和と解決力~新国際秩序構築~」のうち、「ウクライナ戦争をめぐる現状と諸課題」について)     ─────────────

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) ただいまから外交・安全保障に関する調査会を開会いたします。  外交・安全保障に関する調査を議題といたします。  本日は、「21世紀の戦争と平和と解決力~新国際秩序構築~」のうち、「ウクライナ戦争をめぐる現状と諸課題」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  御出席いただいております参考人は、防衛大学校人文社会科学群教授広瀬佳一君、東京大学先端科学技術研究センター准教授小泉悠君及び早稲田大学法学学術院教授酒井啓亘君でございます。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、広瀬参考人、小泉参考人、酒井参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、午後四時頃までをめどに質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず広瀬参考人からお願いいたします。広瀬参考人。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) それでは、私の方から、現在のロシア・ウクライナ戦争におけるNATOの役割と停戦の行方、まさに今、現在進行形で動いているわけですけれども、この問題について、私の専門であるNATOの観点から見るとどのような意義があるのか、そして停戦の行方はどのように考えられるのか、最後に東アジアにとってどのような影響があるのかということについて申し述べさせていただきたいと思います。  なお、私の報告はあくまで公開情報に基づく一研究者としての私見ですので、何ら所属組織とは関係ないということを最初に申し述べさせていただきたいと思います。  まず最初に、このNATOという問題ですけれども、これ、実は、昨年総理がアジア版NATOということを言い出してえらく脚光を浴びてしまって、一体どういうことなんだろうというふうなお気持ちが皆さんの中にもおありになるんではないかと思いますけれども、このNATOというものが、アジア版NATOという議論のときに、とかくその抑止と防衛とか核共有とかそういったところに議論が集まりがちで、批判的に見られることが多かったというふうにも思っているわけですけれども、実はNATOというのはかなり冷戦後に変容しておりまして、いわゆる一般的な同盟というような言葉では言い表せないほどの形となっています。その辺をまず最初にちょっと簡単に御紹介したいと思います。  冷戦期は、間違いなくNATOというのは、この北大西洋条約第五条が、これが集団防衛を規定しておりますけれども、この機能によってそのいわゆる冷たい平和というものを支える基盤であったわけですが、冷戦が終わり、ソ連が崩壊し、ワルシャワ条約機構が解体しますと、機能の拡大を開始いたします。それはどういうことかというと、集団防衛に加えて、危機管理、そして協調的安全保障という、この三つを主任務だというふうにNATO自身も自称するようになります。  危機管理というのは、例えば九〇年代のボスニア紛争とかコソボ紛争、あるいは二〇〇一年から続いたアフガニスタン戦争、あるいはリビアの空爆といったような事案にNATOが加盟国ではないのに関わるということを行いました。これは、場合によっては国連安保理の決議があったり、ない場合でもNATO自体としての決議があったりして行ったものであります。  それから、協調的安全保障というのは、NATO加盟国が、それ以外の国とその加盟国の間で壁ができないように、中東の国々とか広くアジアの国々とパートナーシップを行うということを制度化したものでありまして、実は東方拡大というのもこの協調的安全保障、協調的安全保障というのはそもそも敵を想定しない安全保障の考え方なんですね。だから、敵ではなくて同じ価値を持っている国の共同体を拡大するという観点からこの東方拡大も始められたわけであります。  この三つの機能を持っているNATOというのが、九〇年代から二〇〇〇年代、二〇一〇年代前半ぐらいまでの協調的な国際秩序というものを支えてきた。そういう意味で、私は、これはNATOによる平和という側面があったんではないかというふうに考えています。  この状況が一変するのがロシア・ウクライナ戦争であります。この戦争によって再び権威主義体制がルールに基づく秩序というものを脅かしているわけですから、NATOも当然、集団防衛にと重心をシフトいたします。例えば、ロシアに近いバルト三国やポーランドの防衛体制を強化するとか、あるいは各国の防衛支出をもっと増やそうと。  これは、トランプ第一次政権のときにも大きく話題になりましたけど、元々は、二〇〇二年ぐらいに、NATOが広く拡大するときに、防衛費が余りにも違い過ぎるのはフェアではないという考え方、これは別にトランプさんに限らず多くのアメリカ人が持っている考え方ですけど、それで大体二〇〇二年ぐらいに当時のNATO加盟国の防衛費をざっと並べてみて中央値を取ったんですね。それが大体二%だったんですよ、GDP比二%。だから、このGDP比二%というのを取りあえずの目標にしようというふうに決めて、それが今独り歩きしてGDP比二%ということになっておりまして、一応去年までにみんなでその合意しようねということでやってきたわけですが、去年の段階でNATOの三十二か国のうち二十四か国が達成しております。  まだ依然として達成していない国もありますが、もはやトランプ政権、第二次政権ができますと、この二%では足りないという議論が主流になりつつあって、今年の夏にハーグで行われるNATOの首脳会議では三%かそれ以上を今ルッテ事務総長は提案すると言われておりまして、これに対して、つい先月の世界経済フォーラムでトランプさんは、五%にしろと、こういうことを言い出して、アメリカすら五%達成していないわけですけど、そういうことを言い出しておりまして、この数字がちょっと独り歩きしている現象がありまして、でも、これは日本にとってもただ事ではなくて、もしNATOが本当に今年の六月に三%あるいはそれ以上というふうにしてしまうと、日本にもその議論の影響は出る可能性はあるということであります。  二〇二二年、戦争が始まってすぐにNATOは戦略概念というのを発表しまして、そこで初めてやっぱりロシアは脅威だということを明確に規定しますし、ここで初めてNATOは中国にも規定したんです、中国も挑戦だと。これはチャレンジという言い方で、スレットとはちょっと違うんですけど、やっぱり警戒すべき挑戦であるということを言い出しましたし、これまたNATOの公文書で初めてインド太平洋という言葉、これが使われるんですね。これは、故安倍総理が、インド太平洋の安全を、開かれた、広く開かれた秩序としてのインド太平洋ということをおっしゃって、それが一つのきっかけになって広がった概念ですけど、NATOもそれを使うようになり、このインド太平洋の問題というのは欧州大西洋に直接影響を及ぼすんだという認識を持ったことによって、ロシア・ウクライナ戦争の持っているグローバル性というのが浮かび上がってくるわけであります。  そのような形で、NATOは同盟としても加盟国としてもこのウクライナの支援に非常に尽力を注いだわけですが、二年以上たった今、もう三年たっていますか、NATOにとっていろんな課題が出てきております。これを次に紹介したいと思います。  一つは、東方拡大、これをめぐる問題です。これは、よく言われるように、ウクライナをNATOに入れておけば戦争は起きなかったんじゃないかという議論がよくあるんですけれども、この議論の原点になっているのが、二〇〇八年、今から二十年近く前ですけど、ブカレストというところで行われた首脳宣言で、ここでNATOは、ウクライナとジョージアは将来加盟国となるだろうとはっきりと書いてしまったんですね。これが政策的に良かったかどうかというのはちょっと議論が分かれるところですけど、これにプーチン大統領は強く反発して、同じ年にジョージア紛争を開始しましたし、今回のウクライナ侵攻の背景の一つにもこのNATOがウクライナを入れるという問題があるというふうに言われています。  で、戦争始まったので、やっぱりこれ入れなきゃいけないんじゃないかという議論が次に出てきて、それでどうしたかというと、NATOがなかなか決断できないわけです。例えば、二〇二三年のビリニュスの首脳会議では、条件が整い、全加盟国が一致した場合にはすぐ入れようと言っているんですけど、これなかなか全加盟国一致しないものですから、これは余り意味なかったわけです。去年にまた批判があって、もっとはっきりと入れるという方向を出そうと、それによってロシアを抑止しようというふうな議論があったんですけど、でも、そこでも文言としては、加盟への不可逆的な道を引き続き支援するという、何だかよく分からないお役所的な言葉で、これは何なんだろうと。加盟に実は、言葉は、レトリックを変えていますけど、実は一歩も進んでいないんですね。つまり、NATOはこのように、結果的にそのレトリックをいじるだけで、偽りの約束を連発しているということが言えます。やっぱりコンセンサスが得られないわけですよ。NATOの意思決定はコンセンサスなので、一国でも反対すると駄目なわけです。  この結果どういうことになったかというと、ウクライナ側に対しては何かすぐ入れるんじゃないかという期待値を上げてしまっている。だから、ゼレンスキー大統領は盛んに、唯一の安全の保証はNATOだということを盛んに言って、もうすぐにでも入るという、そういう勢いの発言が連発されています。他方、ロシアに対しては、いや、これ本当に入るんではないかと、曖昧な形ですけど入るんではないかと思わせることによって、むしろNATOの拡大こそがこの戦争の元凶なんだというプーチン大統領の論理に正当性を与えてしまっている面もあるんじゃないかというふうに思います。  それから、武器支援ですね。これ一生懸命やっているんですけど、この武器支援にはかなり実は格差があります。  図の一を御覧ください。  これは、戦争が始まって以来昨年の十月三十一日までのデータなんですけど、これを集めたものです。図の一です、二国間軍事支援の状況。これを見るとすぐお分かりになると思うのは、やっぱりアメリカが突出しているわけですね。アメリカ一国で六百億ユーロぐらい出していて、その他のヨーロッパ全部合わせてもそれより少ないわけです。  個別国家見ると、一番多いのはドイツですけど、たかだか百億ユーロちょっとなんですね。政治的にいろんな発言をするフランスとかイタリアはドイツの三分の一でしかなかったり、イタリアに至ってはドイツの八分の一の十億ユーロですので、何とこの表に入っていないんですね。  こんなふうに、ドイツとフランスはヨーロッパの中心でありながら軍事支援についてははるかに少ないということが分かって、やっぱり軍事支援というものがウクライナ戦争の推移に影響をするという点から見ると、アメリカ依存という構造は余り変わっていない。ヨーロッパが自立性ということを盛んに政治家が主張しますけれども、かなりそれは現実とレトリックにギャップがあるということであります。  それからもう一つ、世論を見ていただきたいんですけれども、まずアメリカですが、図の二を御覧ください。  これは、アメリカにおいて、ウクライナ支援は多過ぎるのか、トゥーマッチなのか、アバウトライト、ちょうどいいのか、あるいはノットイナフ、不十分なのかということを聞いた質問で、これ世論調査行われたのはつい先月、今月ですね、三日に行われています。  これも一目瞭然なのは、もう多過ぎるというのが三〇%で一番多くて、それが不十分だというのが二二%になっていまして、党派別に見るともっとはっきりしまして、やっぱりリパブリカンですね、共和党系の人たちはもう四七%が支援は多過ぎるということを言っているわけで、このように、アメリカ国民全体としても支援に対して批判的であり、特に今のトランプ政権を支える共和党の人たちはかなり批判的であるということがここからも浮かんできます。  ヨーロッパについても、いろんな世論調査があるんですけど、一つだけ御紹介させてください。それは図の三です。  これちょっと面白い調査で、ヨーロッパはいろんな調査があるんですけど、これは面白い調査で、何が面白いかというと、これ去年行われたんですけど、もしアメリカの新大統領が、これはトランプさんのことです、もしアメリカの新大統領がウクライナ支援を劇的に減らした場合にヨーロッパはどうすべきかという質問なんですね。青が支援を増やしてウクライナが戦闘を継続できるように頑張るべきだというんですね。それに対して、ピンクはアメリカに倣って支援を減らそうと、それで和平を促そうという、こういう数字なんです。  これを見るとちょっと驚くんですけど、ヨーロッパの政治指導者はウクライナを支援しなきゃいけないということを盛んに言うんだけど、世論では一番多いのは、アメリカに倣って支援を削減し交渉を促そうというような、これが三三%で一番多いということが分かります。国による差も結構ありますけれども、でも、全体的にアベレージでいうと三三%ですから、そこが一番多いというのがこの世論の割と冷めた部分で、これがいわゆる支援疲れとも言われますし、あるいは厭戦機運とも言われますけれども、そういう雰囲気がもう既に昨年ぐらいから漂っているということであります。  そういう状況を背景に、次に、じゃ、停戦の話を少ししてみたいと思います、今ちょうど話題になっておりますので。  停戦可能な条件というのを考えると、これ、今ちょうど戦死者も、もう死傷者含めると百万人突破していますし、トランプ政権できたということで停戦何とかしようという話がありますが、ポイントは三つありまして、一つはどのような停戦ラインを推進するのか。これ、言ってみれば公正さの問題です。明らかに侵略者がいて、そして明らかに被害者がいるわけですけど、それでどういうふうに線を引くのかという問題。二番目が、将来誰が再びロシアの攻撃を行われないように安全を保証するのか。これ、持続的な平和を誰がどうつくるかという問題です。三番目は、ウクライナをヨーロッパの中でどう位置付けるかという問題ですね、これが三番目。  こういう話をめぐって、これまでいろんな学者さんとかが、政治家含めていろんなプランが出ていて、例えば、ここにある平和の公式、西ドイツモデル、フィンランドモデル、プーチンの要求、そしてトランプ政権の現在の構想とあるわけですけれども、それぞれ簡単に申し上げますと、まず平和の公式というのは、これは元々ゼレンスキー大統領が唱えたことで、要するに、ロシア軍の撤退とか戦犯の訴追とか原発の安全保障なんかを言った上で、独立時の国境、つまりクリミア半島も含めて全部返せという要求であります。停戦後の安全の保証はNATOがこれを保証する、だからNATOに入るということですね。停戦後にはEUにも入って、ヨーロッパに復帰するということであります。  しかし、このゼレンスキーさんの考え方は、欧米もこれを基本的に、国際法的にも合致しているわけなので支持していたんですけれども、ゼレンスキーさん自身が、トランプ大統領の当選によって見通しが非常に厳しいということを悟って、十二月にこれを断念するということを正式に言っています。  二番目のが西ドイツモデルと言われているやつで、これは要するに西ドイツ、西ドイツって、一九五五年に東独と分かれたときに、西ドイツの部分はNATOに入ると、西ドイツは東独を併合しようとして武力を使うことをしないという、武力不行使の宣言をするという前提の下にNATOに入って、つまり西ドイツの領域だけNATOに入ったわけです。それで、ECとともに経済的発展を遂げて、やがて三十五年後に東ドイツを取り戻しました。こういう形ですね。  だから、今のロシア・ウクライナ戦争に例えて言うならば、現時点での前線で一旦停戦を協定し、国境線変更をめぐる武力不行使宣言を出して、その上でロシア支配地以外のウクライナでNATOに入ると、そして復興に努力し、EUに入るという、こういう考え方です。ゼレンスキーは、今この考え方にゼレンスキー大統領さんも近いということが言えます。  三番目は、フィンランドモデルといいまして、これも一部の学者が追求しているものですけど、フィンランドは元々、ソ連との二度の戦争の末に領土を一〇%割譲させられ、かつ、中立を明記した当時のソ連との相互援助条約を締結させられ、そして独立をいたしました。現状に合わせて言うと、ロシアと停戦だけじゃなくて、NATO加盟もしないで中立を宣言すると、で、やがてはEUに入るというようなパターンになるかと思いますが。  ただ、ここで一つ考えてほしいのは、戦後のフィンランドというのは東欧、ポーランドやチェコやハンガリーが歩んだ道を歩んでいなかったということであります。フィンランドは非常に豊かな国になって、つまりソ連ブロックとは違う豊かな国になれたわけです。それは、政治的にはソ連のお情けにすがっているんじゃないかと言われることもありましたけれども、でも、違う道をたどったことで成功したと。つまり、言ってみれば小国の英知とリアリズム的な冷徹さ、こういうものがあったのではないかと。この場合、リーダーシップの問題も非常に大きいと思います。  プーチンが、プーチン大統領が要求しているのは、御存じのように、クリミアとか南部・東部四州全域のロシア併合であって、かつ、NATO加盟なんかとんでもないということで、絶対駄目、断念しろと。停戦後の安全の保証は、ちょっとこれよく分からないところもあるんですけど、一応P5、国連の安保理ですね、常任理事国P5プラス、例えばトルコとかドイツが加わるというようなことを、少なくとも二二年の和平交渉のときには言っていました。  そして、プーチン大統領が最近言っているのは、ゼレンスキー大統領の選挙すべきであると。つまり、大統領のもう正統性がないんだということを言って、これは恐らく政権交代というのをインプリケーションとして持っているのではないかというふうに思います。  こうした中でトランプ政権が何を考えているかというところなんですけど、これは、トランプ政権もいろんなアクターがいて、いろんなメディアで紹介されていて、それぞれがお互いにちょっと矛盾したりするものですから分かりにくいんですけれども、でも、何か最大公約数的なものを見ると、まず第一に、停戦後の領土はやっぱりどうやら現時点での前線であろうかということです。じゃ、誰がその保証をするのかというと、これよく分からないんですね。これ直接引用したんですけど、ケロッグさんの、ケロッグ特使ですか、ウクライナ特使の論文があって、それに書いてあったことなんですけど、直接引用したんですけど、要するに包括的で検証可能な取決めというので、何かよく分からないですね、こういうものです。それから、停戦後はどうかというと、NATOは絶対駄目ということです。ただ、EUはいいというような発言もあるので、EUはオーケー。停戦監視はヨーロッパ中心でやればいいよ、ただし米軍は絶対参加しないということですから、その意味では朝鮮半島モデルにもなっていないんですよ。  朝鮮半島モデルという場合には、これ米軍が参加するということが前提ですから、そういうふうにもなっていないということでありまして、このようにトランプ構想は、被害者と侵略者を同等に扱っているという点で公正さについて少し問題があるのと、持続可能な平和になるかというところも何かよく分からないところがあります。  他方、ヨーロッパは、公正さを非常に重視しているのは分かるんですけれども、現実可能なプランBというのがないわけですね。その中で、西ドイツモデルというのは、公正さに若干の問題はあっても一つの可能性として、これが失われた機会になっていくんじゃないかという気がしております。これはあくまで個人的見解です。  最後、もう時間もありませんので、最後に日本にとっての課題ということを少しだけ申し上げたいと思いますが、今日ウクライナで起きていることは明日東アジアで起きるかもしれない、これは岸田前総理がおっしゃって、この言葉は結構世界に広がって、ストルテンベルグ事務総長もこれを好んで引用しております。NATOの演説なんかでも好んで引用しています。つまり、ルールに基づく国際秩序を脅かす事態への危機感をヨーロッパで共有するという視点になるわけですね。  このことは、私たち日本のウクライナ支援を考える際の重要な指標になるような気がします。つまり、日本がウクライナ支援においてどのようなリスクとコストを掛けるべきなのかということを考えるときに、それは、東アジアに危機が起きたときに、いかなるリスクやコストを欧米に、価値観を同じくする欧米に期待するのかというところで決まってくる、あるいはそういうことも考えなきゃいけないんではないかということであります。  現在、日本を取り巻く安全保障枠組みとしましては、そこの表の二に書きましたように、日米安保というのがこれ集団防衛で一番中核にあるわけですけれども、そのほか、最近はミニラテラルといいまして、共通の価値と共通の能力を持つ少数の国々との共同訓練などを行って、柔軟で適応力のある協力をしようと、そして安定化を図るという意味でミニラテラルというのが、はやりかもしれませんけど、ANZUSとかAUKUSとかクアッドとかスクアッドとかというのがいろいろ出てきて、ミニラテラルな協力をするということが一つの方向性として出てきて、アメリカもこれを部分的には推進しているということがあります。  最後に、このハイブリッド協力ということで挙げたのが日・NATO協力でありまして、今のような背景の下にこれからのアジアの安全保障を考える場合に、やっぱりこの日・NATO協力というのを、これまで私が申し述べたヨーロッパにおけるNATOによる平和ということを考える上で、日・NATO協力というのは一つのヒントになるんではないかということで、最後に取り上げさせていただきました。  日・NATO協力、言うまでもなく日本とNATOが協力するわけですけど、これ、元々は、ナイン・イレブンの後、テロをめぐって日本とNATOが海洋安全保障とかサイバーとかで協力できるんじゃないかということで始まったものであって、日本がサイバー協力で自衛官が派遣されたり、あるいはNATO本部に自衛官が派遣されたりということで始まって、少しずつ今協力していまして、これがロシア・ウクライナ戦争で一気に花開いたと言うとあれですけど、一気に協力が拡大されました。  皆さんも御承知のように、二〇二二年から、日本の総理は二二年、二三年、二四年と毎年のNATO首脳会議にも参加していますし、それから、IP4というんですけど、このNATOのIP4、インド・パシフィック4ですね、インド・パシフィック4として、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドがそれぞれNATOとの個別適合化パートナーシップ計画というのを調印して、ここに書いてあるサイバー、テロ、安保、宇宙安保、偽情報対策、新興破壊技術などの分野で協力関係を行っているということがありまして、意義は二つです。一つは、多機能なNATOのような同盟と協力すること自体が抑止力の強化になると。もう一つは、マルチなんですけど、このIP4のようにミニラテラルな協力が進むという、そういう可能性を内包している、そういう意味でハイブリッドだというふうに思うわけです。  ですから、もうこれで最後にしますけれども、アジア版NATOっていきなり何か抑止と防衛に話を進めるんではなくて、まず実務的なこの日・NATO協力、あるいは日本のIP4協力というものを推進し、それによって協力領域を拡大し深化させ、その下でルールに基づく国際秩序を支えるアジアの安全保障、アジア版安全保障協力というものになっていく、もしかしたらそれが日米安保を強化することになるんではないかというふうに考えておりますので、これを最後に一応報告をやめさせていただきます。  御清聴ありがとうございました。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) ありがとうございました。  次に、小泉参考人にお願いいたします。小泉参考人。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) ありがとうございます。小泉でございます。よろしくお願いいたします。  私の資料は、このパワポの二枚ずつ印刷したやつです。  私は、多分今日はロシア側の視点からというところを期待されているのかなとも思ったんですが、スライドを作っているうちにだんだん軍事屋、安保屋としての側面の方が強く出てきてしまって、何かそういう観点からお話を申し上げたいなと思っています。  まず、軍事面から、この戦争、もう丸三年やっている戦争なわけですけれども、私から見たこの戦争は、やはりまず巨大戦争であるということです。  私、どちらかというと広瀬先生の学生ぐらいの世代に恐らく当たるんですけど、私が修士課程で安全保障論とか勉強したときというのは、こういう戦争というのは蓋然性は極めて低いんだと言われていたわけですね。それよりも、テロであり、気候変動であり、パンデミックであり、食料安全保障であり、又は不拡散でありと、そういうことを考えるのが現実的な安全保障研究であるという空気が四半世紀前は非常に強くあったわけです。ところが、それから四半世紀たって蓋開けてみると、今ロシアとウクライナがやっているこの三年間の戦争というのは極めて古典的な国家間戦争です。  幾つか数字はここに挙げていますけど、やっぱり何となく私が学生のときに聞いていたのと話が違うという感じがするわけですね。特に、年間今一千万発ロシア軍が大砲を撃つわけです。陸自の備蓄弾薬が恐らく二十五万発前後ではないかと言われていますから、ロシア軍のペースで撃っていくと、陸自の弾薬庫は一週間強で空になるわけですね。でも、そのペースでロシア軍三年間撃ち続けているんですよ。ということは、ロシア軍が持っているその備蓄のすさまじさであるとか、それから戦車ですね、年間千五百両強、ロシア軍は戦車を喪失しています。陸自の機甲科が毎年五個ずつなくなっていくというペースですね。  でも、なくならないというのは何なのかというと、ロシアのその軍需産業の生産能力の大きさもあるんですけど、めくっていただくとこういう写真が出てまいりますが、これロシアの戦車保管基地の模様です。日本の自衛隊は装備が古くなりますと基本的に用途廃止してスクラップにしちゃうわけですが、ロシア人は捨てないんですね。こういうふうにシベリアとか極東の基地に戦車を取っておいて、これはその中でも比較的状態がいいものです。この戦車の間にパイプが通っていますけど、ここに不活性ガスを流していて、これを戦車の車内に流し込むことで中の機器が劣化しないようにしているんですね。それを一年に一回ぐらい訓練のときに動かしてみせると。大体そのときの軍管区の司令官とかその地域の知事とかが来て、あっ、ちゃんと動いたね、良かったねという訓練をするんですね。  その次めくってもらいますと、まさにその基地がこの何年間か、この三年間の戦争、これですね、衛星画像が写っているやつですね、この何年間かの戦争で、この基地から実際にこの装備品が取り出されて戦場に送り込まれているということを衛星画像で示しています。  この上の方にあるのは、ブリヤート共和国、モンゴルの上のところですね、にあるロシア軍最大の戦車保管基地のそのほんのごく一部を写したものですけど、ほとんど予備の戦車がもうなくなっちゃっているということが見て取れようかと思います。これは、一番即応状態が高い、状態がいいやつだからですね、すぐにどんどん出して使われてしまって、もうこれは戦争の最初の年のうちにほとんどなくなっちゃいました。  一方、下の方の衛星画像はもうちょっと雑な感じに置いてありますけど、恐らくこれはもっとずっと状態が悪い、野ざらしの予備戦車です。でも、これもやはりどんどん取り出されていることが分かりますよね。数も減っていますし、わだちがいっぱい付いていて、実際トラクターで引っ張っていっているんだろうということが分かります。これはもう、私もこういうところを実際に見たことあるんですけど、本当にもうさびさびになっちゃってひどい状態なので、これはもう工場に持っていって全部ばらして、オーバーホールして、ニコイチとかサンコイチしなければ使えないはずです。  だから、それができるだけの能力がロシアの軍需産業にはあるんですよね。日本でいうと、恐らく戦車のオーバーホールができる工場というのは相模原と、あと千歳にある戦車のメンテセンターだと思うんですが、ロシアの場合、国営の戦車修理工場が工廠として八か所あります。プラス、ニジニタギルとオムスクにそれぞれ民間企業の大戦車工場が二つあります。  こういうロシアの巨大な軍需産業というのは、でかいだけで全然もうからないということで、冷戦後は大変ばかにされていたわけですね。ストックホルム国際平和研究所が作る軍需産業ランキングとかで見ても、ロシアの軍需産業というのは、規模は大きい、売上高も結構大きい、輸出しているので、でもこれ利益率が著しく低いわけです。それはもうやたらでかくて非効率だからなんですよね。だから、ビジネスとしては完全に失敗であると言われてきたわけですが、これだけの巨大戦争になってみると、その非効率性というのは有事における兵器の生産能力であったり修理能力であったりするわけです。  これにウクライナ側も何だかんだ三年間付き合えているというのは、NATOの支援があるというのはもちろんあるんですけど、ウクライナ自身が旧ソ連第二位の軍事大国であるということはやはり忘れてはいけないと思います。ウクライナの人たちと話をしてみると、西側の支援も大変有り難いんだけど、やっぱり我々自身のポテンシャルというものは結構でかいんだということを非常に強調するんですよね。だから、もちろん文句なく軍事大国であるロシア対旧ソ連の中では地域的軍事大国であるウクライナが、その持てるポテンシャルをほぼ全力で生かして三年間休まず殴り続けているという、こういう戦争がとうとう復活してきてしまったというところを我々は見ているんだと思います。  もう一つは、やはり、ここに書いていますけど、核兵器の役割というのを、余りいいことではないと思うんですが、核兵器の役割というものを、何というんですかね、再確認させちゃった戦争なんだろうと思うんですよね。  去年の広島原爆忌に、湯崎知事が安定・不安定パラドックスの話をされて、つまり、この安定・不安定パラドックスというものがあるがゆえに、結局核兵器は戦争を防げないではないかと、だから核抑止という考え方は破綻しているでしょうというふうに指摘をされたわけです。確かにその考え方は一理あって、核兵器は大国から小国への侵略を抑止しないんです。むしろ誘発してしまう可能性があるということが、六〇年代からスナイダーなんかは指摘してきたわけですね。ただ、恐らく大国はそのことは余り気にしていなくて、小国への侵略は誘発するかもしれないけど、大国間戦争は確かに防いでいるでしょうという理屈で、多分核抑止に依存し続けているわけです。  ロシアは、この冷戦後三十年間、特に二〇〇〇年代後半以降なんですが、核戦略議論において強調してきたのが、この安定・不安定パラドックスを人為的に利用するんだということですね。戦略核戦力をしっかり持っていることによって、ロシアが少々暴れたところでアメリカが介入してこられるわけがないと。だから、そのことによって旧ソ連圏内で起こる紛争にロシアは介入していくことができるというふうに、この安定・不安定パラドックスを逆手に取るような考え方というのをしてきたわけです。  であるからこそ、今回の戦争でもバイデン政権は、ロシアは本当にやるんじゃないかと、アメリカをおじけ付かせるためのデモンストレーション核使用、又はウクライナに停戦を強要するためのデモンストレーション核使用やるんじゃないかということをかなり心配してきたわけですよね。だから、アメリカの軍事援助にも相当いろんな制限掛かってしまっていたと。  やはり、この戦争で改めて、核は恐ろしいからなくさなきゃいけないって我々日本人は思うんですけど、多分ロシアの中ではそういうふうに認識されていないと。やはり核というのは有効だというふうに思われていると思いますし、ちょっと今日は余り時間がないんですけれども、今ロシアの、何ていうんですかね、国内でちょっとヒステリー的な核議論が起こっていて、西側をおびえさせるために抑止では不十分なんだと、威嚇のための核使用というのがなければいけないんだみたいな、非常に嫌な議論が盛り上がってしまっているわけです。  今停戦の議論が始まっていますが、恐らく今このトランプとプーチンが話し合おうとしている停戦というのは、とてもウクライナがのめない停戦である可能性が高いと思うんですね。停戦というよりも、ウクライナの降伏を米ロで無理やり一緒に押し付けちゃおうというような議論に見えるわけです。これも実際ウクライナ側からはそういう意見が出てくるわけですね。そうすると、どこかでロシアが停戦をネゴシエートするのではなくて強要するという考えになる可能性はあって、そのための停戦強要核使用というのはこの交渉が始まったフェーズだからこそ余計また心配しなければいけなくなっている部分があると思います。大気圏内でどかんとやるかどうかというのは私はいまだに極めて難しいと思っていますが、核実験再開はあるかもしれないですね。  ロシアは、一九九〇年の十月だか十一月だかを最後に、三十五年間核実験をやっておりません。カザフスタンの核実験場ももう外国になっちゃったんで閉じていますけど、北極海のノバヤゼムリア島の核実験場はいまだに維持しています。国防省第十二総局の管轄下で核施設として稼働し続けています。去年の夏頃に幾つかの核実験用コードでちょっと怪しい動きがあったので、もしかすると核実験再開かもということを何人かの専門家たちは身構えたんですね。今もう冬で海が凍っちゃっていて資材搬入ができないので、しばらくやらないと思いますけど、この春以降とかに、ウクライナがあくまでもこの米ロの停戦に抵抗するんであると、何らかの脅しの目的の核実験みたいなことはあるかもしれないと思っています。  あとは、もうちょっと今々のお話を申し上げたいんですが、こちらの現在の戦況に関する見方というところを御覧いただきますと、この戦況等につきましては日々メディアで報じられているとおりでございます。この一年間、一年強ですね、ロシアが戦場においては優勢を握り続けてきたと言っていいと思います。ウクライナ軍が反転攻勢に失敗して、代わりにロシアが攻勢に出ていると。ほぼあらゆる戦場においてロシアが勝っています。今年に入ってからだけでも幾つか都市や村落がロシア軍に陥落されていますし、今現在もまだロシア軍は前進を続けています。  ウクライナとしては、特に政権側は、もう一回予備戦力をつくって、それで反転攻勢をもう一回やりたいという意図が恐らくあったと思うんですけど、今年の頭になってからついに予備旅団の編成を諦めて、前線の一番苦しい部隊に新兵を回すという方針に転換しています。だから、これは、もう少なくともしばらくの間は反転攻勢はできない、今ある戦線を支えることに全力を尽くすという方針になったと見ていいと思うんですね。  ただ、この戦場の中における勝利をロシア軍は戦争そのものの勝利に結び付けられていないというのが私の考えです。これは、日中戦争のときの日本軍、ベトナム戦争のときのアメリカ軍、アフガニスタン戦争のときのソ連軍、みんなそうなんですよね。正規軍の方が強いに決まっているので必ず勝つんですけど、戦争そのものに勝てないと。ロシア軍とウクライナ軍の戦いは、これは正規軍同士の戦闘なんですが、ロシア軍が勝っているんだけど、それによってロシアの戦争目的をウクライナにのませるということがこれまでできていなかったわけですね。  ロシアの戦争目的って何なのかと。いろんな見方があるんですけど、私に言わせれば割とそこははっきりしていて、開戦初日からプーチンはほぼ変わらず、ここに書いてある非ナチス化、非軍事化、中立化という、この三点セットは繰り返し言い続けているんですよ。このほかにいろんなことを言う場合もあるんですけど、軸としてはこの三点。  非ナチス化というのは、ウクライナって別にナチスの国じゃないので、ナチスじゃない国に非ナチス化しろというのはちょっと禅問答めいているんですけど、二〇一四年のマイダン革命をロシアはアメリカに支援されたナチスによるクーデターというふうに位置付け続けてきたわけですね、過去十一年間。だから、非ナチス化というのは、そのマイダン革命以前に戻せと、大統領は親ロ派のヤヌコビッチで、憲法にはNATO加盟とは書いていなくて、世論調査を取ったら国民の半数以上がNATO加盟に反対と言っていたあの頃のウクライナに戻せという話だと思うんですね。  ヤヌコビッチとかその他親ロ派の政治家たちの多くは失脚するか国外逃亡しているので、今更彼らを大統領の座に返り咲かせるというのは無理だと思いますけれども、でも、やっぱりロシアとアメリカは、大統領選実施という形で、少なくとも今のゼレンシキーは降ろせという話をしているわけですね。ゼレンシキー降ろしだけだったら別に私はウクライナ耐えると思いますけど、そこでロシアが選挙介入して親ロ派候補を立てるとかという話になると、これは相当内政が混乱するだろうと。  あとは、もう非軍事化に関しては、もう二二年の当初のイスタンブールでの和平交渉から変わらず要求し続けています。最初はプーチンはある程度の非軍事化と言っていたんですね。それに基づいてイスタンブール交渉前にロシアが突き付けてきた文書を見ると、二十万人以上いたウクライナ軍を五万人まで削減せよというのが当時の要求でした。なおかつ、五万人中将校を一千五百人までにせよというふうに当時は要求しています。だから、五万人の軍事組織を千五百人の将校で回すのもそもそも厳しいですし、もっと言うと、これは何かあってもそれ以上兵力を増やせないわけですね、指揮官の上限が千五百人しかいないと。なので、当時のウクライナ側は、いや、我々はイスラエルやスイスのような動員予備力が大変大きな軍隊を持つんだというふうに反発していましたけれども、多分、ロシアの目的は、軍事的に無力な状態にウクライナを追い込むということだと思います。  さらに、昨年六月十四日にプーチンが外務省で行った演説では、この非軍事化条項からある程度のが取れました。だから、完全な非軍事化を求めるというふうに言っているように見えちゃうわけですね。  あとは、中立化。これはNATO非加盟以外の要素も含むと思います。これも、イスタンブール交渉前にロシアが出した要求文書の中では、この中立化条項というのは第一条に入っているんですけど、この中立化条項で言っているのは、NATO非加盟だけではなくて、ロシアに対するあらゆる国際訴訟を取り下げよ、それからその全部の制裁を解除せよということが入っています。だから、ロシアに逆らわない国であるということ全体を中立化と言っていると思います。  なので、これまでは、戦場で幾ら勝っても、さすがにウクライナにこんな条件をのますことができなかったという意味で、やっぱり戦術的優勢を戦略的優勢に結び付けられていなかっただろうと思うんですね。ただ、トランプ政権ができて、まだちょっと判断は尚早かもしれませんが、やはりロシアの要求を相当程度のむことで戦争を終わらせるという方針であるように見えるんですね、トランプ政権は。そうしてみると、これはウクライナ側から見てみると、停戦というよりも降伏を強要されているというふうに恐らく見えるのでしょうし、ロシアから見ると、これは極めて好都合なアメリカが現れたというふうに見えているんじゃないかと思います。  最後、日本についての含意ということで、幾つかちゃちゃっとお話を申し上げたいと思いますけれども、まず、純粋に軍事的な側面からいうと、やっぱり、今我々が見ているのは二十一世紀型の一個の戦争の形なんですよね。これが全ての解であるとは思いませんけれども、今現実に我々が見ているウクライナでの戦争の在り方というのをちゃんと取り入れて、我々の安全保障政策をアップデートしていかないと、結局抑止の信憑性が保たれないだろうというのが私の大きな懸念点です。  恐らく、日本が最初に直面するのは海空正面なので、陸の戦争であるウクライナ戦争とは直接結び付きはしないはずです。でも、じゃ、例えば、仮に今の陸上自衛隊ってあのドローンがあふれているウクライナの戦場で戦えるんだろうかと考えてみると、失礼ながら難しいんじゃないかと思うんですよね。朝鮮人民軍もできなかったわけですよ。朝鮮人民軍は最初の二週間で三分の一が死傷したわけですね。ただ、ウクライナ軍の評価だと、彼らは適応は早かったとは言っています。だから、北朝鮮はこのウクライナの戦場で貴重な戦訓積んじゃったんですよね。我々としてもやっぱり、こういう現代型の戦争の現実を、そういう戦争をしたくはないんだけれども、本当になったらどうなるんだということはまず真摯に学ばなきゃいけないだろうと。  もう一個は、結局、ロシアの核の力が最後までやはり西側がウクライナを支え切ることを妨げてきて、今まさにアメリカの政権交代によって米ロが一緒になってウクライナに降伏を強要しているというふうに若干オーバーに言えば見えるんですよね。つまり、安定・不安定のパラドックスというのが極めて悪い形で働いている。まあ元々安定・不安定パラドックスはいいものじゃないんですけど。  じゃ、今我々の安全保障にこれを当てはめた場合どうかというと、やはり中国の核戦力が非常に速いペースで増えているということが私は気になります。アメリカの国防総省の議会向け報告は、二年連続で中国の核弾頭が百発ずつ増えているという見方を示していますよね。これは、どうもやはり中国が高速増殖炉の運転に成功しているらしいということを裏付けるものでもあると思います。今、オペレーショナルなやつが六百発だと言っているわけですね。このままでいくと、二〇三〇年までに千発に達するだろうと。つまり、現状の米ロの戦略核戦力の三分の二ぐらいまでは中国は達すると。このペースが落ちないのであれば、二〇三〇年代半ばには、二大核超大国米ロ、三位中国だったのが、米中ロが対等の核超大国になるという未来がそろそろ見えてくるわけですよね。  そのときに、やはり台湾有事なんかに際して中国が、このロシアがやったように安定・不安定パラドックスの人為的な利用というのを図る可能性はあるんじゃないかと私はやはり思います。じゃ、この安定・不安定パラドックスを引き起こさないためには、やはり米中間、米ロ間、中ロ間のその戦略的な核抑止はああいった軍事超大国がやるとして、この域内における侵略の阻止、あるいはその侵略の策源をたたける能力ぐらいは日本が持っておく、あるいは周りの国々で協力して持っておくということをやらないと、やっぱりこれ抑止の信憑性に著しい疑問を投げかけるんじゃないかというふうに思っています。  済みません、そろそろ時間ですね。  最後に、じゃロシアについて、最後のページで申し上げたいんですけど、こういう状況でロシアとどう向き合うかって本当に難しいと思うんですよ。私もロシア住んでいましたし、友人もいっぱいいますし、何なら奥さんもロシア人なので、ロシアを憎みたくはないし、無駄にロシアと争ってもしようがないとも当然思うわけですね。  ただ、じゃ、ここで、まあまあ安いガスも買えるんだし、北方領土問題もあるんだしということでロシアに甘く出るということが、私はやはり長期的に日本の国益になるとは到底思えません。それは、この前のページでも書いていますけど、結局、日本がこの弱肉強食みたいな世界で生きていける軍事大国になれる見込みというのは余り高くないと思うんですね。なおかつ、余り望ましいとも私は思っていませんし、しかも、それは究極的には日本核武装を意味したりもするわけで、なおさら日本人としては余り賛成したくないんですよ。  だから、何とかこの国際秩序を維持しなければいけないというのが日本の安全保障にとっては重要であるとするならば、やはりここでその秩序を今全力でぶち壊しにかかっているロシア側に対して甘い顔はすべきではない。少なくとも今この戦争の落とし前が付くまではロシアに対する制裁解除すべきではないと思いますし、あとは、これ、アメリカの中でもケロッグ特使なんかは中ロ分断を図るんだということを言っていますけど、中ロ分断が生半可なことでできないということは我が国の安倍政権の対ロ外交が証明していると思うんですね。安倍さんがいろんなことに果敢にチャレンジされた結果の一つのその負の知見として、これはきちんと生かさなければいけないと思うんですよ。  済みません、もうやめますけど、この下に写っている衛星画像二枚、これ、ロシアのチュコトカというカムチャツカよりもっと上のところの北極圏の飛行場なんですけど、ここに去年の夏に中国の飛行機が入っていたということを我々が見付けた衛星画像です。最初、輸送機かなと思ったんですけど、よくよく見ると後ろの方にちょろっと空中給油ポットが付いているので、これ空中給油機なんですよね。恐らく、この写真が撮られたのと同じ日に中ロの爆撃機が北極圏で合同パトロールをしているんですが、そのサポートのために入ってきた給油機なんだろうと思います。  だから、もう中ロの軍事的接近ってここまで来ていて、これを生半可なことで引っぺがそうとしても、恐らくそれは逆に足下見られるだけなんですよね。それよりは、やはり軍事的現実として注視するという方が、私のような安全保障屋からすると現実的な対ロ・アプローチになるだろうというふうに思います。  済みません、若干時間を過ぎました。以上にします。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) ありがとうございました。  では次に、酒井参考人にお願いいたします。酒井参考人。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) 御紹介いただきました早稲田大学の酒井啓亘と申します。このような機会を与えていただき、感謝申し上げます。  ここでは、ロシア・ウクライナ戦争に係る国際法上の論点について概括的に確認するとともに、こうした状況が現代の国際法秩序にいかなる影響をもたらし得るか、そして、それが、それに対して我が国がいかに対応すべきかについて私見を申し上げたいというふうに思います。  ロシアがウクライナに対して行った軍事活動に関する国際法上の評価については既に多くの論考が公にされておりまして、そのほとんどはロシアの行動が国際法上違法であるということで一致しています。ここで改めて詳述する必要はないと考えますので、ごく簡単に内容を確認しておくだけにいたします。  二〇二二年二月二十四日に開始されたロシアによる特別軍事作戦というのは、実際にはロシア軍がウクライナ領域に侵攻し、ウクライナの主権や領土保全を侵害する違法な武力行使であるということは明らかでありました。国連総会も、その後、三月二日に、この軍事活動がロシア連邦によるウクライナへの侵略であり、国連憲章二条四項に規定される武力行使禁止原則に違反する行為であるとして、ロシアを非難する決議を採択しています。  この点での国際法上の評価は多くの識者も一致しています。ロシア政府でさえ、この軍事活動が国際法上違法であるということを前提として、例えば、国連憲章五十一条に基づき、個別的自衛権や集団的自衛権などを援用して、その違法性を阻却する事由に該当することを主張しているわけです。しかし、そうした違法性阻却事由もそれぞれの要件を充足するものとは言えず、その主張が妥当であると言うことは困難であると言わざるを得ません。  ここで重要なのは、国際法上の評価というのはそれぞれの個別の行為ごとに行われなければならず、ならないということでありまして、ロシアによるウクライナ侵攻の背景にどのような政治的背景があるにせよ、その軍事活動自体を国際法上の関連規則に照らして法的に評価しなければならないということだろうと国際法の観点からは思うわけであります。  次に、ロシア・ウクライナ戦争における国際人道法の適用についてもお話をしたいと思います。  二ページのレジュメでいうと下になりますけれども、国際人道法規則というのは武力紛争法とも呼ばれ、武力紛争中において適用される武力規制に関する国際法規則に該当します。  この国際人道法規則の特徴の一つは、武力紛争が発生したその端緒となる武力行使が国際法上合法か否かにかかわらず、その結果として生じた武力紛争の当事国間では国際人道法は平等に適用されるということが重要とされています。したがって、ロシアによる最初の武力行使が国際法上違法であるとしても、まあ違法だと考えられますが、それによって生じたこの戦争という武力紛争の中では、その当事国であるロシアもウクライナも共に国際人道法規則を遵守しなければならないということになっています。これが平等適用と、国際人道法の平等適用と呼ばれるものであります。  国際人道法は、戦闘員と文民を区別し、軍事目標と民用物を区別することを大前提としています。そして、文民や民用物に対する攻撃を禁止するというのがルールであります。したがって、都市全体への無差別砲撃や、病院、学校への攻撃、文民の過度な損害を伴う攻撃などが禁止されることになります。また、捕虜の虐待禁止も国際人道法の重要な規則の一つです。こうした規則は、一九四九年のジュネーブ諸条約や一九七七年のジュネーブ諸条約第一追加議定書などに明文化されており、その締約国となっているロシアにも、そしてウクライナにも適用されて、それぞれの活動につき条約違反が問われています。  なお、この戦争では、ドローンなどAIも駆使した敵対行為やデジタル空間を通じたサイバー攻撃が頻繁に行われたことでも注目されており、この点での国際人道法規則の充実が焦眉の課題というふうになっています。  こうした国際人道法違反については、ジュネーブ諸条約やその追加議定書の重大な違反とされた場合に条約締約国の国内裁判所でその問題が裁かれるということになりますし、戦争犯罪などについては、国際刑事裁判所、ICCが裁判権を有する場合にその行為者を裁くことができるというふうに考えられています。  この戦争では、二〇一四年以降のウクライナ国内での事件について、ウクライナ自身がICC、国際刑事裁判所の裁判管轄権を受諾する宣言を行っていますので、ロシアの軍事活動についてICCの検察官の捜査が及ぶということになります。実際にも、二〇二四年三月十七日には、プーチン大統領に対して児童の強制移動などの容疑で戦争犯罪についての逮捕状が発出されています。しかし、その身柄を強制的に確保する手段が残念ながらICCにはありません。結局のところ、容疑者は自国国内で通常どおりの活動を行うことができてしまうという結果になっています。  こうしたロシアの違法行為に対して、ウクライナが国際法に基づいて行った対応と、これに対する国際社会の支援について次に申し上げたいと、確認したいというふうに思います。三ページの真ん中以下ということになります。  ここでは、二つに、今申し上げたように、ウクライナの行為と、それから国際社会の支援というふうに、二つに分けて考えたいというふうに思います。  まず、当然のことではありますが、ロシアによる直接の侵略行為に対するウクライナの対応というのがあります。  自国の領域内に外国軍隊が侵入し武力行使を行った場合には、一九七四年に国連総会決議として採択された侵略の決議、侵略の定義に関する決議があり、その第三条によれば侵略行為に該当するというふうに考えられます。侵略行為は、単なる武力の行使にとどまらず、武力行使の最も重大な形態となる武力攻撃を伴うものと考えられます。  先ほども申し上げましたとおり、国連憲章五十一条によると、相手国からの武力攻撃が発生した場合に個別的自衛権を発動することができるというふうにされておりますので、本件についても、ウクライナが個別的自衛権を行使してロシアの侵略行為に対抗することが可能というふうに法的には考えられています。実際にそのような主張が行われているわけです。  また、ウクライナは、自衛権の行使と並行して、国際司法裁判所、ICJにロシアを相手取って提訴しています。国際裁判では、両当事者の、紛争当事者両方の同意があって初めて裁判を行うことができるというふうにされています。この点が国内裁判とは違うわけですけれども、本件では、ロシアもウクライナもジェノサイド条約という条約の締約国になっていて、その裁判条項を利用してウクライナが国際司法裁判所に紛争を付託したと、一方的に付託したということになっています。  これまでICJは、暫定措置命令、それから訴訟参加命令、そして先決的抗弁判決がそれぞれ下されています。この点については、また御質問があればお答えしたいというふうに思います。  また、国際社会からは、特に欧米諸国を中心として軍事的支援、それから経済的支援、それから、この紛争に非常に顕著で特異な特徴を持つわけですけれども、先ほど申し上げたウクライナによるICJへの一方的付託に対して、それを側面から支援する行動が欧米諸国を中心に行われているということもあります。これは、四ページの上のところに書きましたけれども、法律的紛争が国際司法裁判所で解決されるというために、ウクライナを支援するために欧米諸国が中心となって訴訟参加を行うというようなことが行われているわけです。この点についても、もし御質問があれば改めてお答えをしたいというふうに思います。  この戦争が国際法秩序にもたらす影響について少し申し上げておきたいというふうに思います。  そのためには、国際社会における国際法の位置付けを理解しておくことが必要だろうというふうに考えられます。  基本的に、国際法は国際社会における主要なアクターである主権国家の合意によって形成されます。そして、その内容に同意した同じ主権国家によって履行を実施されるところにその最大の特徴があるわけです。つまり、国際法というのは、主権国家が自らのためにその内容を形成し、そして自らのためにその内容を実施するというものなわけです。自ら作って、自らそれを実施するということなわけですね。  このため、往々にして国際法というのは、国内社会における集権的な強制執行機関がない国際社会において、主権国家により自由に破られるもの、遵守されなくても当然のものというふうに考えられがちであります。しかし、国家というのは、自己の利益、それが短期的か、あるいは中長期的かにもよりますけれども、いずれにしても、自国の利益に適合する場合には、そしてその限りにおいて主権国家はその国際法規則を遵守する、そしてそれが主権国家により国際法が遵守される実効性の根拠というふうにされてきたわけであります。  しかし、現在は、それとは異なる契機が国際社会において出現しているということにも留意しなければなりません。二十世紀初めくらいから現在に至るまで、国際社会が成熟していくにつれて、主権国家の国益とは区別される国際社会そのものについての法益も認識され、それを保護するための国際法規則も発展していく過程にあるからであります。  そして、その過程において、国際法秩序には、国家間の合意による逸脱を許さない法原則、いわゆる強行規範というものが登場いたしました。また、主権国家が条約締約国など特定の国家に対して負う義務だけではなく、国際社会全体に対して負う義務、すなわち対世的義務というものも認識されるようになってきたわけであります。中でも、侵略の禁止というのは先ほど申し上げた強行規範の一例とされていて、関係国の合意、条約などでは逸脱できない最重要の規範の一つというふうに考えられているわけです。  今回のロシアによるウクライナへの軍事活動は、国際法の発展を目に見える形で発展させてきたこの強行規範というものをないがしろにするという結果になっています。この点は少なくとも次の二つの点に留意しなければならないであろうというふうに考えられます。  第一に、ロシア自身も、自らに適用される武力行使禁止原則あるいは領土保全原則、侵略の禁止といった国際法上の基本原則の存在とその適用自体は否定していないということであります。すなわち、ロシアの軍事活動は強行規範に違反する行為ですが、ロシア自身も、侵略の禁止や武力行使禁止原則といった国際法規則を否定したわけではなく、その存在を肯定した上で、個別的、集団的自衛権の行使など違法性阻却事由で自らの行為の正当化を図っている、この点は重要かと思われます。  しかし、第二に、特に国家の安全保障が関係する場合、こうした国際社会全体の利益とそれを保護するための諸規則が容易に軽視されやすいという状況が生じることは否めません。  侵略行為による領域の取得、すなわち武力による併合は国際法上禁止されており、国際社会はその法的効果を否定するためにその状況を承認してはならないというルールを作っています。すなわち、強行規範の重大な違反の効果を考えた場合、侵略行為を行ったロシアにウクライナの領域を移転させるということは国際法上禁止されているということなのですが、この点が果たして法の予定するような形で実現する現実世界となっているかということが現在問題となっており、現代国際法が直面する困難の一つというふうになっているわけであります。  こうしたロシア・ウクライナ戦争の現状を踏まえた上で、国際法の観点から指摘できる今後の課題や問題について二点申し上げたいというふうに思います。  五ページ目の三のところに入りますが、第一に、戦争終結に向けた交渉の結果として、違法な手段によって行われた領域の取得が可能とされることを国際法に照らしてどのように考えるかということであります。  トランプ政権となり、アメリカとロシアの間で和平交渉あるいは停戦交渉が行われる報道がありますけれども、ここでは二点だけ指摘しておきたいというふうに思います。一つは、紛争当事者の一方であるウクライナがその過程に正式には関与しない可能性があるということです。もう一つは、和平交渉あるいは停戦交渉の対象として、かつてウクライナの領土であった地域の一部がロシアの違法な武力行使、侵略行為によってロシアに移転されること、その事態の効果であります。  前者のウクライナの立場については、ウクライナ政府の意図に反する和平案あるいは停戦案がアメリカとロシアの間で仮に合意され、それをウクライナに押し付けて和平合意、停戦合意が締結されざるを得なくなるという事態も想定されます。それは、ウクライナ政府、あるいはウクライナという国家の意思に反して、強制により条約の締結を求められるということにもなりかねません。このことは、ウクライナの代表に対する強制であれば、ウィーン条約法条約という国際法規則の中でも五十一条に規定されている国の代表者に対する強制に該当するおそれが出てきますし、ウクライナが合意内容を受諾しなければロシアが軍事活動を継続する、あるいは核を使うというような威嚇を行うということで、これも条約法条約五十二条に言う武力による威嚇又は武力の行使による国に対する強制に当てはまるかもしれません。  いずれにおいても、こうした事項に該当するのだとすれば、問題となる条約あるいは合意の無効原因事由となり得ます。すなわち、和平合意、停戦合意を法的拘束力ある条約として確定しようとしても、それが無効となる可能性があるということであります。  さらに、移転の対象となる領域に居住するウクライナ人民の意図にも考慮がなされなければなりません。ウクライナ人民の真正な意思を確認する必要があり、これをないがしろにすればウクライナ人民の自決権の侵害につながるおそれも出てきます。  もう一つのロシアによる侵略行為を通じた領域の取得が正当化されるかどうかという点でありますが、これは、さきに述べたとおり、侵略の禁止という強行規範に違反するロシアの軍事活動の結果、すなわち武力による領域の取得というのは国際社会全体に対する義務に違反する行為ということになりますし、国際社会を構成する主権国家はその法的効果を承認しない法的義務を負うというふうにされています。そうだとすると、仮に紛争当事者であるウクライナがそうした領域移転を条件としてのんで和平合意、停戦合意を受け入れたとしても、国際社会としてはそれを認めてはならないということにもなりかねません。  もし、関係当事者のみで領域移転が受諾され、これに対して他の諸国から唱えられる異議が受け入れられないとすると、これまで現代国際法において発展してきた強行規範概念とその違反行為の法的効果に対する重大な疑念というものが生じることになるわけであります。  こうした状況において、我が国が領域移転を含む和平合意、停戦合意の締結に賛意を表明するということは、外交上の選択肢としてはもちろんあり得ます。無辜の人民を救うために、無辜の人命を救うために早急に戦闘を停止し和平を達成するという平和を重視する方針を採用し、結果として、そのためにはこれまで国際法で考えられてきた概念やその効果に一定の修正を迫るという行動となることも、これはアメリカとの関係を重視する我が国の外交上の立場からは十分に理解できるところではあります。  しかし、他方において、そのことにより我が国が、国際法に対する姿勢について、そして国際社会における法の支配に対する自らの役割について、かなりの失望と信頼感の喪失を国際社会から受ける覚悟を引き受けなければなりません。そして、それに見合う外交上の成果をまた求めなければならないという、極めて困難な課題が残されることになるでしょう。  今後の課題としての第二点として、アメリカによるICCへの制裁措置にいかに対応するかということがあります。これもウクライナを除くアメリカとロシア主導の和平、停戦交渉への対応と同種の問題を含むものではないかというふうに考えられます。  すなわち、ICCの捜査に協力する個人などに対して制裁措置を科すというアメリカの方針に対して、ICC規程加盟七十九の国・地域がこれに反対する共同声明を明らかにしました。我が国はこの共同声明には距離を置きましたが、それは赤根智子ICC所長の安全を考えたものというふうに言われています。ただ、これにはアメリカへの配慮も排除されないように思われますし、このことは、国際社会における法の支配を体現している機関の一つであるICCとその制度に対する最大の貢献国である我が国が、現実にはその保護の立場に立たないということを意味します。  アメリカとの協調関係により獲得される外交上、安全保障上の利益はもちろん重要ですけれども、まさにルールに基づく国際秩序、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序と、それに由来する国際社会全体の利益を犠牲にするということになれば、我が国の中長期的な利益が損なわれないことにならないかどうか、国際社会におけるそのプレゼンスを損なうものとはならないかということをきちんと吟味しなければならないように思われます。  以上のように、ロシア・ウクライナ戦争の国際法上の評価というのは、大国による国際法の軽視にその原因の一端があるとも言え、その結果として国際社会における国際法の役割への不信感が醸成しているということになっています。  そこで、最後に、そうした現在の状況を踏まえて、より一般的に現代国際法の発展に向けての日本の貢献について触れておきたいというふうに思います。  ここでは、国際規則の形成と、国際法規則の形成と、その実施の二つの側面に分けて説明いたします。  まず、我が国の外交には、国際法規則の形成に積極的に参加し、国際社会におけるルールの明確化に寄与することが求められます。国際法規則の形成には、自国の国益の増進を図るという観点が不可欠であり、もちろんそれが当然ではありますが、そのほかに国際社会全体の法益を発展、強化させるための手段の実施に積極的に協力、貢献することもまた重要であります。これには、ジェノサイド条約や各種人権条約の個人通報制度を規定した議定書など重要な国際条約への加入も課題ですが、多数国間条約の成立に向けた交渉への参加とその最終的な批准、加入のほか、慣習国際法規則の形成の端緒となる各種国際機構の活動に積極的に参加することが含まれます。  また、我が国は、ルールに基づく国際秩序や法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を掲げて、これを推進する立場である以上、そこで想定される法やルールが国際社会全体にとってできる限り納得のいく内容を有するように努力することも求められます。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) 酒井参考人、恐縮でございますが、時間の関係もございますので、御意見おまとめください。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) 分かりました。申し訳ありません。  では最後に、ごく簡単に一点だけ、じゃ、申し上げます。  せっかくですので、この立法府である国会についても、国際法規則の形成への理解を深めていただきたく希望します。国内立法は、国際社会においては我が国の国家機関の行為でありますし、国家実行の表れとみなされるからであります。  既に安全保障の分野では、安全保障法制に係る国内法の整備が行われています。さらに、最近では能動的サイバー防御に関する新法の制定と関連法令の改正が予定に上がっていると伺っています。国際社会において依然として不明確なサイバー活動の規制の問題について、立法府が国内立法を通じて国際社会における国際法制度の整備に関する議論をリードする契機を生み出すことにもなり、その後の外交交渉を有利に進めることも考えられます。立法府もまた、我が国の国家実行という形で国際法規則の形成に寄与し得るということを御確認いただければと思います。  私の意見はこれまでです。申し訳ありません、時間を超過して、申し訳ございませんでした。以上です。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。  まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。  なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。  また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくとともに、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるよう御協力をお願いいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。  それでは、永井学君。

永井学 自由民主党

○永井学君 自由民主党の永井学です。  今日は、お三人の参考人の皆様方、本当に貴重なお話ありがとうございました。まさに今動いているこのウクライナとロシアの戦争について、本当に分かりやすく、いろいろな方面からお話を伺うことができました。二〇二二年の二月二十四日にスタートしたこのロシアとウクライナの戦争ですけれども、来週の月曜日でいよいよ三年がたつということで、長期化している中で、本当に今日いろいろなお話を伺えて、大変勉強になりました。  そんな中で、お伺いをしたいんですが、まず最初に広瀬参考人と小泉参考人にお話を伺いたいというふうに思います。  先ほど、小泉先生のお話の中にもちらっと出てきましたけれども、ロシアと北朝鮮との軍事的関係の強化が東アジア情勢に与える影響についてちょっとお伺いしたいと思います。  ロシアは北朝鮮と有事の際に軍事的支援を提供することを定めた包括的戦略パートナーシップ条約を昨年の六月に締結をして、同年十二月には同条約が発効しました。そうした中で、昨年十月以降、北朝鮮の部隊がロシア西部のクルスク州に配置されて、ウクライナとの戦闘に参加をしております。  ウクライナ戦争を通じロシアと北朝鮮の軍事的な結び付きが強まる中、北朝鮮がロシアから核や弾道ミサイルの高度化、軍事偵察衛星に関わる支援を受け、日米韓に対して一層挑発的な行動を取った場合、朝鮮半島情勢の緊迫化をもたらしかねないと思います。さらに、そうした状況がいわゆる台湾有事と連動した場合には、東アジア全体の安全保障情勢は極めて深刻な状況に陥りかねないと思いますが、そうした事態を防ぐために日本はどのような方策を取るべきか、お二人に伺いたいと思います。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) 御質問ありがとうございます。  この北朝鮮の問題というのは、例えば今日お話ししたNATOのこれまでの政策の深化とか、そういう中で必ずしも予期されていなかった問題でして、例えばNATOが戦略概念を改定したときにも、そこで記されていたインド太平洋への関心、あるいはインド太平洋の問題が欧州大西洋に非常に重要な意味があるというのは、あくまでも、これは明記はしていませんけれども、中国であります。特に、北極海が温暖化によって通りやすくなることによって、中国が北極海からヨーロッパにも進出をしてくる可能性があるとか、そういった問題で中国に対する注意というのは向けられていたわけですが、必ずしも、北朝鮮が今回のように派遣したことについて、NATOが、それ自体が注意をしていたとは思えませんけれども、でも、考えてみると、そうした、仮に動機が中国であったにしても、NATOがインド太平洋とのグローバルな安全保障の連関というものに気付いたということは、その上に立って北朝鮮の問題に対処できるということもあって、これはある意味で整合性がある問題だと思いますし、特に、先ほど申し上げましたように、このIP4という枠組みは日本と韓国とオーストラリアとニュージーランドですから、これは期せずして韓国を巻き込んでいるわけですので、そういう意味で、もちろん日米安保を中心にミサイル防衛とかには対応していくんでしょうけれども、やはり韓国を含めた日本がNATOと協力をすることによって一定の北朝鮮に対する抑止力を発揮するという意味もありますので、この発展は決して日本にとって不適切でも何でもなくて、むしろ前向きに捉えるべきではないかなというふうに思います。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) どうもありがとうございます。  まず、そもそも北が今ロシアに対して一番大きな貢献ができている分野は何かというと、人間と弾だと思うんですよね。さっきロシア軍が年間一千万発撃つというお話を申し上げましたけど、北朝鮮、去年一年間で六百万発ぐらいの弾をロシア軍に供与したと言われています。二〇二三年には五百万発弱だったと言われています。それから、ロシア軍の火力の実は半分から六割ぐらいって北朝鮮由来なんですよね、今や。だから、北朝鮮がこの巨大な軍事工業力を持っていて、それでロシアを支えているというところにこの取引が生まれちゃっている余地があるわけです。  やっぱりいろんな穴が空いていて、北朝鮮に本来渡るべきじゃないものが渡ってしまっていたということを反省しなければいけないと思いますし、他方で、完全に日本だけで封じ込め切ることも絶対できないわけですよね。ですから、さっき広瀬先生がおっしゃった韓国との協力というのも、広く網を掛けるような協力をアジア全体でやっていけないのかと。これは、更に言うと、ヨーロッパの工業国家とも連携しなければできないわけです。工作機械であるとか、それを動かしているソフトウェアであるとか、そのメンテナンス用部品であるとかですね。  今直接的に問題になっているのは、ロシアに対する工作機械の流出がまだ止まっていないということなんですよね。これ、フィナンシャル・タイムズの調査報道を読んでいると、日本からはほぼ止まっているんだけど、やっぱり韓国、台湾からかなり漏れちゃっている部分があるであるとか。で、恐らく同じことが北朝鮮に対しても起こっているはずなんですよね。又は、それぞれで取り締まっているんだけどちゃんとうまく連携できていないであるとか、ちょっとこの辺私は専門外ですが、そういったところで私たちができることというか改善できることがもっとあるんじゃないかなと。  なおかつ、恐らくこれは法制度とかの問題にかなり絡んでくるので、本当に立法府の先生方に是非是非御協力をいただきたいところだと思います。

永井学 自由民主党

○永井学君 ありがとうございました。  それでは、あと一問、酒井参考人にお伺いをしたいと思います。  若干、先ほどの御説明の、何かちょっと本当に総括的というか、またダブるような部分があると思うんですけれども、お伺いしたいと思います。  ウクライナ戦争において、ロシアはウクライナの主権と領土一体性を侵害し、武力不行使原則に違反するとともに、ブチャでの虐殺を始め様々な国際人道法違反を行っております。国連憲章の下、国際の平和と安全の維持に主要な責任を負う常任理事国の一つであるロシアによるそれらの行為は、国際秩序の根幹を揺るがすものであると考えます。  こうしたロシアに対し、国際法は一見無力に見えますが、法の支配を重視する日本を始め、国際社会の多くの国々は、国連のみならず、G7といった多国間枠組みなどを通じて、ロシアによる国際法違反を非難し続けています。また、ロシア自身、これまで自ら国際法に違反しているとは言っておらず、法理上は認め難いものの、自衛権等によって自らの行為を正当化しようと試みています。  そこで、改めて、ウクライナ戦争において国際法が果たしている役割や意義、この戦争を踏まえた国際法秩序の在り方と国際社会における法の支配の強化に向けて日本が今後果たすべき取組について再度お伺いをしたいと思います。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  大変重要な質問であり、難しい質問だというふうに思っております。  国際法は、少し説明を補足させていただくと、大きく二層構造になっているというふうに言ってもいいんだと思うんですね。つまり、歴史的に言えば、伝統的に国家間での活動を規律してきた、その領土保全原則だとか、あるいは主権平等原則だとかといったような国家間、主権国家が従来遵守してきたものと、これに対してもう一つが、現代国際法において新たに国際社会の法益を中心として組み立ててきた、人権問題だとか環境問題だとか、あるいは人道法の問題だとかというような形での法規則というのがあると。で、日本が果たすべき役割というのは、もちろん両方の法規則を発展、それからそれを実施するというところに注力すべきというふうに思います。ただ、それはあくまでもバランスよく行われなければならないんだろうというふうに思いますね。  今回のロシア・ウクライナ戦争の一つの教訓というのは、まだ終わってないですけれども、教訓めいたものを申し上げれば、先ほどおっしゃったように、ロシア自身はその伝統的な国際法規則を破るつもりはないということは再三再四言っているわけです。これはほかの主権国家も同様だろうというふうに思うんですね。むしろ新たに展開している現代的な国際法規則というものをいかに発展させていくかというところが焦点だろうというふうに思います。  ただ、こういった新しい規則というのは、一直線に目的が達成できるように作られていくわけではなくて、紆余曲折、場合によっては後戻りしながら徐々に進んでいくものだろうというふうに思うわけです。今回の戦争で仮に後退すると、その新しい規則が仮に後退するものだとしても、行く行くは前進するように働きかけていくと。その意味で、日本が多数国間の枠組みにおいてロシアの行為を非難し続けるというのは決して無駄ではないというふうに考えています。  お答えになっているかどうか分かりませんけれども、そのとおり考えます。

永井学 自由民主党

○永井学君 ありがとうございます。  以上です。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) それでは、杉尾秀哉君。

杉尾秀哉 立憲民主・社民・無所属

○杉尾秀哉君 立憲民主党の杉尾と申します。  三人の先生方、本当に貴重な御意見ありがとうございました。  今、ちょうど渦中ですので、なかなかはっきりしたことを言いにくいとは思うんですけれども、非常にシンプルな質問です。  米ロの高官が接触をして、トランプ政権、人によって言うことが全然違うみたいですけれども、今月の下旬にも首脳会談が行われるという中で、この米ロ交渉がうまくいくか否か、それについてお三方の見通しをできるだけコンパクトにまず教えていただきましょう。酒井先生から。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) 御質問ありがとうございます。  私は政治学は大変疎いもので、国際法学の観点からということになりますので、確固たることは申し上げられません。  ただ、トランプ政権、第一次のときもそうだったんですけれども、やっぱりアメリカ・ファーストの姿勢が強くて、その限りでやっぱりロシアとの交渉というのを行っていくんだろうというふうに思います。その意味で、成功するかどうかというのは、極めてバイの関係で行われることになるんだろうと思って、マルチの視点というのはそれほどないのかな。仮にロシアとの間で交渉がうまくいったとして、それが国際社会に向けてどういうメッセージを持つのかというのはまた別問題だろうというふうに、素人ながらの見立てで考えております。  申し訳ありませんが、私からは以上でございます。

杉尾秀哉 立憲民主・社民・無所属

○杉尾秀哉君 小泉参考人もお願いいたします。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) ロシア側を見ている人間からすると、今トランプが言っていることってほぼロシアの主張を丸のみしているんですよね。  まず、ロシアの交渉開始条件というのが、占領、併合を宣言した四州の行政境界線からのウクライナ軍撤退とNATO不加盟、これで交渉のテーブルには着くという言い方なんですよ。トランプ政権はその二つの点について、現実的ではない、あるいは困難であるという言葉でロシア側の言い分を認めているように見えますし、さらに、その先の和平交渉そのものの条件である中の非ナチス化、政権交代については、ウクライナは戦時下であっても大統領選すべきじゃないか、民主主義国なんだからということで認めているように見える。だから、米ロ間は交渉ができるというか、トランプがもうロシアの言い分をどんどんのんでいっているように見えるんですよね。だから、米ロ交渉はできるんでしょうと。というか、ロシアに丸め込まれちゃうんでしょうと私は思っています。  ただ、これはウクライナでの戦争の問題なので、米ロが幾ら勝手に握ってもウクライナが同意しなければこれ停戦まとまらないですから、米ロ交渉はできるんだろうけど、停戦そのものはできるんだろうかというところに関しては極めて疑問であると思っています。

杉尾秀哉 立憲民主・社民・無所属

○杉尾秀哉君 広瀬参考人に同じ質問伺いますが、加えて、広瀬参考人には、先ほど、今のお話もそうだったんですけれども、小泉参考人がおっしゃっていた、事実上トランプがロシアの要求を相当のむことで戦争を終わらせようとしているんじゃないかと、これについての見解も含めてお答えいただけますでしょうか。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) 分かりました。  もちろん現在進行形ですので、あくまで私見として申し上げますけれども、こういう大きな戦争が起きたときに、やはりこれは今私はパラダイムシフトになっていると思うんですね。もう冷戦後の多国間協調というのが終わりつつあって、やっぱり大国間のパワーポリティクスというのが物を言う時代になっていると。これってやっぱり第二次世界大戦の後にちょっと似ているわけですよ。第二次世界大戦のときだって、結局、小国の問題、東ヨーロッパの問題、いろいろな問題がありましたけど、決めたのはスターリンとルーズベルトなわけですね。ですから、そういうそのパターンがもう一回繰り返されるんじゃないかという危惧を持っていて、その意味では、今トランプさんとそれからプーチンさんがまとめようとしていることというのは、まとまる可能性というのは枠組みとしてはあると思います。  それを補強するのは、残念なことに肝腎のヨーロッパに代案がないということです。ヨーロッパはそれこそ、何というんですかね、口だけ大将みたいになっていて、いろいろ倫理的に正しいことをおっしゃるんだけれども、その裏打ちとなる手段を持っていないがゆえに、結局最終的にはそれはウクライナが決めることと投げてしまうので、そこで結局は、ヨーロッパとして現実的代案を出せないこと、プランBを出せないことがなおさら米ロで一旦は方向性決まってしまうんじゃないかということ、そういう予測、そういうやや悲しい予測というのを私は印象付けられているなというふうに思います。

杉尾秀哉 立憲民主・社民・無所属

○杉尾秀哉君 今、広瀬参考人がおっしゃったように、こういう交渉というのはそのゲームプレーヤーが多ければ多いほどまとまらないので、アメリカ、それからロシア、プーチンにしてみれば、双方やっぱりなるべく少ないプレーヤーで決めた方が話がまとまりやすいということだと思うんですが、そこで、今、広瀬参考人が触れられました第二次大戦という話で、最近ロシアなんかでヤルタ二・〇という言葉が言われているというふうに聞いています。あのときはイギリスのチャーチル首相がいたわけですね。そこにアメリカのルーズベルトとそれからロシアのスターリンと、ソ連のスターリンということだったですけれども、その三人目のプレーヤーがもしいるとすれば、ある人に言わせれば中国の習近平がそれを狙っているんじゃないかと、しかもその和平後のウクライナへの例えばPKOの参加とかいうふうな形でですね。そういうふうな解説もありますけれども、このヤルタ二・〇というものに対して、小泉参考人、よくロシアの国内事情をお分かりだと思いますので、どういう議論になっていて、実際にこういうことになるのかどうなのか、その見通しというか、お聞かせいただければ有り難いと思います。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) ヤルタ二・〇という言葉は多分にはやり言葉ではありますけれども、要するに、冷戦後にロシアが言ってきた多極世界という話がいよいよ実現しつつあるという手応えは持っていると思うんですね。ただ、多極世界というのは、要するに、アメリカ中心世界を解体して何か別の世界をつくるということなんですよ。それ自体はとてもいい話だと思うんですけど、その多極世界というのは、無極世界とはロシアは言わないんですよね。幾つかの極、グレートパワー、ロシア語で言えばデルジャーヴァがいて、それがそれぞれの地域を取り仕切る、その地域を取り仕切っている極同士はけんかしないという世界なので、どちらかというとこれは勢力圏分割構想みたいなものに近かったわけです。少なくともプーチン政権下ではそういう話にどんどん変わっていってしまったと。  今、そのヤルタ二・〇というのは、だから、結局、その勢力圏分割をするメンバーを変えて同じようなことをしましょうと、さっき広瀬先生がおっしゃった第二次世界大戦後の勢力圏分割をもう一回やりましょうというふうにロシア側からは見えているんだろうと思います。そのときに、当然のことながら、旧ソ連地域はロシアのものですよねと。  あと、もう一個忘れてはいけないのは、二〇二一年の十二月にロシアは具体的な提案をNATO本部とアメリカ政府両方に対して送っていますよね。特に、あの中のアメリカ向け条約案の中では非常に具体的なことを言っていて、旧ソ連にはNATOを拡大しないと約束しろと言っているし、それから東ヨーロッパのNATO加盟国からは米軍を撤退させろと、合同軍事演習もするなと。つまり、東ヨーロッパは緩衝地帯にしろと、NATOは西ヨーロッパ以降でやりなさいという話なんですよね。そういうような形のヤルタ二・〇というのをロシアは多分構想しているだろうと思います。  ただ、そこに中国が、当然もうアジアは中国のものでいいやってロシアは思っているわけですけど、今のウクライナ戦争そのものの具体的な停戦プロセスに中国が入ってきそうかというと、余りロシア語圏から見た情報の中ではそういう期待論というのはない気がしますね。

杉尾秀哉 立憲民主・社民・無所属

○杉尾秀哉君 最後に、酒井参考人に伺いたいんですが、これは仮の話の場合ですけれども、ロシアに有利な形で停戦、和平が実現した場合、先ほどちらっと先生触れられておられましたけれども、日本がどういう立場を取るべきなのかと、ここでアメリカを支持した場合は国際法の発展に対する後ろ向きの姿勢を示すことになるんじゃないかと、こういうことをおっしゃいました。  それから、ICCの今回のそのアメリカの制裁に対する日本の、いわゆる共同声明に日本が加わらなかったという問題も含めて、今の日本のこうした姿勢について率直な参考人の御意見を聞かせていただければ有り難いんですけれども、こうあるべきではないかという視点でお願いします。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  難しいんですけれども、私自身の個人的な考え方を言うと、国際法というのは国際社会の構成員の協力の下に作られてきたものであって、どこまでそれが現状に合っているかどうかということを考えながら発展させていかなければならないだろうというふうに思っています。  その限りで、日本が、行き過ぎた発展を国際法がしているということであれば、そこに、将来的にはその方向に持っていくべきだという姿勢は取りつつも、しかし現時点では、国際法は具体的な規則というのは外交に資するものではないという形で後ろ向きになるのも、これは国益の観点からは理解できるところではあります。  要するに、バランスの問題だというふうには思っています。いかなる国益を日本が考えて国際法を守っていくのかという観点から、この部分はやはり全体のことを考えて、国際法のこの部分についてはちょっと付いていけないけれども、しかし、ほかの部分についてはどんどん促進していきたいというような考え方というものは成り立ち得るんじゃないかというふうには考えています。

杉尾秀哉 立憲民主・社民・無所属

○杉尾秀哉君 そういう戦略的な対応が必要だということで、了解いたしました。  ありがとうございました。私からは以上です。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) それでは、高橋光男君。

高橋光男 公明党

○高橋光男君 ありがとうございます。公明党の高橋光男でございます。  本日は、三人の参考人の皆様に、ウクライナ戦争の現状と諸課題という、まさに現在起こっている大変重要なテーマにつきまして、本当にそれぞれの御専門のお立場から示唆に富んだ御説明をいただき、ありがとうございます。  まず、私は広瀬先生と小泉先生にお伺いしたいと思いますが、今のこの米ロの関与によるウクライナ戦争の停戦等の交渉について、どのような形でこれが実現するか、その可能性も含めて分かりませんけれども、その後の我が国日本のウクライナへの関与の在り方につきましてお伺いしたいと思います。小泉先生のレジュメ、最後ちょっと御説明もできなかった分もあろうかと思いますので、その辺りも教えていただければと思います。  例えば、二国間でいえば、我が国に期待されているところとして、やはり復旧復興への貢献の在り方、また、マルチの部分でいきますと、これはもしかしたら酒井先生の領域かもしれませんけど、今この法の支配というものが大変危機にさらされている中で、いかに国際秩序をこれ回復していくのかということですね、それぞれのお立場から、やはり我が国がそうした課題に取り組むに当たって、やはりどのような制約があり、一方でどういう可能性、また国益上の意義があるか、どうお考えになられているかについて御説明をお願いします。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) ありがとうございました。  復興に関する日本の役割というような非常に重要な御指摘をありがとうございます。  日本は、このウクライナの問題については、報告でも申し上げましたように、ルールに基づく秩序を権威主義的な体制が脅かすという、こういう問題意識で、インド太平洋でもヨーロッパでも同じであると、このスタンスはずっと大事だと思うんですね。  その立場から支援というのも大事なんですが、しかし、内政上の理由から武器支援というのは行っておりません。したがって、人道支援とそれから財政支援が中心になるわけなんですけれども、実は、現在、日本政府が公約している財政支援とそれから人道支援合わせると、世界第六位なんですね。結構高い位置におりまして、アメリカが圧倒的に第一位ですけど、次がドイツ、それからポーランド、そしてイギリス、オランダ、その次が日本というふうになっていて、これはほかの国は軍事支援も入れた額なんですよ。日本は軍事支援一切入っていなくても第六位ということで、かなり多額な約束をしていると。これは、ここに日本のその決意というのは表れていると思います。  具体的には、やはり復興支援、これ例えば地雷除去みたいな、日本がかつてカンボジアでやったような、そういう得意技を生かすというのもありますし、一般的な人道支援というのもありますでしょう。それから、もちろん財政支援もやっていくわけですけれども、どうなんでしょう、停戦が成立し、それが、例えば国連安保理決議の下で停戦が成立した場合には、この停戦の監視にも何らかの役割を果たすべきなのではないか、ここは考えどころではないかと思います。  というのは、武器支援はしないけれども、停戦監視という体制は、これ、ウクライナは非常に大きな国ですので簡単にはできないわけですよね。例えば、ボスニア紛争のときの停戦監視は、NATOが全部合わせて五万人ぐらいで行いました。ウクライナはその人口が十倍以上ですから、したがって五十万人ぐらい必要ではないかというふうなことも言われています。  また、その加盟国、NATO加盟国の中にはロシア側が拒否するような国も出てきてしまうので、停戦監視体制をつくるのは意外と苦労するのではないかと思いますけれども、そのときに、例えば、部隊派遣はちょっと難しいかもしれませんけど、日本も停戦監視に何らかの幹部が役割を果たすとか、そういう協力もあり得るんではないかと。それがお金だけではなくて人もという日本のこれからの支援の在り方に合致するのであれば、そういう方向性というのも検討して、検討すべきじゃないのかなというふうに思います。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) ありがとうございます。  まず、停戦が成立しない可能性を考えてみたいんですよね。米ロがもうそういうことで決めてしまって、トランプがウクライナに対してもう諦めよと引導を渡すというときに、もうやむを得ないなとなる可能性が半分ぐらいあるとして、もう半分ぐらいそれでも抵抗を続けるという可能性は私はあると思っています。  EUその他の国々の援助でやれる形で抵抗を継続するというふうに政治指導部が決定した場合、もしも私がウクライナ軍の参謀総長だったら、それなりの方法は考えると思うんですよ。例えば、これから先一年掛けてドネツク州の残りは明け渡しながら後退していくつもりだったけれども、じゃ、これをドニプロまで防衛線を後退させて抵抗を継続すると。あと二年ぐらいやればロシアもさすがに継戦能力が限界になるというふうに見られているので、そこまで粘るんだとかという可能性はあると思うんですね。  そのときに、やっぱり私はまず日本ができるだろうと思うのは、アメリカがもはや民生援助さえ削り始めているという中で、人間の命とか社会の活動を守るための支援というのは、じゃ、そこで日本がある程度面倒見るからということは言えるんじゃないかというのが第一点です。  もう一個は、ここのレジュメの一番最後のところに書いているんですけど、建機を送ってあげたらいいんじゃないかというふうに思っています。  今、日本からもすごくたくさんJICAが建機を供与していて、これは大変にウクライナで感謝されているんですけれども、現場の話聞くと、やっぱり、日本からJICAの枠で送られてくる限りにおいては、軍事転用しないんですよねという念を押されてやっぱり送られてくるというわけですよね。でも、今ウクライナ軍が前線で必要としているのは要塞を掘る能力なんですよ。ロシア軍はやはりこの要塞を掘る工兵能力が極めて高い軍隊なので、二〇二三年にウクライナ軍の反転攻勢を真っ正面で受け止めたわけですね。ウクライナ軍の場合はここまでの工兵能力がないので、やはり、しかも兵力も足りない、火力も足りないという中で、どうしたってロシア軍に対してじわじわと後退を余儀なくされている。ウクライナ軍にもっと大きな工兵能力を与えることができれば、非殺傷で、なおかつ現在の戦線をなるべくもたせるという非常に戦略的インパクトの大きな支援になると私は思っています。なので、これを是非考えたらいいんじゃないかと。  戦後の復興については、もう本当に広瀬先生が今おっしゃったとおりだと思っています。あと、産業振興というのは、これ、実際食べていける方法を考えるとか、これはもうそれぞれの分野の専門家の方からいろんな有益な援助があると思うんですけど、私が、やはり戦後、戦闘が終わった後にでもいいから、ウクライナに対しては軍事援助をすべきだと思っています。それは、この戦争だけで終わらない可能性が高いからですね。ウクライナに対してどのぐらいキャパシティービルディングができるかによって、次のロシアの侵略のコスト計算を変えることができると。紛争当事国ではないということになってからでもいいから、やれることをやるべきだと思います。  最近、私に面会したあるウクライナ人の有識者が、自分でリスト持ってきたんですよ。これとこれとこれあるだろうと、これもうウクライナ軍で運用していて訓練なしで使えるからくれとまで言ってくるわけですね。申し訳ないけどそれはできないと言うんですけれども、戦闘が終わった後にそれを是非検討すべきだと思います。

高橋光男 公明党

○高橋光男君 ありがとうございました。  まさに日本としても、JICA等を通じた民生支援ですね、それをやる前提として、例えばウクライナ政府が、今汚職の問題等であったり、ガバナンスの問題もありますので、その辺も注視してやっていかなければならないのかなとも……(発言する者あり)ありがとうございます。  最後に、酒井参考人にお伺いします。  今、貴重な国際法の観点からの御指摘をいただきました。私は、トランプ大統領によるこうした関与も第三国の関与でありますから、そこが、紛争当事国で直接的でない、このロシアとの間でそうした合意なりをして、果たして法的に正当化されるのかということに対しては疑問を持っています。ただ、どのような結果になるにしても、やはりこれ国際法から冷徹に見て、しっかりとした対応を国際社会でやっていかなければならないというふうに思います。  例えば、戦争責任等についても、結構、この米ロの交渉等では全くそういうことが整理されるのか分かりませんし、私、大変懸念しているのは、今このP5のうちP2の米ロがこういうことを、ルールに基づかない和平を結ぼうというか、停戦して和平ということをやろうとしている、こうした影響というのは、例えば途上国ですね、そうした、アフリカとか、今でも平和と安定という意味では非常に脆弱な国々がある中で、やっぱりこうしたやり方自体が何か非常にネガティブな影響といいますか、逆にそうした独裁国家等に対して正当性を与えるというか、やっぱりそういうところを懸念していますけれども、この点についてどのようにお考えになられるかについて教えていただければと思います。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  今お話あったように、例えば、冷戦後、アフリカで各地で内戦が起きて、その中で和平が実現されていくときに、指導者に対する免責というものがその和平の中に盛り込まれるというようなことも実際にはあったと承知しています。これに対して国連が反対をするということも流れとしてはあったわけですね。ですから、時間軸を手前に持ってくれば、こういった和平と引換えに指導者の責任を免責するというようなことは避けるべきだという流れはできているんだろうというふうには思うんですね。したがって、ICC、現代でいえばICCが、その大統領など政治指導者に対する逮捕状を発出するというのもその延長線上にあると。その意味で、この流れは大事にしていかなきゃいけないだろうというふうには思います。  要するに、その交渉の中で、あるいは和平の合意の中で、どの程度までその部分というのが関係者に認識されているのかというところに懸かっているんだろうというふうには思いますが、今のところ、その辺は非常に不十分なところが大きいのではないかというふうに個人的には思っています。

高橋光男 公明党

○高橋光男君 終わります。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) それでは、梅村みずほ君。

梅村みずほ 日本維新の会

○梅村みずほ君 日本維新の会の梅村みずほと申します。  三人の参考人の先生方、本日は本当にありがとうございます。ロシア、ウクライナの状況の再現が日台でも起こり得るというような日本的な見方ができる、そしてまた、一方で、今、間もなく三年を迎えようとしているこのウクライナ戦争に対して私たちが何ができるのかという、この二点を非常に強く考えさせられた時間でした。  その中で、まずは広瀬参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、我々も、安全保障を考えるとアジア版NATOという考え方はあってもいいという議論と、そもそもこの核を持っている国がないアジアでどのように、どういった枠組みでという議論がありまして、そう考えると、今あるNATOに名前を変えてアジア側が入っていくということも取り得る手の一つではないかというような論というのもあるかと思います。  先生のお話を聞いていると、このアジア版NATOというものは検討に値する案だというふうに受け止めたわけなんですけれども、先生がどのようにイメージをされているか、あるいはこの今あるNATOにアジアも入っていくという考えについてどのように思われているか、お聞かせください。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) 非常に面白い、興味深いテーマなんですけれども、まず、NATOというのはこれは地域同盟でして、条約上にもう欧州大西洋って書いてありますから、もし本当にアジアの国が入るとなれば、当然、条約改正が必要になってきます。  ただ、例えばナイン・イレブンがあった頃とか、先ほど申し上げましたように、NATOによる平和、つまり集団防衛だけじゃなくて、危機管理や協調的安全保障というふうに幅を広げた時代に、ブッシュ政権ですね、ブッシュ政権においてグローバルNATOということが構想された時代があって、もうアメリカとか、ごめんなさい、日本とかオーストラリア入れればいいじゃないかと。入れて、それでいろんなテロ戦にも貢献してもらうという、そういう考え方もありだろうという柔軟な考え方が提唱された時期もあります。  しかし、それは結果的には、今日のロシア・ウクライナ戦争を見れば明らかですけれども、やっぱりヨーロッパにより大きな現実的な目の前にある脅威がある以上、アジアに関わっている暇はないという形で、一旦はこれは小さくなっていったんですが、それがまた今、やっぱり、でも中国の問題もあるよねと、北朝鮮の問題もあるので、アジア、インド太平洋との関連で重要だよということで出てきています。  言ってみれば、グローバルNATOというのはバージョンワンなんですけど、今問題になっているアジア版NATO、あるいはアジア版安全保障協力というのは、そのグローバルNATOのような直接入るんではなくて、NATOという地域同盟と、それからインド太平洋において何らかのグループをつくって、そことが有機的に様々な分野で協力をし、協力の分野を拡大し、そして深化するという、そういう方向性の方が現実的ではないかというのが私の最後の趣旨で、それが例えば、今NATOと日本の間で行われている日・NATO協力、これがその一つの大きな柱だと思いますが、その中に具体的に、IP4という形で、インド・パシフィック4という形で個別的協力というのを去年から始めていて、四年計画で今やっているんですけど、二十六もの分野で協力することになっていて、こういう実務協力をまずしていって、そして多国間協力のマナーを日本も学んで、かつ、何か分からないけどNATOという多機能同盟という協力をしていることがその周辺国にとってはやや不安になりますよね。それが抑止力にもつながりますし、逆に仲間を呼んでいく、そういうポイントにもなると思うんです。結節点にもなると思うんです。  今のところ、入っているのは韓国、オーストラリア、ニュージーランドですけど、もしかしたら、フィリピンとかインドネシアとかも将来そういう枠組みに入ってくるかもしれませんし、余り集団防衛の色を出し過ぎると多分誰も入ってこないので、だから看板はなるべく広めにして、そして実務協力を中心に始めて、そしてそれをやりながら少しずつその経験を基に協力関係の拡大と深化を行うと、こういうイメージが私のアジア版NATOというか、グローバルNATO二・〇というイメージだというふうに御理解いただければと思います。

梅村みずほ 日本維新の会

○梅村みずほ君 ありがとうございます。  仲間を探すというのはとても重要だと思っていまして、アジアと一言に言っても中国からインフラ整備で恩恵を受けている国々もあれば、様々な温度差というのがありますので、引き続き私も考えてまいりたいと思います。ありがとうございます。  続いて、小泉参考人にお伺いしたく思います。  対ウクライナ政策についての提言という最終ページを読ませていただきまして、そこに民生援助の継続という項目、三ポツ目に同時に汚職・不正対策を徹底するというところがございます。この長期にわたる戦禍の原因は、やはりヨーロッパ側がずずいともう一歩前に出てこれなかった、これは何だろうと考える必要があると思うんです。そのときにこの汚職や不正というものを除いて語ることはできないと思っているのですが、この一行に書かれた意味、日本がこの汚職・不正対策にどのように貢献できるのかというところ、お考えを一端をお示しいただければと思います。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) ありがとうございます。  まず、ヨーロッパが前に出てこられなかった大きな理由は、やはり汚職というよりは核だと思うんですね。ウクライナに深刻な汚職であったりとか二重経済があったりとかということはみんな知っているわけですよ、旧ソ連の国々にみんな共通する宿痾で、その中でウクライナはまだましな方というか、EUに入らなきゃいけないので改善しようとしている方なわけですよね。  あとは、もう一個言うと、汚職である腐敗であるといっても、じゃ、ジャベリンを渡したらそれがどこかの国に横流しされちゃうとか、そういうレベルの腐敗ではないので、NATOが出ていけなかった理由は、やはり出ていった場合、ロシアと核エスカレーションが発生するかもしれないという、ほぼこの点に尽きるというのが私の考えです。これはちょっと後々歴史的に実証されるとまた別の見方が出てくるかもしれませんけど、恐らく現状そうだろうと。  ただ、他方で、やっぱり汚職はあるんですよね。この戦争中、国防大臣が替わっているわけですけど、これもやはり、本人が汚職したわけじゃないんだけど、本当にひどい汚職問題が国防省の中で、戦争をやっている国防省の中でも汚職をしているし、それから、現地の前線から聞こえてくる話を聞いても、やっぱりかなりウクライナ軍の将校たちもロシア軍に負けず劣らずなかなか腐敗したやつ多いわけですよね。  だから、何でもかんでもただあげますよというと、それはやはりウクライナの腐敗経済の中にのみ込まれていってしまう可能性があって、それはその支援の有効性も下げることになるし、結局、そのウクライナにおけるせっかく改善の傾向が見られるその腐敗に燃料を注いじゃうことになっちゃ意味がないわけですよね。そこのところはしっかりやらなきゃいけないでしょうと。  そこについて、ただ、日本からの援助であるにしてもEUからの援助であるにしても、それはもう分かっているので、これまでもみんないろんな汚職対策とのセットという形でしか援助は必ずやっていないはずなんです。これ、日本からの援助もそのはずなんですよね。だから、これは引き続きしっかりやればいいだろうというのが私の考えです。

梅村みずほ 日本維新の会

○梅村みずほ君 ありがとうございます。  最後に、酒井参考人にお伺いしたいと思います。ありがとうございます。  小泉参考人もジャングルのおきてを許すのかというような言葉が資料の中にありましたけれども、この普遍的価値というものが崩れようとしているところを何とか食い止めなくてはいけないというふうに思っております。  その中で、やはり、トランプさんが少々力業でもこの戦争を終わらせてくれるならというふうに引っ張られないことが非常に大事であり、やはり酒井参考人もおっしゃったように、きっかけはどうであれ、してしまったことに対してICJやICCというものを使って適正な裁きが行われるということが非常に重要であろうとも思っております。  一方で、この国連の安保理の常任理事国のうちの二つがこの国際的な安定、この安全保障環境を困難にしているというところから、この国連に対しての見方も大変厳しいものがある。その上で、国連憲章が守られていないというところに関してどのようにお思いか、お聞かせいただければと思います。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  一番危機的な問題というのは、今おっしゃっていただいたように、大国が本来守るべき価値であったり手段であったりする国連とその目的というものがないがしろにされやすくなっているという状況だと思います。これを止めるというのはなかなか外在的には難しい問題だろうというふうに思いますし、先ほども申し上げたように、主権国家というのはどうしても自国の国益を中心に考えていかざるを得ないところがありますから、その国益にのっとった形でのその国連の利用だとか、あるいは国連の目的の主張だとかということにならざるを得ない。それに国益が反するということであれば、大国ほどやはりそれを軽視するということが現実の世界だろうというふうに思います。  それに対する処方箋というのは、実は国際法は持ち合わせてはいません。なぜなら、これも報告の中で申し上げたように、国際法を作るのも、そしてそれを実施するのも主権国家が第一義的に出てくるものであって、その主権国家自体の認識を変えない限りは国際法というものに過度な期待をしてはいけないということにはなるんだろうと思います。国連が通常どおりの機能を果たすためには、やはり大国間の協調というのは欠かせない、そういうシステムになっているものですから、どうしてもそちらの方に持っていくということが現在においては現実的な課題かなというふうには思っています。

梅村みずほ 日本維新の会

○梅村みずほ君 ありがとうございました。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) それでは、浜口誠君。

浜口誠 国民民主党・新緑風会

○浜口誠君 国民民主党・新緑風会の浜口誠です。  今日は、三名の参考人の皆さん、それぞれの専門分野から大変示唆に富んだ今日はお話をいただきまして、大変ありがとうございます。  私から、まず最初に広瀬参考人にお伺いしたいと思います。  今ウクライナの戦争が行われておりますが、この戦争を踏まえた上で、日本として安全保障の観点からどういうことを学んで今後に対して備えていくべきか、この観点で広瀬参考人から御意見がありましたらお伺いをさせていただきたいと思います。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) これは報告でも少し申し上げましたけど、いかにその国際法違反であれ、日頃何も準備していない国には誰も助けてくれないという非常にシンプルな教訓で、みんなが助けようと思うのは、やっぱりその国がそれぞれいろんなところに協力をしたり、コストとリスクを掛けて協力したからこそ周りの国も、じゃ、自分たちも協力しようよということになるわけで、日本は冷戦後に、湾岸戦争のときにお金しか出さないじゃないかというかなり批判を受けて、お金しか出さない国に人や物を出すかという、こういうトラウマみたいなのがあったと思うんですね。  それは、例えばカンボジアに陸上自衛隊が行ったりしたことによって部分的には解消されていますけれども、まだなかなかそういう理解には必ずしもなっていないと思いまして、例えば、NATO加盟国、全てのNATO加盟国が参加したアフガニスタン、二〇〇三年から二〇二一年まで続けていましたアフガニスタンのミッションですけど、日本も参加する機会はあったと思うんですけれども、調査団も派遣して、例えば、CH47のような陸上輸送のヘリコプターを派遣するとか医師団を派遣するとかといったような話はありましたけれども、結局、いろいろと議論した結果、やはりリスクが高いという割と国内向けの理由で、普通はリスクが高いから軍隊を出すんですけれども、日本の場合はリスクが高いから自衛隊はやめておこうというふうになるんですね。  それで、出せないということで、アフガニスタン、特に私も印象的なのは、二〇〇七年ですか、防衛省、防衛庁が防衛省になって、そして元安倍総理がこれからは日本は防衛省になって世界の安全保障に貢献するんだという演説をNATOの理事会で行ったんですけれども、そのときは、だから、当時のNATOの方々に聞いてみると、あっ、アフガニスタンに日本も貢献してくれるんだと思ったそうなんですけれども、やっぱりそういういろんな検討した結果、日本は何もしませんでした。外務省が一部その草の根援助から資金を出しましたけれども、人の援助はほとんどしていませんので、そういった国であることは今までも変わってないわけです。  ですから、その意味で、日本にとっての教訓は、やっぱりウクライナを見れば、ああいう前世紀的な戦争はいまだに起こるので、それに対してやっぱりお金だけではこれは日本の生き方としてはまずいのではないか、それが東アジアで何か起きたときのことを考えたときの大きな教訓ではないかというふうに思います。

浜口誠 国民民主党・新緑風会

○浜口誠君 ありがとうございます。  まさに、日頃からの他国との連携、それもお金の面だけではなくて人材交流も含めてやっていく必要があるということだと思いますので、しっかり受け止めていきたいと思います。ありがとうございます。  続きまして、小泉参考人にお伺いしますが、ロシアが、先ほどの御報告、御説明の中にも、年間で一千万発の火力を使っていると、戦車もかなりの戦車がもう既に使用されているというと、相当ないわゆる軍事費がこのウクライナ戦争に投入されているというふうに思いますが、その財源はどこから出てきているのか、また、戦争が長引くことによって、ロシア国民の皆さんの暮らし、経済にどのような影響が出てきているのか、この観点で是非解説をいただければと思います。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) 承知しました。  ロシアの軍事費、やはり戦時下なので毎年どんどん増えていまして、今年一月一日から始まった二〇二五年度予算に関しましては、国防費が補正前で十三兆五千億ルーブルになっています。大体ロシアの平時の国防費って年間三兆五千億ルーブルから三兆八千億ルーブルぐらいなので、平時の四倍ですね。GDPの六・三%というふうに予算計画ではなっています。対連邦予算比で三二・五%です。  だから、かなり軍事負担が重くなっていることは間違いなくて、財政赤字も出ているのは出ているんですけど、やっぱりそのお尋ねの財源ですよね、オイルが売れてしまっていると。西側も完全にロシアのガスやオイルを遮断することはできてないので、現状はそのバレル六十ドル以上で売ろうとしたら、そのタンカーにロイズが保険を付与しないので、そういう形の制裁なんですよね。でも、結局ロシアはそうすると、いわゆる影の船団という、この無保険船団を組織して、もう無保険でもいいから突っ走って売りに行くんだといってインドなんかに売りに行っちゃうということで、財源が断てていないわけですね。  それからもう一個は、物理的な問題として、今ヨーロッパの国々は今すぐロシアの天然ガス供給から切り離されたら凍えて死んじゃうという問題があって、かなりロシアにエネルギー依存していたということのツケがかなり返ってきている部分があると思うんですよ。だから、エネルギー安全保障というのも、どこからでも買ってくればいいというわけではなくて、サプライヤーがどこなのかということをかなり計算に入れないと、そのエネルギー安全保障が軍事安全保障の方に跳ね返ってしまうというようなことがあるというのが私は一個この戦争の教訓ではないかというふうに思っています。  なので、多少財政赤字も出ているんですけど、対GDP比一・何%とかの赤字出ているんですけど、基本的に財政回っています。  それから、この戦争が始まってから三回連邦予算が作られたわけですね。それまでのこの三回の、二回の、二回のロシア財務省の説明というのは、来年度に関しては戦時下なんで国防費はがんと増えますと、でも翌年には下がって、翌々年には平時の水準に戻りますという説明をロシアの財務省はずっと繰り返してきたんですね。  ところが、今年度分の予算を作るとき、去年の秋の段階にロシア財務省が出してきた予算注解というのは、来年がんと増えますと、で、再来年もその次も同水準ですと言っているんですね。つまり、初めて、この戦争がずっと長引いて、その間、平時の四倍だか三倍だかって国防費を出し続けますということを国防省も言い始めたと。又は、このレジュメの中にもロシア軍の大軍拡計画のことを参考というふうに書いていますけど、これだけ兵力を増やすので、戦争が終わってもロシア軍は恐らくでっかいままなんですよね。そのことも込みで、国防費は今後とも長期的に出続けるということを財務省もとうとう認めざるを得なくなったということだと思います。  制裁も食らっていますし、軍事負担も重いんですけど、少なくとも今に関しては戦時景気で、景気はいいんですよね。二〇二三年が三・六パー成長で、去年に関してはIMF推定で四・一%成長したというふうに見られていて、むしろ軍需産業バブルみたくなっちゃっていると。それから、国民一般の暮らしも、私もちょっとしばらく現地に行けていませんけど、話なんか聞いていると、国民一般の生活はむしろ割と何か変な多幸感があるんですよね。インフレにもなっているんだけど、やっぱりその実質賃金の伸び率がインフレを上回っているんですよ。本当に実質で実入りが増えてしまっていると。余計ロシア人一般が戦争をやめるというインセンティブを持てないと思います。  ただ、やはり、多くの人が言っているように、これ今戦時景気だからいいけれども、戦争終わったらどうするんだということですよね。あるいは、じゃ、この戦争終わってもこの規模の国防支出出し続けるんだといったら、それはもう財政赤字がとんでもない形でつり上がっていってソ連の二の舞になっちゃうわけで、なかなか余り現実的ではない、持続的じゃないんじゃないかとは思いますが、少なくとも今この瞬間においてはロシア人は割にハッピーです。

浜口誠 国民民主党・新緑風会

○浜口誠君 ありがとうございます。  では、最後に、酒井参考人にお伺いしたいと思います。  今、国際社会の課題に対して、やっぱり大国がその課題をもう解決していくというような環境に、トランプさんがいろんな面で動き出しているというのもあって、そういった中で、本当、国際法が機能するのかと。もう大国のルールで世の中、世界が動いていくような、そういう方向に行ってしまう中で国際法を機能させるために何が必要かという観点で先生の方から御意見いただければと思います。よろしくお願いします。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  簡単に出る答えではないんですけれども、やはりこれは迂遠な形であってもその内容の正しい国際法規則を作り上げていく努力をしなきゃいけないということだろうと思うんです。  その正当性というものをどこから調達するかという問題はもちろんありますけれども、これは主権国家の同意だというふうに言う場合もありますし、それから国際社会全体の価値だと言う人もいますし、様々なところに正当性を求めなければいけないと思いますが、いずれにしても、とりわけ日本にとってみれば、大国ではない状況を前提とすれば、その正しい国際法というのは何かというのを追求していくということが最終的に国際法を実際に機能させていく、回り道ではあるけれども正しいやり方なのかなというふうには思っています。

浜口誠 国民民主党・新緑風会

○浜口誠君 以上で終わります。ありがとうございます。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) それでは、岩渕友君。

岩渕友 日本共産党

○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。  今日は、参考人の皆様、本当にありがとうございます。  ロシアによるウクライナ侵略から間もなく三年、情勢が大きく動いています。  日本共産党は、この侵略を終わらせるために、国際社会に和平協議に道を開くあらゆる努力を求めてきました。その和平は、国連憲章、国際法、そしてロシアによる侵略を非難し即時撤退を求める国連総会決議に基づく公正な和平であるべきだということ、その実現という目的を曖昧にしてはならないということを重ねて強調をしてきました。  こうした下で、先日の日米首脳会談の共同声明ではロシアのウクライナ侵略について言及がなかったと。昨年四月のバイデン大統領と岸田当時の首相の共同声明では、残酷な侵略戦争だというふうに非難をして、断固とした反対というものを表明していました。日本政府の姿勢が問われているというふうにも考えています。  それで、初めに、酒井参考人に伺います。  事前にいただいていた資料で参考人が、国際法にのっとった、忍耐強く非難を続けることが重要だというふうに書いてあるものがあったんですね。その大国による侵略行為に対して、国連憲章、国際法、国連決議などに基づく解決を国際社会が連帯して取り組んでいく、このことの重要性について参考人の考えを教えていただけますでしょうか。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) 御質問ありがとうございます。  その点はまさにおっしゃるとおりというか、国際法というものを動かしていくその国際社会の構成員がきちんとしたルールに従って行動していくということを常に想起させるということが重要だというふうに思っています。  国際法というのはよく破られるということが言われますし、実際それが多いわけですけれども、破られるときに非常に注目されるので国際法は常に破られているような印象を受けますけれども、実際には国際社会を動かしていくルールというのはそれほど破られているわけではない。しかし、究極的な状況において、やはり安全保障の面で破られる場合というのはどうしても今回のようにある。  しかし、それをそのままにしておくのではなくて、原則に立ち戻って、やはりこれはルールに反することだということを常に言い続けておくと。で、それをどこの場で言い続けるのかということがやはり重要であって、しかも、常に長いことこれを言い続けるということもやはり重要だろうというふうには思っています。  その意味で、国連というのはまさに重要なフォーラムでありますし、それから二国間なりほかの多数国間のフォーラムというものをできるだけ駆使して国際法の原則を強調していくということは決して無駄ではないというふうに思っています。

岩渕友 日本共産党

○岩渕友君 ありがとうございます。  次に、三人の参考人に同じことをお聞きしたいんですけれども、先ほどのお話で、広瀬参考人から、犠牲者が死者、負傷者合わせて百万人を突破したというふうにありました。非常に甚大な犠牲、被害になっていると思うんですね。  実は、昨年、海外への派遣でチェコに行ったときに、ウクライナから避難をしている子供たちなどの支援をしているユニセフの施設を視察したんです。そのときに、避難してきたときの経験であるとか、子供たちから、ウクライナにいたときはもうサイレンが頻繁に鳴って、本当に落ち着かなくて、いろいろ考えて眠ることもできないような状況だったと、でもここでは本当によく眠れるんだというような話なんかも聞いて、やっぱりこの侵略が子供たちにとってどれだけの被害をもたらしているのかという、その現実をすごく突き付けられたなというふうに思うんですね。  一刻も早い停戦、必要だというふうに思うんですけれども、ウクライナが参加をしない交渉はあり得ないというような批判の声も上がっています。当事者の頭越しの交渉はあり得ないのかなというふうに考えるんですけれども、参考人の考えを伺いたいというのが一つと、あと、公正な和平の実現、重要だと思うんですけれども、そのためにどんなことが必要でしょうか。それぞれのお考えをお聞かせください。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) 広瀬参考人からですね。

岩渕友 日本共産党

○岩渕友君 はい、広瀬参考人から順番にお願いします。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) この難民の問題も非常に大きな問題で、今御指摘になったチェコだけではなくて、ドイツとかポーランドはそれこそ百万人以上の難民を受け入れています。  その心を痛めるというのは非常に分かるんですけど、でも、少し冷徹なことを申し上げますと、難民に対する周辺国の感情は去年ぐらいから変わってきています。それはどういうことかというと、最初の一年目には、その難民は非常に同情すべきであり、もうあらゆることをしていきたいというふうな雰囲気で、世論調査やっても難民に対する支持率は非常に高かったんですけれども、去年の秋ぐらいから下がっています。やはりそろそろ、もうその難民のためのコストが、結局、本来国民の社会福祉に与えられるものであったはずだという意識から難民の施策に対する反発が起きていますし、実際ヨーロッパで御承知のようにポピュリズムが盛り上がっている、そのポピュリズムの一要因には、そうした排外主義的な、つまり難民も含めて、こんな問題は早く解決してもらいたいし、だから、その意味ではさっさと停戦してほしいというような、そういう世論につながっていくのかなと思いますけれども、そういうその流れというのもあるのも事実なんですね。  この公正な和平というものを進めるために重要なことは、今はそういう被害が大きくなっていて、これが、要するに国際社会がそれを認容できるかどうかという問題が大きいと思うんです。もし認容できるんだったら、いつまでも戦って、そして正義を目指せばいいわけですよ。でも、実際には、今申し上げましたように、最も身近な国で、本来ウクライナを応援している国までもが世論調査にするとやっぱり変化が起きていると。やっぱり潮目というのがあるわけですね。  それで、その人道支援にしても何にしてもやっぱりコストが掛かりますから、その周辺の、ウクライナ周辺の国ですら少しずつやっぱりちょっと態度に変化が生じている状態ですから、そうしますと、公正さを追求、一〇〇%追求するというだけでは解決にならないという雰囲気があって、それが例えば今回のトランプさんの、手法はともかく、停戦を求めるという声を言わば押し上げているんではないかなというふうに思います。その手法には、先ほど申し上げましたような大国主義的な、パワーポリティクスのような手法というのが目立っていて、それはそれでいろいろ問題はあるかもしれませんけど、でも、これが停戦ができれば、それは、今はそれが一番重要ではないかという流れというのがあります。  ウクライナの関与ですけれども、これはウクライナが関与しなければ解決しないと、私もそう思いますが、最初の枠組みにはもうウクライナは多分入ってこないと思いますので、恐らく米ロでつくった枠組みをウクライナに半ば強要するというスタイルになるんではないかと思います。歴史的にはそういう例は幾らでもあります。先ほど言いました第二次世界大戦の後にも、東ヨーロッパのほとんどの国は自らが関与しないところで運命が決められていくわけですし、あるいは一九三八年のチェコはヒトラーとそれからフランス、イタリアなどによって運命を決められてしまいました。  僅かな例外は、実はさっき申し上げたフィンランドなんですね。フィンランドは、完全にスターリンの支配の下でなされたわけではなく、フィンランドなりのステーツマンシップを生かして、非常に狭い自主的中立という道を選んで、その結果、政治的には部分的に屈辱的だったかもしれないし、領土も割譲したけれども、でも、生き延びるのに成功したし、幸福度、今世界で幸福度ナンバーワンかツーですよね、フィンランドって。そういう国になったという、そういう例もあるので、ここが難しいところで、やっぱり我々が認容できる犠牲というのは人道的にもそれは限りがあるわけですから、停戦の時期というのは近いと思います。  その停戦が今トランプさんがやっているような手法しかないとすれば、ヨーロッパがそれに代わるもっと公正な代案が出せないとすれば、少なくとも当面トランプさんの手法に一定の期待をするというのは決して不誠実ではないと思います。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) 確かに、一つの冷徹なリアリズムとしてそういうことになってしまうというところもあると思いますが、さっき申し上げたように、ウクライナには受け入れないという選択肢もあるんですよね。アメリカから支援が来ない状態で抵抗を継続するということは、言われたらそういう戦略を作ると思います、ウクライナ軍は。  なので、仮にウクライナが、そのトランプのつくろうとしている平和、これは私は平和というよりウクライナへの降伏の強制だと思いますけど、ウクライナに対する降伏の強制にウクライナ自身が同意したんだったらしようがないと思いますけれども、そうでない場合というのは、やはり依然として戦場の中の現実がテーブルの上の議論に影響するというこれまで続いてきた光景がまた続くんだろうなと、それがウクライナ軍が著しく不利な形で継続していくんだろうなというふうに思っています。  今起きているのは、これまでは戦場の中の現実がテーブルの上に反映されていたのが、初めてテーブルの上から戦場の現実に影響を及ぼそうとしているわけですけれども、所詮テーブルの上のことなので、余りにもやはり当事者の意向を無視し過ぎれば、これは結局乗ってこないんじゃないかなという気もしますし、もう一個は、やはり、これがそういうリアリズムなのだという議論、本当に確かにそのとおりなんですよね。  他方で、トランプ政権は、インド太平洋は非常に重視しているから、ウクライナを早く終わらせてこっちに抑止リソースを持ってくるんだというのは全くもってそのとおりだと思うんですけど、思うんですけど、今はだから我々はたまたまアメリカが重視している側の正面に住んでいるにすぎないということでもあるんですよね。アメリカの政権がほんのちょっと、じゃ、気まぐれになったら、今度は我々がウクライナの立場に立つのかもしれないとかということを考えると、やはり根本的にどこかの大国に依存した安全保障というものに矛盾があるんじゃないかという感じも私はこの戦争の中で強く思うようになりました。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) では、酒井参考人ですが、恐縮ですが、時間の関係もございますので、簡潔によろしくお願いします。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。じゃ、簡潔に。  国際法の立場からすると、公正さというのは、まさにその違法な武力行使によって得られた果実というのはこれは無効だということにならざるを得ないと思います。  それから、ウクライナ市民、あるいは人民の意思を無視した形での和平合意というのは、あるいは停戦合意というのは、これもまた、自決権の否定というところまで言うかどうかはともかくとして、やはり真正な意思というものをないがしろにするものだというふうに言わざるを得ないというふうに思ってはいます。

岩渕友 日本共産党

○岩渕友君 ありがとうございました。  以上で終わります。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) それでは、伊波洋一君。

伊波洋一 沖縄の風

○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一でございます。  今日、御三名の参考人の皆さんのお話、本当に聞かせていただいてありがとうございます。  最初に広瀬参考人にお話をお聞きしたいと思います。  ただいま答えを聞いてしまったような感じがするんですけど、私、このウクライナの戦争始まって、何回かここの委員会かあるいは別の委員会かでウクライナの方も来ての参考人質疑等もありましたが、やはりウクライナの立場としては絶対に停戦はできないという言いぶりだったんですね。いずれにせよ、ロシアはあれだけ強いから、最終的に全部占領しなければ終わらないだろうと。私はそのときから、とにかく早めに停戦することが一番大事ではないかと、こう思っております。  私は沖縄の選出なんですけれども、私の地域も含めて、宜野湾市から南部の方はおよそ地域の中では三分の一の家庭が一家全滅なんですよね。そういうところがあると。それで、その後、戦後二十七年間も米軍統治で、今日、五十年以上たっても数多くの米軍基地が残っている、そういう現実が続くわけですよね。  そういう意味では、沖縄の人たちに聞いたら、戦争は駄目だと、とにかく戦争自体があってはいけないという、そういう思いがとても強いです。ですから、今回、トランプ大統領とプーチン大統領の合意ができて停戦ができるなら、一日も早く停戦をするべきだと、こういう立場でずっとおります。  そういう意味で、この間戦争を継続したのは、ゼレンスキー大統領の意思もあるけれども、もちろんウクライナの国民の意思もあるだろうと思いますし、何よりも、その戦争を続けさせる支援、これがやはり大きな力だったんだろうと思いますが、これがどうなるかは分からないです。いずれにせよ、今日、お話を聞きながら、やっぱり戦争の停戦のありようをめぐる問題では、細かく議論されて、説明していただきましたし、今、先ほどの委員の質疑に対しても、やはりいろんな問題あるけれども、まず停戦が最初ではないかということについては、私もそういう思いなんですね。  そういうときに、やはり実際のステップとしてどういうことが、先ほどもお話聞いたんですけど、どのくらいのスピード感ででき上がっていくとお考えでしょうか。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) 広瀬参考人からでよろしいですか。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) 今、非常にそれは難しい問題なんですけれども、トランプさん自身も気まぐれなところがあって、大統領選挙中は二十四時間と言っていましたよね、二十四時間で解決すると。ところが、大統領就任前の日でしたかね、ホワイトハウスの記者会見で、まあ六か月ぐらいじゃないかということを言っていました。ところが、ここのところ、何かいろんな会議でいろんな側近が発言をして気を強くしたのか、昨日か何かのニュースでは復活祭までという、四月ですよね、復活祭までに解決したい。  この辺が非常にぶれがあるので、正確なところは分かりませんし、恐らく本人にも分かっていないと思うんですけれども、それはなぜかというと、やっぱり制度的なプロセスで解決をしようとは余り思っていなくて、やっぱりディールですから、相手の出方次第で変えていくんだろうなと。しかし、先ほど小泉先生もおっしゃったように、かなりロシア側に譲歩する気はあるんだろうと思うんです。だから、停戦の見込みは高いと思っているだろうし、あとは会って、そしてお互いにウィン・ウィンで、少なくとも表面的にはウィン・ウィンに見えるようなものをこしらえて、そして解決すると、そういうふうに考えているので、長くても半年。彼の任期は四年間ですけど、ほかにやりたいこともいろいろあるみたいなので、四年、長くても六か月ですね、六か月以内という、そういうタイミングなんではないかなと思います。  あと、一点だけ、済みません、ちょっと付け足したいんですけど、さっき、ゼレンスキーの頭越しでということで、それはなかなか本当は難しいんですけれども、でもそうなるんじゃないかということについて言えば、ウクライナが今その世論が変わってきているというのもあるんですよ。つまり、最初の一、二年は、絶対に譲歩しないと、領土は全て諦めないと、最後まで戦うというのが圧倒的に多かったわけですけど、ここ半年ぐらいの世論調査では、もうやめたいと、もう譲歩、領土的に譲歩してでも停戦したいというふうにやっぱり変わってきています。それは、今先生御指摘の一般の人々の犠牲、これはやっぱり目に見えて大きくなっていますから、そういった犠牲から、もう領土的には一定の譲歩をしてでも解決したいという気持ちもあります。  そういうのも考えると、トランプ式の解決にはいろいろ問題はあっても、他に代替案がない以上、意外と進むのではないかというふうな見通しを立てています。

伊波洋一 沖縄の風

○伊波洋一君 ありがとうございました。  次に、小泉参考人にお伺いしたいんですけど、今日の資料で、いかにロシアが軍事的には持続的な戦争ができる仕組みがあるかというのがよく分かりました。同様に、今、北朝鮮も、それから中国も同様だと思いますが、よくウクライナの次は日本という言いぶりがあるんですけど、まさに私は、今、日米安保の下で日本は、それを避ける、それに向かってと言うべきだろうな、二〇二三年から二七年までの五か年計画の、安保三文書の増強四十三兆円という取組が行われていて、沖縄はよく分かりやすいんですけど、あちこちに基地が造られ、そして日米の共同演習が本当にこの二、三年でぐっと多くなりまして、まさにその沖縄が戦場になる、あるいは日本全国が戦場になるということが準備されていることを感じるんですね。なおかつ、計画もそうなっていますし、全国に二千発のミサイルを配備する、敵基地攻撃ミサイルを配備する、そういうことが実は国民には余り知らされないまま現に進んでいて、二七年というゴールに向けてそういう戦争ができる準備が整っていっているというのが沖縄にいるとよく見えます。  それがまさに、いわゆる戦後アメリカがつくった価値を守るというのがあの安保三文書の趣旨でもあるわけですけれども、秩序を、その秩序のためには日本が全体が戦場になってもいいような思いが政策の中にもうぶち込まれちゃっていますよね。内閣は替わったけど、もうそれは二二年の岸田内閣で決定されましたから。そういうものに対して、私たちは、本当に、じゃ、ウクライナのような、国内を戦場にするような戦争、これを日本で起こさないためにはどうすればいいだろうかと、こういうふうに考えているんですけど、何かお考えはあるでしょうか。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) ありがとうございます。  まず、先ほどの広瀬先生への御質問からつながってくる答え方になるかなというふうに思うんですけど、戦争があってはならないって本当にそのとおりですし、今ウクライナでも本当に一家全滅するところとか出始めているわけですよね。だから、こんなことは起こしてはいけないし、なるべく早く終わらせなければいけないというのは本当にそのとおりだと思っているんですよ。  うちの奥さんのところの親戚もウクライナ人いっぱいいて、二年前のバフムト攻防戦のときに、あのままロシア軍の攻勢が止まらなかった場合というのは、恐らく次にその町が戦場になったはずなんですよね。だから、本当に私自身もそのことは強く思ってはいます。思ってはいて、じゃ、そこで命を守るために今すぐ抵抗をやめればそれで平和になるではないかというのは一種のリアリズムでもあるのかもしれないんだけれども、じゃ、そこでその抵抗をやめて、例えば自爆ドローンが突っ込んできて全滅する一家がいなくなるということと、その代わりにブチャのようにして虐殺される一家が出るということをどうてんびんに掛けるか。  あるいは、さっきICCの話が出ましたけれども、ウクライナ側は、最初、二十万人以上の子供の連れ去りを申し立てていて、うち二万件はICCは認定したんですよね。それから、おととしの十月からは、ロシアが占領地域で徴兵をやっています。これもたしかジュネーブ第四条約違反ですかね、ですよね。だから、この停戦というか、そのロシアに対してただ降伏すればすっかり平和な日常が戻ってくるわけではないというところが難しいところだと思うんですよ。あるいは、じゃ、かつて日本が侵略していった中国の人民は、ただそこで日本軍に降伏していればよかったのかという問いにもつながってきますよね。  私は実は学部教育のバックグラウンドが平和学で、軍事オタクのくせにほかにゼミがなかったから行ったんですけど、その平和学の考え方って構造的暴力って考え方しますよね。つまり、戦闘があるかどうかではなくて、構造的な暴力によって人間の本来のポテンシャルが抑圧されている状態を平和ではないというふうに定義すると。その場合で見た場合というのは、やっぱり、ロシアに単に降伏するという戦争の終わらせ方も、あくまでもロシアに対して軍事的抵抗を続けるというやり方も、どっちもやっぱり構造的暴力は振るわれているんですよ。だから、その中において比較考量するという多分考え方に私はなると思っています。  例えば、中国との戦争に備えることによって日本が戦場になる可能性があるというのはまあ本当にそうですし、やっぱり私も沖縄行ってみて、これは異常な状態なんだなと思うんですよね、軍事屋でありながらも。あんなに米軍基地だらけでおかしいだろうというふうにも思うと。その抑止力、信憑性のある抑止力と実際に戦闘を遂行する能力って外形的に区別を付けることができないんですよね。じゃ、その抑止ではない、中国と、あるいは北朝鮮との関係を外交的に抜本的に変える方法があるというんだったら、私はもう是非それに大賛成なわけですけれども、今、私はそれが何か魔法のようにそういう方法が我々の目の前に提示されているようには見えないですね。  極めて望ましくないことではあると思いながらも、私は、御指摘の二〇二二年の安保三文書の路線というのは、安全保障屋の観点からするとあの方向になっちゃうんですね。もちろん、安全保障屋の観点っていわゆる安全保障の負のスパイラルを必ず含むものなので、そこに例えば今回トランプという人が乱入してきて、うるせえ、全部終わらせるんだって言っていて、あれは政治の力だと思うんですよ。ですので、我々のようなダウナーになりがちな安全保障屋の方向性と、そこにその何か全然違うベクトルを持ち込む政治の力というのはうまく協調しながらやっていければいいんじゃないかというふうに思っています。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) 申合せの時間が過ぎておりますので、よろしいでしょうか。

伊波洋一 沖縄の風

○伊波洋一君 はい。  終わります。ありがとうございました。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) それでは、齊藤健一郎君。

齊藤健一郎 NHKから国民を守る党

○齊藤健一郎君 NHKから国民を守る党の齊藤健一郎と申します。よろしくお願いします。  まず、酒井参考人にお伺いしたいのは、その強行規範違反というところの国際法の観点からちょっとお伺いをしたいんですけれども、先ほど広瀬参考人の方から、ウクライナの情勢が変わってきたと、国民の声が変わってきたという声がありました。トランプさんが入ってきて、アメリカが入ってきて停戦の合意する上で、侵略行為あった土地をも受諾させるようなことが世論的にウクライナでも、国内でも高まったと。なおかつ、トランプさんが言うように、そこはもうのみなさいという話になったときに、全体的にそれで世論が形成されたときに、国際法の違反にはなるとは思うんですけれども、合意形成取れているよねってなったときのその国際法の後始末の仕方というか、国際法をどう考えたらいいのか、日本にとってはというところをまずお伺いさせていただきたいなと思います。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  大変難しい、これは本当に難しい問題だと思います。  一つは、ウクライナでそういう世論が定着し、ある意味譲歩して、領域については譲歩して和平でもいいというふうな形になるのであれば、それは一つのやり方であって、ロシアとウクライナの間で最終的に和平合意が行われ、割譲が行われるということは、事実としてはあり得るとは思います。  それは、厳密に言えば、やっぱり国際法違反にはなるわけですね。ただ、その問題というのは、結局、それを言い続けるという先ほどお話ありましたけれども、言い続けることによって次に同じようなことが起きないようにするためにどうしたらいいのかという話、国際秩序を守るというのはそういう意味で、国際法の観点から既存の法に違反するということに対する非難というのは欠かせないということだろうと思うんです。非常に力がないようには見えるんですけれども、バイラテラルで行われた合意というものが優越するというのは現代の国際社会においてもあり得ることだろうと思います。  そのために、平和というものを目的に、武力行使禁止原則とその効果というものを、ある一種国際法の効力を否定した上で和平実現するということは現実にはあり得るんだろうというふうには思います。それは、すぐに停戦をしなければいけない、犠牲者を増やさないようにしなきゃいけないという目的とも合致するところであって、一概には否定できないんですけれども、長期的に見ればそれは国際法の発展にとって本当にいいのだろうかということもまた言えるわけであって、同じような戦争を繰り返さないというためにも、国際法はその点、直近ではなかなか義務違反あるいは国際法違反ということは否定できないけれども、長期的に見てそれを糾弾していくということは、姿勢としては忘れてはならないんだろうなというふうには思っています。

齊藤健一郎 NHKから国民を守る党

○齊藤健一郎君 ありがとうございます。  それと、ちょっとシンプルに聞きたいこと、もう一個、酒井参考人の方にあるんですけれども、国際法を遵守するという意識って多分日本結構高いとは思うんですね。でも、大国、アメリカ、ロシアというところが割とそういったところを軽視しがちになっているところを、日本は、じゃ、アメリカが実際国際法違反を犯してでも戦争を停戦に向けるんだってなったときに、どこなら意識高く話せる国というのがあるんですか、アメリカ以外、同盟国アメリカ以外で。国際法遵守に対する意識、ここは高いよという国というのは、参考までにお聞かせいただきたいですね。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  どこというわけではないんですけれども、アメリカという国自体が国際法に対して否定的というわけではないとは思うんです。これは、程度の問題であったり、その時々の国益というものをどういうふうに考えるかという点で使い分けをするということだろうと思うんですね。それは諸外国も同様に行っているところではないかとは思うんです。  ですから、むしろ日本が遵守しているというのは、ある意味与えられた国際法規則を守っているという感覚が前提としてあるのかもしれません。むしろ、諸外国は自分たちで国際法を作っていき、そして自分たちの国益に沿うようなルールにしていきたいと、それが合致している限りにおいて遵守をしていくという形。で、日本がそこまで国際法に対して正面から向き合って、形成だとか実施の面で使うということになれば、諸外国と同様に、国際法に対する今と違った見方というのが出てくるのかもしれないなというふうには考えています。

齊藤健一郎 NHKから国民を守る党

○齊藤健一郎君 ありがとうございます。  まさに、その国際法の使い方というところ、その国それぞれのポジショントークというのもあるんですけれども、小泉参考人に次お伺いしたいのが、まさにその国際法のその使い方というところで、ちょっと北方領土についてお伺いをさせていただきたいです。  今月、北方領土の日ということもありまして、先ほど、このロシア・ウクライナ戦争、北方領土余り関わってくる話ではないというようなこともお話ありましたが、見方によっては千載一遇のチャンスだと、取り返す千載一遇のチャンスであると、小泉参考人、石破総理とも多分お話をされていた、テレビの中でもお話をされていたと思うんですけど、やっぱりその北方領土の重要性というのもロシアも高まってきたというところから、その国際法をある程度日本としても理解をしながら、何とか北方領土を取り戻す方法というのが今回のを利用して何かないのか、ちょっとお伺いしてみたいです。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) 残念ながら、ないと思います。  北方領土、僕は二回行っているんですよね。二〇一三年に国後、択捉行ったときには、ここは本当に二十一世紀の地球なのかと思うぐらいひどい環境で暮らしているわけですよ。二〇一八年に同じ国後、択捉行ったら、見違えるようにきれいになっている。少なくとも、我々が見えるところはとてつもなくきれいになっているし、観光産業らしきものもできているし、とてもじゃないですけど、ロシア化なんて言えないです、もうロシアになっちゃっているということなんですよね。更に言うと、私が二〇一三年に見た、これが本当に二十一世紀の地球なのかと思うのでさえ多少良くなったわけなんです。九〇年代の国後、択捉、色丹というのは本当にひどかったわけですよね。でも、それでもロシアは手放さなかった。  それから、結局、あそこをロシアが軍事占領し続けている軍事的理由というのは、その内側のオホーツク海に原子力潜水艦がパトロールしているからなわけですよね。でも、その基地はカムチャツカにあるんですけど、あそこだって九〇年代にはもう到底経済的に維持し切れなくなって、もう閉鎖しちゃおうかという話もあったけど、プーチンは、いや、閉鎖しないと言ってあれを残したわけですね。  あの九〇年代とか二〇〇〇年代前半の本当に厳しい時期にもロシアはやはりあれを放棄しなかったし、なおかつ、その間の日本側の働きかけというのは、じゃ、もちろん政経は別々にして、先に経済援助もしますであるとか、潜在的に日本に主権があるとさえ言ってくれればいいと、柔軟の、時期、様態に関しては柔軟に対応するという、ほぼこれ以上妥協ができないところぐらいまで妥協したわけですよね。でも、やっぱりロシアはのまないわけです。  今、少々ウクライナでロシアが苦しんでいるぐらいで立場が弱くなってあの島を返す話に応じてくるとは思えませんし、他方で、安倍政権のときにロシア側は、じゃ、北方領土を返してほしいんであれば在日米軍を撤退させてくれという、逆に島を人質に取って我々の主権条項に口突っ込んでくるようなことを言ってきたわけですよね。そうであってはやっぱりおかしいと思うんですよ。ソ連による主権侵害問題の落とし前を付けるための北方領土問題なのであって、何かいつの間にか島を人質に取られて、じゃ、ああせいこうせいとロシアに言われるんではもう全く本末転倒であろう。だったら、解決しないよりは、もうこれは外務省ロシア課の伝統的な態度ですけど、百年でも正論を言い続けるという方が私は何ぼか国益になると思っています。

齊藤健一郎 NHKから国民を守る党

○齊藤健一郎君 ありがとうございました。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) 以上で各会派の一巡目の質疑は終了いたしました。  他に質疑のある方は挙手をお願いいたします。  塩村あやか君。

塩村あやか 立憲民主・社民・無所属

○塩村あやか君 立憲民主・社民の塩村でございます。  今日は、参考人の皆様、本当に貴重なお話をありがとうございました。  まず、広瀬参考人にお伺いしたいというふうに思っています。  資料の方でも、表の一の方だったかな、停戦をめぐる構想の特徴という形で様々な、平和の公式であるとか西ドイツモデルであるとか御紹介をいただきました。御紹介をいただいた中で、その内容については御説明があったと思うんですけれども、例えばその、広瀬参考人の方から、こういったこのモデルであればこういう状況のときにいいとか、もう少し分かりやすく聞いてしまうと、どれがその広瀬参考人としては一番現実的であるか、こういったお考えがあれば是非教えてください。あわせて、ゼレンスキー大統領についての評価もお聞かせ願えたらと思います。二点お願いいたします。

広瀬佳一 防衛大学校人文社会科学群教授

○参考人(広瀬佳一君) ありがとうございます。  表一、御覧いただき、ありがとうございます。  私も先ほどの報告で少しニュアンスを持って語ったつもりなんですけれども、やっぱり公正さとそれから持続可能性という、この二つはやっぱり非常に重要で、それに比べると、例えば国際法的な厳格さというのは多少犠牲にしてでも現実的にやはり考えるべきではないかなというふうに思っていまして、それで考えたときに、やっぱり先例もあるということでいえば、西ドイツモデルというのは、バイデン政権下でこれが強力に推進されていればチャンスはあったんじゃないかというふうに思うわけです。今、トランプ政権ではもうNATO加盟ないと言っていますので、もうこれ全然入ってこないわけですけれども。  この西ドイツモデルの場合には、ポイントになるのはやっぱり領土的な問題なんですよね。この領土的なところをウクライナが諦めなきゃいけなくて、これはもちろん暫定的でも何でもいいんですけど、一旦は諦めて、しかも、その範囲だけがNATOの集団防衛の五条の適用を受けるという形で、かつ領土変更に武力を使わないという、これも西ドイツが行った武力不行使宣言というんですけど、こういうのも行うと。それによって、一定の公正さが保たれた上に平和が持続的に訪れる。つまり、将来ロシアがやってくるということもない。  だから、やっぱりNATOの方が明らかに今強いですから、ロシアがそこまで攻めるとは思えないので、そういう形で考えると西ドイツモデルというのがあり得たんではないかと思いますし、実際、民主党の有力者なんかも去年辺りには、おととしか、もう、おととしにはそういう主張をしていましたから、バイデン政権が決断できれば、もちろんそのNATO加盟については例えばハンガリーとかスロバキアとかは難色を示していましたけど、でも、バイデン氏がリーダーシップを発揮して、そしてこれを推進していれば、これは失われた機会になったんではないかなというふうに個人的には思っています。  その次はフィンランドモデルなんです。ただし、このフィンランドモデルの場合は、やっぱりリーダーシップの、ステーツマンシップが非常に問われるわけですね。このフィンランドの歴史的事例においては、パーシキヴィというフィンランドの非常に有名な保守的な政治家で、しかしながら、ロシアとの、ロシアという大国が隣にいるということを、現実を受け入れる、何といいますか、肝、肝の大きな人なんですけど、このパーシキヴィがロシアと政治的にはもうある程度、領土的及び政治的にはある程度ロシアの言うことを聞きながらも中立そして自主的な政策を歩むという形で、旧東欧、ほかの旧東欧とは一線を画すことができたわけです。実際、フィンランドはワルシャワ条約機構にも入っていませんし、コメコンにも入っていませんから、こういうこともある。  ただし、これはやっぱりステーツマンシップも必要ですし、やっぱりフィンランドとウクライナはちょっと国の大きさも違いますので、これ一概に比較できないのかもしれないなと思っています。その意味では、繰り返しになりますけど、やっぱり西ドイツモデルには可能性があったのではないかというふうに思っています。  ゼレンスキー大統領は個人的には全く、ゼレンスキー大統領は全く個人的に話すことはありませんけれども、でも、こういうことがありますよね。戦争中のリーダーが戦後復興のリーダーとしてふさわしいとは限らない。思い出していただきたいのは、チャーチルが、第二次世界大戦が終わって、一九四五年のポツダム会議の途中で総選挙があって負けましたよね。あれは、みんな戦争中にあれだけリーダーシップを発揮したチャーチルなんだから当然次も勝つだろうと思ったら、もう国民はうんざりで、復興にしてもらいたいと、次の政治家って選んだわけですけど、もしかしたらゼレンスキー大統領にも今国民の間ではそういう雰囲気があって、先ほど申し上げましたように、ウクライナの世論調査をすると、これからそろそろ和平を交渉してほしいと、領土的な問題があって、和平を交渉してほしいという声があって、それはゼレンスキー大統領の発言とは少しずれているように感じます。  ですので、もしかしたら今のその世論を反映していないのかもしれなくて、だから、ロシア辺りはその辺を見抜いてか、停戦直後に大統領選挙しろというふうに要求していますけれども、それはプーチンはプーチンなりの利害があるとは思いますけれども、でも、そこはもしかしたら真実の一端はあるかもしれないと思います。

塩村あやか 立憲民主・社民・無所属

○塩村あやか君 ありがとうございます。大変参考になりました。  戦争始まったときには、すごいリーダーシップを持った人がいたんだなというふうに改めて気付かされたんですが、継戦、どんどん時間がたってくるとまた変わってくるんだ、評価がというところ、改めて参考になりました。本当にありがとうございます。  続いて、小泉参考人にお伺いしたいと思います。  ロシアは、停戦の条件として、ウクライナに非ナチス化とか非軍事化とか、あとは中立化を求めているというふうに思いますが、これは安全保障上、何か割と丸裸にされるような状況じゃないかなというふうに思っておりまして、再侵攻してくるんじゃないかというのもみんな言っていると思いますが、私もそのように感じています。  小泉参考人の方からは、今日は、抑止のアップデート、日本のことに関してだと思うんですけれども、北朝鮮は今回戦争に参加することで戦訓を積んだというふうにおっしゃっていて、確かにそのとおりだなというふうにも思いました。そして、中国の核戦力がすごい勢いで増えているというお話も今日ありました。  日本が周辺国と一緒に備えておく必要があるというお話を今日いただいたんですけれども、ちょっとそこでお伺いしたいのが、私、メルマガも読ませていただいておりまして、日本は今この危機感がいまいち薄いように思いますという形で先生書かれておりました。全体として、米国は、今お話あったように、世界の秩序から明確に手を引こうとしていて、たまたま日本がまだ守るという正面にいるだけの話であり、また、その気が変わったときには引かれる可能性があるということが書いてあって、その当てのならなさは最終的に我々の前にも立ちはだかるでしょうというふうにメルマガで書かれていて、非常に分かりやすいなと、はっと気付かされるところがありました。  そこで、もう端的にお伺いしたいんですけれども、小泉参考人から見て、日本の安全保障は具体的に今後どのように防衛力を考えていけばいいのか、この戦争から学ぶところがあったら教えていただきたいと思います。

小泉悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授

○参考人(小泉悠君) どうもありがとうございます。  まず、再侵攻の可能性に関しては本当におっしゃるとおりだと思っていて、ほぼ、どのウクライナ人と話してもその話は必ずするんですよね。なので、今のそのトランプの和平に恐らくなかなかウクライナ人がもうしようがないから乗っちまえと言えないのは、そこの手当てはアメリカが何もしようとしないからだと思うんですよ。  この前、ベッセント財務長官がウクライナへ行った際にも、レアアースとのディールを持っていくわけですけど、アメリカにレアアースちょうだいという話が書いてあるだけで、その再侵攻抑止の話書いていないですよねというんで決裂しちゃうわけですよね。又は、バンスの口ぶりを見ていると、彼の言う平和というのは、トランプ政権の四年間続けば恐らくいいと思っていて、その後の再侵攻抑止のことを恐らく考えていないとかというところが何か見え見えなので、今のウクライナから見ると、トランプ政権のこの和平というのは、あなたの人気のための和平ですよねというふうに見えちゃっているんだと思うんですね。  その上で日本の抑止をどういうふうに考えるかというのは、結局、これヨーロッパもそうなんですけど、アメリカという圧倒的な軍事大国が我々の側に付いているということが全ての前提になったということなんだと思うんですよ。  結局、NATOの目的としてよく言われる、これうそか本当か知りませんけど、ドイツ人をおとなしくさせておいて、ロシア人を追い出し、そしてアメリカ人をヨーロッパ大陸に引っ張り込んでおくという、何か三つの目的という、まあ俗説かもしれませんけど、言われますよね。でも、そのうちのそのアメリカを引っ張り込んでおくということに関して、NATOという仕組みと日米安保、米韓安保という仕組みがこれまではある程度機能してきたんだろうと思うんですけど、やっぱりトランプ政権はもうそれをヨーロッパに関しては余りやりたくないとはっきり言い出したのが今回のミュンヘン・サミットだと思いますし、今国防次官になったコルビーさんは、もう韓国も守り切れないので自分で核武装して守ってくれということなんですよね。あとは、もう日本は別格だけど、その日本はしっかり守って、台湾もやるけれどもとは言うけれども、それは私が先ほど申し上げたように、たまたまアメリカの最重視正面に我々がいるだけにすぎないということは考えた方がいいと思います。  なので、大国、何らかの軍事大国に、何というんですかね、例えば、アメリカを絶対に安心な同盟国というふうにみなすことも恐らくもはやできないし、じゃ、一方、中国やロシアと融和できるのかというと、私は全く信用していないんですよ、彼らのことも。あらゆる大国を信用しないという基本姿勢に立たなければいけない時代に来ていると思うんですね。  ただ、本当にあらゆる大国を信用しない場合、これは軍事的には限りなく核武装論とイコールになっちゃって、それは嫌というのはさっき申し上げたところで、なので、私は、やはりヨーロッパにしても日本にしても、その戦略レベルの核抑止だけはアメリカに何とかしてくれと、そこのところに関してはもう半世紀ぐらいやってくれという約束と引換えに、通常戦力レベルのその域内抑止に関しては自分たちでしっかりやるという方向に持っていくことで、何とか現状の秩序というんですかね、どの大国にも好きにさせないという状態をつくり出せないかというのが、私の、余り前向きではないんだけども、せめてもの考えていることです。

塩村あやか 立憲民主・社民・無所属

○塩村あやか君 終わります。ありがとうございました。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) では、伊波洋一君。

伊波洋一 沖縄の風

○伊波洋一君 二度目ですけれども、酒井参考人にお伺いしたいと思います。  今、小泉先生からもありました話とちょっと関わるんですけど、国際条約についてなんですね。  もちろん、日本とアメリカは日米安保条約という国際条約があって、日本と中国は日中平和友好条約という条約があります。日中平和友好条約は、互いに戦争しないでおこうねということをきちんと約束しています。日米安保条約は、日本が攻撃されたら守るよというふうになっていますが、しかし、もうこの日米安保条約って基本的には核抑止を除いて壊れているんですね。というのは、二〇〇五年に米軍再編の合意で、日本は、日本への攻撃は日本が守りなさいと、守ることということが合意されています。二〇一五年の新ガイドラインで、要するに、日本攻撃されたときのアメリカ軍の攻撃については、しない、相手をしないよと。中国を想定しているんですね。中国とアメリカは戦争しないということなんですよね。  だけど、私たちの国はまだそのことを国民に教えていない。国会議員にも教えていない。同時に、日中平和友好条約があって、互いに戦争しないということが合意されていますよということも国会でも議論しない。そういう国になっていると思うんですね。  だから、尖閣はそのたびに、政権替わるたびに尖閣は安保条約の範囲だということを再確認しますけど、アメリカは尖閣が日本の領土だとは認めていないんですね。ただ、行政範囲の中にあるから、それは入っていますよということを言っている。そういう形で日本の安全保障を、何か基礎としているというふうに言うんだけど、どうして日本は、台湾を理由として戦争、中国が攻めてくるということを一生懸命言う。でも、そのために、今、安保、五年間の、その全国での戦争の準備をしている、そういう国になっちゃっているんですよ、今。  そう考えますと、まさに国際法といいますか、戦争しないという、私たちの国は、もう九条も解釈して戦争できるようにしましたから。その戦争すること、日本が戦争すること自体は国際法違反じゃないわけですよ、何かの理由でね。でも、何といいますかね、抑止力はやっているんです、だから演習はやります。この間も、キーンソードという演習はやるように見えますけど、米軍はもう攻撃しないんです、中身を具体的に調べてみれば。全部自衛隊だけが敵を攻撃するんです。そういうふうになっています。なぜならば、その時点で米軍はいないんですから、実際の実戦のときには。これも日米の合意の中にあるんですね、ちゃんと。  だから、私たちの国が仮想に考えている平和の中でその戦争の準備をしていくことの危険性というのかな、そのことを私はやはりしっかり考えていかなきゃいけないと思いますし、私は、戦争をしないこと自体は、国際法はですね、戦争をしない国を守る法になっていると思うんですよ、国連の仕組みもね。そこら辺の辺りに、本当に軍備に依存しようとすることと、九条を持つことの、何といいますかね、力強さは、これだけ格差の違うロシアや北朝鮮や中国を相手に戦争する準備をしている日本というものがとてもおかしく思うんです、議論をしていて、外交防衛委員会におりますので。  そこら辺について、御見解ありますでしょうかね。

酒井啓亘 早稲田大学法学学術院教授

○参考人(酒井啓亘君) ありがとうございます。  そうですね、国際法上、自国を守る、自衛のために軍事力を行使するということは、これは認められています。その意味で、日本が安全保障上、自国、軍隊と言うかはともかくとして、国際法上は軍隊だと思いますけれども、自衛隊を使って自国を守るということに何ら国際法上は抵触しないということは、これは前提となります。  そのために、しかし、じゃ、どういうふうにして自国を守るのかという工夫として日米安保があったりとかガイドラインがあったりとかいう形で整備が進められている。それは、現在においてはインド太平洋の枠組みだとかも含めていろいろ構築しているところだろうというふうに推察するわけです。それは、戦争を準備しているということが、どういうふうに評価するかということでしょうけれども、私は、戦争を準備するというよりも、やはり自国を守るための体制固めというふうにいうのが諸外国との関係を考えたときには日本のあるべき姿かなというふうには思っています。  ですので、もちろん御懸念というのはよく分かりますし、日本が戦場になるのではないかだとか、あるいはいざというときアメリカというのは本当に助けになるのかというような御懸念というのはあるんだろうと思いますけれども、少なくとも法的に言えば、法的に言えばですね、集団的自衛権の下でアメリカが日本を支援するという枠組みは、これは変わっていないというふうに思いますし、その点で、その点を前提にして日本の外交、安全保障というのは組み立てられているんだろうというふうに私は認識しています。

伊波洋一 沖縄の風

○伊波洋一君 終わりますけれども、実際に、よく文書を読めば分かるんですけれども、台湾有事でも、台湾は守るけど、アメリカは決して中国は攻撃しないことになっているんですよ、その作戦計画はね。日本でも同じです。つまり、日本は、日本で何かするかもしれないけど、中国は攻撃しない。これが今の構図なので、やはり違う道を進む以外ないんじゃないかと、対話外交に行くべきじゃないかと。条約もあるんだし、日中平和友好条約があるんだからという思いを持っています。そういうことを申し上げて、終わりたいと思います。  ありがとうございました。

猪口邦子 自由民主党

○会長(猪口邦子君) 予定の時刻も近づいてまいりましたので、参考人に対する質疑はこの程度といたします。  参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。  参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会

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  1. 記録 #664 観測 2026-10-10 23:04 JST
    改ざん検知用の値 d331bdf5…4bf6e5 (未計算)

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記録
#773 まで
署名
署名あり(s4rciv-checkpoint-2026)
まとめの値
374bf457…c263d0

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